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Technology and Trends

半導体産業は構造的な転換点に差し掛かっています。AI によって爆発的に拡大する需要、急速に複雑化する製造プロセス、そして厳格化するサステナビリティ要件が同時に押し寄せているからです。このような状況において、装置・センサー・ローカルコントローラに直接実装されるエッジAIは、実験的技術から欠かせない技術へと移行しつつあります。とりわけミリ秒単位が勝負を分ける半導体ファブではその重要度が高まります。SEMIが2026年3月18〜19日にカリフォルニア州ミルピタスで開催するワークショップ Smarter Sensors, Smarter Fabs: AI at the Edge in Semiconductor Manufacturing では、この重要なテーマが取り上げられました。 スパースセンシングから高密度計測へ20年ほど前のプロセス装置は、チャンバーあたり数十個のセンサーを使用するのが通常でした。現在では、最先端エッチング、成膜、CMP、リソグラフィ装置は、圧力、流量、RF電力、光学式エンドポイント、振動、化学組成など、数百のセンシングチャネルを当たり前に統合しています。3nmや2nmではプロセスウィンドウが極めて狭いため、歩留まりは複数の変数が複雑に絡むチャンバー環境や装置状態の把握に依存しており、少数の独立したアラームだけでは対応できません。センサーの急増によりファブは豊富なデータ環境へと進化した一方で、従来の集中管理型コントロールの限界が露呈されるようになりました。 なぜエッジAIがクラウド依存の制御に置き換わっているのか従来のアーキテクチャでは、負荷の大きい解析処理を中央サーバーやクラウドに送り、上位システムが定期的にレシピ、設定値、ディスパッチルールを更新する方式が採用されていました。しかし製造業におけるクラウドとの通信往復時間が一般的に 800〜2,400ミリ秒であるのに対し、装置に密着したエッジシステムの応答時間は 15〜45ミリ秒です。つまり、約50〜160倍高速になるのです。半導体製造のように安全性と歩留まりが極めて重要な制御ループでは、このレイテンシーの差を受け入れられない場合が多いのです。同時に、次世代の低消費電力ニューラルプロセッシングユニット(NPU)やエッジアクセラレータは、1桁ワットの電力で数十TOPS(毎秒数十兆回の演算)を実行できるようになり、装置内やカメラ、コントローラ内部での常時オンの推論が現実的になってきました。その結果、アーキテクチャは決定的にエッジネイティブへと移行しています。つまり、モデルはデータが生成される場所で実行し、クラウドは再学習や全装置群にわたる学習に限定して使う方式へと変わりつつあります。 ライン上で進むエッジAIの活用:制御、検査、保全プロセス制御の領域では、エッジAIによって、従来の単一変量の閾値チェックから、複数センサーのデータがつくる相関的なダイナミクスを理解する多変量モデルへと移行が進んでいます。現在のプラットフォームは、深層学習モデルや統計モデルを装置内部またはその近傍に直接組み込み、高次元の時系列データからリアルタイムでエンドポイント予測や異常検知を実行しています。同様のアプローチはリソグラフィやCMPでも広がっており、ローカル推論によってフォーカス、オーバーレイ、研磨レートを規格内に保ち、ウェーハが制御不能状態に逸脱する前に調整を行えるようになっています。検査やロジスティクスでも同様の変革が起こっています。NPUを組み込んだビジョンシステムは、1分あたり100個以上の処理速度でライン上の欠陥を分類し、大量の画像を中央のクラスタに送る必要をなくしています。ロボットやAMR(自律走行ロボット)は、短時間先の動作の再計算や衝突回避をローカルのインテリジェンスで行い、上位システムはグローバルなスケジューリングや最適化に専念できるようになっています。予知保全は、エッジAI活用の中でも最も成熟した応用分野の一つです。振動、音響、温度、圧力といったデータをローカルで分析し、従来の閾値が反応する数時間から数日前に異常の兆候を検知します。これらのモデルをMES(製造実行システム)や保全ワークフローに統合することで、突発的なダウンタイムの削減、部品寿命の延長、保守コストの低減といった効果が報告されています。 エッジデータを基盤とするデジタルツインとエージェント型AIデジタルツインは、センシングとエッジ分析の基盤の上に成り立つ技術です。