AIは、半導体のロードマップ、データセンターの設計、そして長期的なインフラ戦略を再構築するほどのペースで拡大しています。AIは、多くの経済的・社会的利益をもたらすことが期待される一方で、その成長に伴い電力需要が急増し、エネルギーが重要な課題として浮上しています。
4,000社以上が加盟する半導体・エレクトロニクス業界の国際的団体であるSEMIは、AIによる電力需要の増加率を抑制しつつ、AIの性能を最大化し消費電力を最小化することを目指して、エコシステム全体を結集しています。このテーマについてSEMIのSmart Data-AIイニシアティブが開催した一連の大好評のワークショップでは、共通認識として浮かび上がったのは、AIの進歩を持続させるには、材料、デバイス、システム、データ伝送、データセンター、新たなアーキテクチャ、ソフトウェアにわたる包括的な共同設計と共同最適化が不可欠であるという点です。この対話は重要な出発点ですが、最終的な目標は、協働的なイノベーションを通じて具体的な行動につなげることです。
AIとエネルギーの課題
最先端モデルのAIトレーニングに必要な計算量は、年間4〜5倍のペースで増加しており、ハードウェアとインフラのキャパシティに対する前例のない需要を生み出しています。この流れは世界的な「データセンター・ゴールドラッシュ」をもたらし、電力供給の限界に迫っています。モデルの規模が指数関数的に拡大するにつれて、学習や運用に必要なエネルギーも増加し、電力消費量が性能向上を制約する大きな要因とりつつあります。さらに、発熱量も増大し、直接液冷などの新技術が必要とされています。
現在のAIおよび高性能計算システムは、数十メガワットという小規模な都市に匹敵する電力消費レベルで運用されており、将来的にはギガワット級のデータセンター・キャンパスへと拡大していく見込みです。米国および世界の電力網が、この需要増に対応が難しくなる可能性があります。そのため、AIインフラはもはや単なる技術課題ではなく、エネルギー、システム、政策の課題となっているのです。
システムと技術の共同最適化
チップ性能や推論効率の継続的な進歩により、電力効率は過去数十年で桁違いに改善してきました。しかし今後は、シリコン技術からデータセンター、さらには電力網に至るまで、計算システム全体にわたる包括的な最適化が必要となります。
例えば、特定用途向けにプロセッサをカスタマイズすることで効率を高めることができます。しかし、データセンターの電力消費のうちプロセッサ自体が占める割合は一部に過ぎません。データ移動、電力変換、冷却にも大きな電力が使われているのです。特にデータ移動に必要なエネルギーは距離とともに急激に増大しており、パッケージや基板、ネットワーク間のデータの転送の方が、計算そのものより多くの電力を消費する場合もあります。このため、データの近接性が重要な設計原則となっています。
したがって、計算・通信・電力管理を含めたシステム全体での最適化が中核となります。高度なパッケージングや集積化が性能向上の中心的技術となってきており、2.5Dや3Dインテグレーションにより計算、メモリ、I/Oを密に結合することで、ビット当たりのエネルギーを削減し帯域幅を拡大することが可能になります。さらにフォトニクスや低消費電力材料の導入により、データ処理と転送のコストを一層低減できます。
要するに、チップ単体の改善だけでは不十分であり、エネルギー最適化は部分最適ではなく、システム全体での最適化が不可欠です。
ハードウェアとソフトウェアの共同最適化
データをなるべく局所化する上で、ソフトウェアアルゴリズムは、ハードウェアアーキテクチャと同等に重要となります。ただし開発サイクルにはズレがあり、ソフトウェアは数ヶ月で更新できますが、ハードウェアの設計・製造には数年を要します。
このギャップを埋めることはできませんが、両者の連携強化により効率は大きく改善することができます。例えばアルゴリズムの一部を分散DPUにオフロードしたり、計算精度を調整したりすることで消費電力の削減が可能です。クラウドとエッジの間で処理を分担することでもエネルギー削減につながります。さらに、冗長性を持たせるなどのリスク対策により、将来のアルゴリズムやモデルの変化に柔軟に対応する設計が可能になります。
計算方式の多様化
現在のインフラ投資はAIが独占的な状況ですが、将来のコンピューティングは量子、ニューロモーフィック、フォトニクス、アナログなど多様な計算方式が共存する形になると考えられます。
それぞれの方式は最も適した領域で活用されることになるでしょう。例えば量子コンピューティングは従来の計算方式を置き換えるのではなく、特定問題において補完的役割を担うと考えられます。しかしその進展は半導体インフラに強く依存しており、誤り訂正や制御、ハイブリッドアルゴリズムには高性能な半導体システムが不可欠です。
単一で万能な計算方式は存在しませんが、システム設計によってこれら多様な計算方式を統合し、エッジからクラウド、さらにはエクサスケール環境まで一貫したワークフローを実現することができるのです。
重要性と注目点
- エネルギーが、現在はAI性能とインフラ拡張の主要制約となっている。
- ギガワット級AIデータセンターと電力網の拡張が、今後のAI成長を左右する。
- データ移動、メモリ帯域、接続効率、先進パッケージングが重要な戦略要素になる。
- 3D ICやフォトニクスなど先進技術の統合と共同最適化が重要になる。
- ハードウェア、ソフトウェア、システム全体での共同最適化が必要になる。
- 将来のハードウェアアーキテクチャは、量子やフォトニクスなど多様な計算方式を融合したものとなる。
結論として、AIは大きな可能性を持つ世界的原動力となっているが、その未来は技術、エネルギー、インフラ経済がどのように連携するかによって形作られます。この課題の解決は極めて困難です。なぜなら、多様で利害の異なるプレイヤーが効果的に協働する必要があるからです。
SEMIは、この課題に協力して取り組み、持続可能な形でAIの潜在力を最大化するため、Smart Data-AIイニシアティブへの参加を呼びかけています。次回のワークショップは、7月22日にシリコンバレーで開催されます。
出典
SEMI Smart Data-AI Initiative – Future of Computing
- Energy-Efficient Computing for AI and Beyond, SEMICON West, October 2025
- Sustainable AI Systems, SEMI HQ, March 2026
執筆者
- Dr. Pushkar P. ApteはSmart Data-InitiativeのSEMIの戦略的技術アドバイザです。
- Dr. Melissa Grupen-Shemanskyは、SEMIの上級副社長兼CTOです。