装置、ライン、さらにはファブ全体の仮想モデルをリアルタイムに更新しながら維持することで、仕掛かり品を危険にさらすことなく、シナリオテスト、ボトルネック解消、根本原因分析を可能にします。ベンダーや先行導入企業の報告によると、デジタルツインによって、物理的な変更を加える前に数千ものWhat-If分析を実行できるため、プロセスノードの立ち上げや施設稼働開始までの期間を短縮できるとされています。エージェント型AIは、まさにこのデジタルツインの上位レイヤーを担う存在として台頭しています。半導体業界の事例では、MES、高度プロセス制御(APC)、計画システムに接続されたエージェントが、ファブのリアルタイム状況に応じてルーティング、バッチサイズ、スケジューリングを自律的に調整し、スループット、サイクルタイム、装置稼働率を二桁%改善した例が報告されています。また別のエージェントは、非構造化データであるエンジニアのノートや故障報告を解析し、根本原因分析を加速することで、現場で得られた貴重な知見を再現可能なルールとして行動に落とし込む役割を果たしています。 持続可能性が最重要要件になる時代サステナビリティの要求が、この技術スタックをさらに強固なものにしています。半導体製造はエネルギーと資源を大量に消費する産業であり、規制当局と顧客の双方が、より高い透明性と改善を求めているのです。エッジに接続されたエネルギー、ユーティリティ、排出量のモニタリングによって、すでに一部のファブでは、HVAC、プロセスガス、アイドルモードの制御を最適化することで、エネルギー関連コストを約20%削減できたと報告されています。また、imecのSustainable Semiconductor Technologies and Systems (SSTS) プログラムのような研究イニシアチブでは、仮想ファブ手法や詳細なライフサイクルアセスメントを活用し、環境負荷を低減するためのプロセス選択や装置設計に指針を与えています。 実務者向けのさらなる情報源方向性は明確です。高密度なセンシング、エッジAI、デジタルツイン、エージェント型AIを組み合わせたファブは、継続的に学習し、自律的に最適化するオペレーションへ向けて進化しています。アーキテクチャは、クラウド依存ではなくエッジを中心に構築する必要があります。ローカルなインテリジェンスを待たせずに単にセンサーを追加するだけでは競争優位は得られません。また環境KPIも、歩留まりやサイクルタイムと同じ厳密さで最適化されるようになるでしょう。このようなトレンドをロードマップに落とし込みたい実務者に向けて、SEMI Manufacturing Coalitions が主導する Smarter Sensors, Smarter Fabs: AI at the Edge in Semiconductor Manufacturing(2026年3月18〜19日、カリフォルニア州ミルピタス)が開催されました。ここでは、センシング、エッジアーキテクチャ、デジタルツイン、エージェント型AIの専門家が集まり、半導体ファブ向けに最適化された具体的な導入事例やアーキテクチャを共有する場が提供されました。 *SEMI Manufacturing Coalitions には、Smart Manufacturing、Fab Owners Alliance(FOA)、MEMS and Sensors Industry Group(MSIG)、Advanced Packaging Heterogeneous Integration(APHI)、そして Semiconductor Components, Instruments, and Subsystems(SCIS)が含まれています。Anshu Bahadurは、SEMIのTechnology Communities担当のシニアプログラムマネージャーです。Mark da Silvaは、SEMIのManufacturing Coalitions担当のシニアディレクターです。
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PDF SolutionsのCEO兼共同創業者そしてSEMIのESD Alliance(ESDA)運営評議会メンバーのJohn Kibarian氏は、10月にフェニックスで開催されるSEMICON WestのCEO Summitで「The Convergence of Semiconductor Manufacturing and Design」と題した基調講演を行います。講演に先立って、そこで語られるトピックスの概要と共に、なぜコラボレーションが半導体産業を1兆ドル規模に成長させるための鍵なのか、そしてそれをいかに達成できるかについて、Kibarian氏の見解を聞くことができました。 Smith:コラボレーションを不可欠なものにしている業界の主な進化またはダイナミクスは何でしょうか?Kibarian氏:半導体業界は、かつての単純で直線的なプロセスから、複雑なコラボレーションからなるエコシステムへと劇的に進化しました。以前は、すべてがウェーハファブ内で完結していました。製品は、ウェーハプローバーでテストをした後、高歩留まりのパッケージング、単純な最終テストを経て出荷されました。コラボレーションは主にファウンドリとファブレス企業の間で発生し、初期の評価やテストチップ段階には活発ですが、いったん量産が安定するとルーチンの歩留まり監視へと移りました。現在の先進パッケージ技術では、複数のチップレットを1つのパッケージに統合するため、テストポイントが爆発的に増加しています。そのため、テストは大幅に複雑化しコストが上昇しました。現在の前工程ファブには非常に複雑な装置が設置されていますが、テスト・組立工場においても、今ではロボットを統合した高度なシステムレベルテスタが導入されています。組立装置も非常に複雑化し、ダイアタッチプロセスでは厳密な精度が求められるようになっています。現在では、新製品立ち上げと量産維持のいずれにおいても、システム企業から装置メーカーに至るサプライチェーン全域のコラボレーションが成功の鍵となっています。企業は、AIや機械学習(ML)を導入して、複雑化する生産フローを管理するようになりました。このためさらに広範なコラボレーションが求められています。AIを活用するには、ファウンドリ、ファブレス企業、OSAT、装置メーカーなど、複数のソースから、単一の企業の管理範囲を超えたデータを統合する必要があるからです。かつては2社間の単純な受け渡しで済んでいたものが、今では継続的な調整を必要とする、複雑に絡み合った相互依存関係のネットワークへと変化しています。 Smith:チップレットやチップレットベースのアーキテクチャが、ムーアの法則の減速に対する重要な、あるいは現実的なソリューションとして注目されています。これは、バリューチェーン全体にわたる驚異的なレベルの協力と調整を必要とします。本流となる量産規模で製造可能なのでしょうか?Kibarian氏:チップレットの量産を実現するには、半導体業界にこれまでにないレベルのコラボレーションが求められますが、それは可能です。EUV露光を考えてみてください。65nm世代での導入が期待されていましたが、きわめて複雑な技術であるにもかかわらず、予想より数年の遅れで実現しました。卓越したエンジニアリングだけでなく、ASML、サプライヤー、顧客、そして広範なファブレス企業からの協力も不可欠でした。業界がEUVでこのレベルのコラボレーションを達成できたのであれば、チップレットにおいても同じことが可能です。ただし、チップレット製造では、複数のサプライヤーからチップレットを調達してシステムを構築する企業が増えるにつれ、さらにハイレベルのコラボレーションが必要となります。現在のチップレットベースのシステムは、通常すべての部品を1社から調達しており、UCIeのような標準規格の重要性はそれほど高くありません。企業がサプライチェーン全体を管理できるからです。しかし、今後はコスト効率を重視して、サードパーティのコンポーネントを使用する企業が増えると、そうはいかなくなります。市場投入までのコスト効率を高めるために、システムを複数メーカーのコンポーネントで構成することが、どんどん増えていくでしょう。その結果、将来の生産フローは大幅に複雑化し、基板やベースダイ、サードパーティ製ダイやインターポーザー、OSAT、特殊な構成の専用テスターの間の調整が必要になります。このオーケストレーションは、初期の立ち上げだけでなく、継続的な生産や製品ごとのチップレット構成変更時にも機能しなければならず、その全てで迅速かつ自動化された応答が求められます。すべてを迅速に応答できるよう自動化しなければなりませんが、生産フローの複雑さを考えると、個々の製品の製造で何が起きているかを予測するために、皆がAIやMLを導入しようとするでしょう。製造中にすべてのチップやパッケージをマニュアルで監視することは、スケール的に現実性がありません。自動化されたAIエージェントに監視と品質管理を任せる必要があります。この自動化拡張には、製造会社と製品メーカーのエンジニアリングチームとの密接な連携が不可欠となります。また、複数企業にまたがる複雑なプロセスを管理するすべてのソフトウェアパッケージ間で、これまでとは異なるレベルの整合性とオーケストレーションが求められます。財務系ERPシステムは、資材の流れ、需要、予測を把握しています。一方で、製造実行システム(MES)は、どの装置がいつ利用可能かを把握する必要があります。多くの場合、このような製造システムは製品メーカーが所有していない工場で稼働しています。製品メーカーのPLMシステムは部品表やテストフローを管理しますが、テストはOSATで実施されるため、異なる企業のソフトウェアシステム間での複雑な調整が必要になります。このオーケストレーションの範囲は組織の境界を越え、上流のテスト結果データを使用して、下流でどのテストを実施するかが判断できなければなりません。これは、短いサイクルタイムで効率的にチップレットをパッケージ化するために不可欠であり、そうすればF1レースのピットチームのような体制がなくても、テストフローを維持することができるのです。 Smith:データの量は、特に今日の設計データたるや、驚くべきものです。すべてが接続されるこのビジョンを大規模に実現するには何が必要でしょうか?Kibarian氏:それは人間がシステムの動作範囲を定義し、その中でAIエージェントが飽くことなく自律的に業務を遂行するという協働関係です。良い例として、MESとERPシステムのデータ連携があります。企業がオーケストレーションの仕組みを設定すると、情報の流れを制御するルールが決まります。例えばこのルールは、ERPシステムに対して「各工程のコストを計算するには、このレシピ情報を使ってください」と指示します。一度設定されたルールは、日々の業務を制御するガイドラインとして機能します。AIエージェントはMESから収集された実データに基づいてインサイトを自動生成し、ルールに従ってシステム間でそのインサイトと共にデータを移動させます。ERPのAIエージェントは、これを使用して、コスト上昇を見抜き、生産歩留まりの低下を指摘し、それがコストに与える影響を計算し、さらに問題解決のためのアクションを実行します。同様のプロセスは、装置メーカーと製造工場の間でも起こります。事前に設定されたルールに基づいてデータが自動的に共有され、AIが問題を特定して是正措置を講じます。ファブでは、誰がどの装置にいつアクセスできるか、どの種類のデータがどのチャネルで送信可能か、送信頻度はどれくらいかが決定されます。装置を制御するための新しいソフトウェアやAIモデルを導入する際には、このシステムがインストール前にどんなウイルススキャンやセキュリティチェックが必要かを指定します。人間のオペレーターが主に担当するのは、最も効果的なコラボレーションプロトコルを決めて、制御システムを設定することです。日々の業務遂行を担当するのは、人間ではなく自動化されたエージェントです。なぜなら、大量のデータ量とトランザクションの両面において膨大な業務が、オペレーション中に絶えず発生するからです。人間がすべてのデータを確認することはありません。例を2つ挙げます。1つは業界外、もう1つは業界内の事例です。当社の2019年のユーザー会議で、ハーバード・ビジネス・スクールのMarco Iansiti教授に、AIとビジネスに関する著書の内容を紹介していただきました。そのなかで教授は、従来型の銀行とアリババ傘下のAnt Bankを比較しました。Ant Bankは中国政府に介入されるまで、爆発的な成長を遂げていました。Ant BankのAIは特別に高度なものではありませんでしたが、そのプロセスは革新的でした。従来の銀行では、顧客がローン申込書を記入し、それを人間の審査官が確認します。一方、Ant Bankのシステムは、インターネットやSNSから申込者情報を自動収集し、数秒でアルゴリズムが承認・却下を判断します。決定的な違いは、Antが指数関数的に貸付事業を拡大できた点です。制約は計算能力のみであり、従来型の銀行の場合は、事業を2倍に拡大するためにローン担当者を増やさなければならず、人間がボトルネックとなって成長が制限されるのです。教授に講演を依頼したのは、私がこの原則を6年前から信じているからであり、今ではそれは確信となっています。半導体業界が1兆ドル規模の産業へと成長するには、複雑で統合されたシステムの中で、人間の介入を最小限に抑える必要があります。業界内のステークホルダー間の信頼関係が課題となりますが、コラボレーションは不可欠です。その解決策は、AIエージェントが自律的に動作できる体系的原則を確立することです。これが指数関数的成長への道です。Ant Bankの例は、我々の業界が必要としていることを完璧に示しています。当社では、このアプローチが業界の進化に不可欠だと考えています。私たちはペタバイト単位のデータを扱っていますが、人間が確認するのはその5〜10%に過ぎません。これは、AIが大半の業務を人間の監視なしで処理する可能性を示しています。顧客は週に何百万個、年間で何十億個ものチップを製造しているのが現実です。すべてのデータを人間が確認することは不可能です。しかし、アルゴリズムなら、AIなら可能なのです。昨年、当社は「Guided Analytics」という製品をリリースしました。ユーザーグループ会議でひとりのエンジニアがこの製品について語ってくれました。彼女の会社では数千種類のチップを扱っており、毎日すべてを把握することはできません。しかし、Guided Analyticsがそれを可能にしました。ある朝、彼女のチームが出社すると、レポートには「90%のチップは問題なし」と報告があり、問題がある箇所にはアラートが表示されていました。シンプルなAIボットがデータを調べて回り、根本原因を特定しているのです。業界が規模を拡大するには、より多くのAIエージェントが必要です。こうしたエージェントは業界全体に広がっていくでしょう。しかし、人間がその運用原則を設定しなければなりません。これこそが、設計・製造に関する膨大なデータを処理し、業界が求めるスピードを実現し、AIの恩恵を最大限に活用する方法なのです。 お知らせ:Kibarian氏によるSEMICON Westの基調講演「Revolutionizing Semiconductor Collaboration:The Emergence of AI-Driven Industry Platforms」は、10月8日(水)の10:20に予定されています。SEMICON Westでは半導体設計分野のセミナー「The Convergence of Semiconductor Manufacturing and Design」で、先進的システムを市場に投入するための半導体メーカーとチップ設計チームのコラボレーションを取り上げます。開催日時は10月7日火曜日の13:00-16:00となります。SEMICON West 2025 は、10月7日からアリゾナ州フェニックスのPhenix Convention Centerで開催されます。 John Kibarian氏についてJohn K. Kibarian氏は、PDF Solutionsの共同創業者であり、1991年に社長に就任し、2000年からCEOを兼任しています。カーネギーメロン大学で電気工学の理学士号、理学修士号、工学コンピューターサイエンスの博士号を取得しています。Robert (Bob) Smithは、SEMIテクノロジーコミュニティのESD Allianceのエグゼクティブディレクターです。
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米グリフィン証券のソフトウェア研究部門マネージング・ディレクター、Jay Vleeschhouwer氏は、電子設計自動化(EDA)業界の金融アナリストとして、半導体業界の設計分野を注意深くウォッチし、この業界に向けた洞察に富んだ分析を提供しています。Vleeschhouwer氏はまた、Design Automation Conference(DAC)において、EDA業界の年次報告「State of EDA」を毎年発表しており、今年の発表を終えたタイミングで、トレンド、EDAとAEC(建築・エンジニアリング・建設)の違い、セキュリティ、チップレットについて話を聞くことができました。以下にその要約を紹介します。 Smith:SynopsysとAnsysの合併が完了した今、どのような変化が予想されますか?Vleeschhouwer氏:Synopsysは現在、エンジニアリングソフトウェア業界における売上高と受注残高で最大の企業となりました。この業界の市場規模はAEC、EDA、および技術系ソフトウェアの全体で300億ドルを超えます。直近の四半期レポートの合併後を想定した受注残高は、業界最大の約98億4,000万ドルにのぼります。重要な問いは、Synopsysが厳密にはEDAとは言えないAnsysの5分の4の事業をどのように統合し、雇用し、展開するのかという点です。つまり、AnsysのEDAの大部分を構成するAnsoftとApache以外の事業のことであり、コンバージェンスというテーマに関わる問題です。また、あらゆる買収において問われるのは、買収した事業や製品ポートフォリオをそのまま維持するのか、しないのかというバランスです。言い換えれば、うまく機能しているならそのまま継続させ、さもなければ、迅速に吸収・統合し、買収側のポートフォリオに活用していくという選択です。このロードマップについては、EDAに特化した側面とコンバージョンの側面から、さらに詳しく考えを聞きたいと思います。 Smith:2025年に予想外の新トレンドはありましたか?Vleeschhouwer氏:簡潔に言えば、主な技術やビジネス上のトレンドに関しては、これまでと大きく変わらない状況が続いています。もちろん最近の大きな外的影響といえば、関税の導入や新たな輸出規制、あるいは輸出規制の変動があります。これが過去数週間から数か月間に起きた最も大きな変化だと言えるでしょう。当社がこれまでレポートで強調してきた多くの技術やビジネスの成果に関しては、何年にもわたってトレンドの変化は見られません。業界データからも、複数のEDAカテゴリが成長を持続していることが見て取れます。複数のカテゴリにわたって製品の採用と成長が広がっていることは、非常に重要な傾向です。この傾向は、EDA業界の最大手4社それぞれに利益をもたらしました。技術的にも納得できる理由があり、今後もこの状況は続くことが予想されます。この重要な長期的トレンドに関しては「変化なし」と言えるでしょう。それ以外の点で2025年に特徴的に見られた興味深い動きは、今年のDACでスタートアップ企業の存在感が増したことです。EDA分野では久しぶりのことです。興味深いことは、スタートアップが活発になったのはEDAだけでなく、エンジニアリングソフトウェアのもう一つの分野であるAEC(建築・エンジニアリング・建設)でも同様だった点です。AECは半導体や電子システムとは無関係ですが、それでも過去四半世紀近くで最も多くのスタートアップが登場しています。ただし、これらエンジニアリングソフトウェアの2つの分野におけるスタートアップの動機は大きく異なっています。EDAスタートアップの動機には共通性がありますが、AECの場合は異なっており、それが分析的に非常に興味深い点です。 Smith:EDAとAECのスタートアップの動機の違いは何ですか?Vleeschhouwer氏:AECは、商業ビル、住宅、インフラ、つまり道路や橋、空港、トンネル、土木、公共事業に関わる分野です。私たちがこの市場で注目している企業には、AutodeskやBentley Systemsがあります。Autodeskは、機械系CAD製品の一部がPCB設計ツールと統合されていることから、EDAとも少し関係があります。いずれにせよ、AEC分野で見られるスタートアップの動機は、主に既存の大手製品に対する顧客の不満が声高に表明されていることに起因しています。これはEDAとは異なります。EDAでは、既存ツールに対する不満がスタートアップを必要とするほど強いとは言えず、それが起爆剤になるとは考えにくいのです。私たちは今、半導体設計や電子システム設計が複雑かつ急速に進化するの目にしており、その背景には、AECよりもはるかに幅広いEDAツールとその機能があります。そこには、既存ツールを補完するニッチな製品の機会が多く存在します。ご承知のように、EDAでは既存ツールを置き換えるのは非常に困難です。業界は現在、Ansys、Cadence、Siemens EDA、Synopsysの「ビッグ4」に集約されており、それがSynopsysとAnsysの合併により今では「ビッグ3」となりました。受注残高は増え続けており、15年間にわたってBBレシオ(受注出荷比率)はポジティブです。数字上は、既存ツールに対する不満や満足度の低さは見受けられません。一方、AECでは顧客のプロファイルやツールの使われ方が異なります。EDAよりもはるかに多くの顧客が存在し、建築事務所や建設会社などが何千社もあります。AECソフトウェアの導入数はEDAの10倍以上です。Autodeskのあるツールが、モダンさなどの観点から顧客の注目を集めており、これがスタートアップの参入機会を生みました。このツールに対する不満が全くないわけではありませんが、そのツールブランドは成長を続け、業界最大のユーザーベースを獲得しました。結局のところ、市場で最大の製品が堅調に成長を続けています。このケースではAutodeskですが、ベンダーはツールの改善が必要な点を認識し、そのために投資をしています。いずれにせよ、スタートアップが存在する理由や市場へのアプローチには違いがあります。 Smith:現在、大きな話題となっているのは2D、3D、そしてチップレットです。チップレットベースの設計における市場はどこにあるのでしょうか?Vleeschhouwer氏:EDAベンダーのコメントによると、ツールの開発と提供に関してはまだ初期段階です。この分野がビジネスに占める割合を正確に測定する方法はありません。しかし、大きな成長余地があるという点は良いことです。多くのツールが整備されるにつれ、技術の実現から製品の提供というサイクルが繰り返されてゆくでしょう。この現象はさらに拡大していくと考えられます。ベンダーには、どれだけのビジネスがこの新技術から生まれているのか、より明確な説明を期待したいところです。新しい技術的現象が新たな成長の起爆剤となるため、ベンダーはその貢献度についてより明確な説明を投資家に求められるでしょう。 Smith:ESDアライアンスでは、設計フローのセキュリティ確保に対する関心が高まり始めています。これは非常に大きな問題です。設計フローはより複雑化しており、協力、連携、新しい標準規格が求められています。Vleeschhouwer氏:その通りです。Siemens EDAは、従来型の製品ライフサイクル管理(PLM)において最大手であり、製造業や産業市場にとって重要なプロセス全体の管理を担っています。その代表的な製品がTeamcenterです。興味深いことに、Siemens EDAはまだTeamcenterとCalibreの統合ができていません。これは本来、当然なされているべきことであり、今でもそうだと思います。TeamcenterとCalibreは、Siemens Industry Softwareが保有する2つの10億ドル規模のブランドです。Calibreは半導体製造向けのツールとして圧倒的なシェアを持ち、少なくとも市場の3分の2を占めています。Teamcenterは従来型PLMの市場リーダーです。この2つのブランドが同じ企業に属していることを考えると、それらを連携させる取り組みは非常に興味深いものになるでしょう。Jay Vleeschhouwer 氏についてJay Vleeschhouwer氏は、米グリフィン証券のソフトウェア研究部門マネージング・ディレクターです。ソフトウェア、半導体、コンピュータハードウェアを含むテクノロジー分野のリサーチアナリストとして40年以上の経験があります。Vleeshhouwer氏は、Design Automation Conference(DAC)で毎年「State of EDA」を発表しています。2025年の発表スライドはこちらからダウンロード可能です:DAC presentation (June 2025) 2.pdf 注:ESDアライアンスは、アリゾナ州フェニックスで開催される SEMICON Westにおいて、10月7日(火)午後1時から4時(米国時間)に3時間のデザイントラック「The Convergence of Semiconductor Manufacturing and Design」を開催します。Robert(Bob)Smithは、SEMI のテクノロジーコミュニティであるESD アライアンスのエグゼクティブディレクターです。
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Ann Wu氏がCEOを務めるEDAスタートアップ企業のSilimate社は、チップやIPのデザイナーが設計上の機能および電力・性能・面積(PPA)の問題を検出・修正するためのCopilot(チャットベースの生成AI)を開発しています。Rick Carlson氏は、ESDアライアンスのメンバー企業である Verific Design Automation社の営業担当副社長です。同社は、Silimate社のような中小規模の新興EDA企業や大手EDAベンダー向けに、フロントエンドEDAプラットフォームを提供しています。EDA業界の新旧世代を代表するWu氏、Carlson氏にお話しを聞くことができました。両氏とも、生成AIと大規模言語モデルを基盤ツールとするAI EDAと呼ばれる新分野と、この分野に参入する資金力のあるスタートアップ企業の増加について、楽観的な見方を示しました。Smith:Wuさん、あなたはAppleのハードウェアデザイナーでしたね。AIを基盤技術として起業しようと思ったきっかけは何でしたか?Wu氏:それは常に私の目標でした。Appleは、世界最先端のチップを生産する企業がどのように事業を展開しているのかを理解する機会を与えてくれました。また、最も優れたエンジニアや経営者と一緒に働く機会も得られました。その後、スタンフォード大学に戻り、同様の志を持つ友人Akash Levyと共に魅力的なベンチャー企業を立ち上げる計画を立てました。それがSilimateの始まりです。起業への道を突き進む原動力となったのは、既存のチップ設計プロセスに対する不満でした。AI技術を応用することで、既存のチップ設計手法の限界を解決できる可能性があると感じたのです。Smith:デザイナーが直面するEDAの課題にAIを適用できると考えた理由は何ですか?Wu氏:AIは、これまで手に負えなかったEDAのいくつかの問題に、魅力的な解決策を提供します。従来のEDAソリューションは、(経験則に基づく)ヒューリスティックなアルゴリズムを用いて問題を個別に解決してきました。しかし、明確に定義された入出力の枠組みの間には、(これまでのアプローチでは)解決が困難なグレーゾーンが大量に存在していました。AIを活用することで、このグレーゾーンからパターン、洞察、行動指針を抽出する手段がついに登場したのです。AIのEDAに向けたアプリケーションが大きな興奮と関心を集めているのは、これがマクロな理由です。Smith:つまり生産性向上ということですね。デザイナーにEDAにおけるAIの可能性を納得させるためのキーワードやセールスポイントは他にもありますか?Wu氏:「スピードアップ」もそのキーワードの一つだと思います。最終的に、デザイナーは設計仕様を満たしつつ、テープアウトまでの時間を間に合わせ、さらに短縮することを目指しています。これがすべての決定を、つまり、特定のブロックを完了させるために人員を追加投入するか、チームがシャトルに遅れる原因となる機能を削除するかといった決定を左右します。完全な機能を備えた設計を競合他社より早くテープアウトし、市場に投入できるかが鍵です。「生産性」というキーワードは説得力に欠けます。エンジニアの時間を数分や数時間短縮することが、どのように利益に直結するかを説明できないからです。最終的な決定は、市場投入までのタイムラインに左右されます。市場投入までの時間がすべてです。必要なのは、実際の設計問題を100倍速く特定し解決する手段です。その結果、プロジェクトのスケジュールは大幅にスピードアップします。例えば、AIを活用して大量のデータを処理し、問題を積極的に特定することで、デザイナーは設計を目標に近づけることができるのです。設計内の問題の解決を、数日ではなく数分に、あるいは数カ月ではなく数週間に短縮することが、ディレクター、VP、マネージャーが新しいツールを採用する上で期待する種類の影響です。Smith:ハードウェアデザイナーをEDA分野に駆り立てたものは何ですか?Carlson氏:最も興味深いのは、大規模言語モデル、ニューラルネットワーク、そしてAIです。これは、スタートアップの創業者が、初めてドラマチックなことが実現できると感じるアハ体験のようなものです。私のEDA業界での経験を振り返ると、そこには驚きの連続がありました。Wu氏のSilimateのような企業が提供する新技術の反復的なバージョンによって、複数のアハ体験がもたらされるでしょう。これはまさにゲームチェンジャーです。Smith:ベンチャーキャピタルは再びEDAに投資していますか?Carlson氏:はい。ベンチャーキャピタルの中には、何十年もEDAに投資していないところもあります。彼らは賢い人々です。優れたデューデリジェンスを行うことができる優秀な人材を豊富に抱えています。投資額も相当な規模です。単なるシード資金ではありません。あるスタートアップの最初のラウンドは300万ドルでした。現在は次のラウンドで2,000万ドルを調達中です。彼らは自社のプレマネーが5,000万~6,000万ドルになるはずだと主張しています。まだスタートしたばかりなのに、既に大きな関心を集めています。1年後に振り返ると、この分野にこれほど多くの資金が流入するとは信じられなかったと感じるでしょう。世界の舞台に大きな影響を与えています。今は、コンピュータチップの設計やその周辺にかかわることができれば、素晴らしい時間を過ごせるでしょう。Smith:Y Combinator(YC)がSilimateに投資しましたね。Wu:はい、その通りです。YCが投資する最初のEDA企業に選ばれたことは光栄です。半導体とEDAの分野は私たちの技術インフラの重要な要素ですが、最近まで注目されていませんでした。半導体業界は過去数年、ヘッドラインニュースにはなっていませんでした。しかし今では、Wall Street Journalがほぼ毎日、半導体チップ関連の記事を掲載しています。人々は、これが世界の技術基盤の根本的な部分であり、この技術基盤を駆動するソフトウェアも同様に重要で、投資すべき分野であることに気づき始めています。 著者について:Robert (Bob) Smithは、SEMI テクノロジーコミュニティである ESD Allianceの事務局長です。
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