電気自動車へのシリコンカーバイドパワーデバイスの適用が止まらない
By Dr. Min Lu, SiC Substrate Task Force Leader, Migelab
ご存じの通り、Tesla Model 3のメインドライバとしてオール・シリコンカーバイドモジュールが採用されていることにより、シリコンカーバイドの大量採用への道が切り開かれています。これまでにModel 3は世界で100万台近く販売され、3年連続で世界の販売数ナンバーワンモデルに選ばれました。これは、電気自動車へのシリコンカーバイドパワーデバイスの採用が技術、産業、市場において何ら問題がないことを証明しています。
シリコンデバイスと比較して、シリコンカーバイドモジュールには、車の航続距離を5~10%増加させ、より速く、さらに電力の消費を抑えつつより速く充電させることができるという優れた性能があります。しかしながら非常に高価なものともなっています。シリコンカーバイド産業の頭を悩ませているのは、シリコンカーバイド基板の価格が高すぎるということにあります。
近年、市場の大幅な需要増や収量改善のためのシリコンカーバイド基板製造技術の発展に伴い、シリコンカーバイド基板の価格は年々低下してきています。しかしそれでもまだ非常に高価なものであることに変わりはなく、価格は同じサイズのシリコン基板の約60倍となっています。シリコンカーバイド基板はデバイスコストの最大50%を占めており、それが最終的にシリコンカーバイドデバイスの高価格につながっています。
デバイス製造コストは材料サイズが大きくなるに伴いわずかしか増加しないため、デバイスのコストを低減するためには材料サイズが大きいものを選ぶことが第一優先となっています。現在、4〜6インチ(約10~15センチ)のシリコンカーバイドが主流になっていますが、3年後には8インチ(約20センチ)も市場に参入すると予測されています。そのため、 SEMI M55 Standard, Specification for Polished Monocrystalline Silicon Carbide Wafers(鏡面単結晶シリコンカーバイドウェーハの仕様) の最新版の発行は保留となっています。この改訂の主な内容として、8インチシリコンカーバイドの工業化に備えて、その仕様要件を拡大しています。SEMI Draft Document 6693, Specification for 4H-SiC Homo-Epitaxial Wafer(半導体単結晶ホモエピキャルウェーハの仕様), そして3つの試験方法 SEMI Draft Document 6768, Test Method for Micropipe Density of Silicon Carbide Wafer by Laser Reflection(レーザの反射によるシリコンカーバイドウェーハのマイクロパイプ密度の試験方法), SEMI Draft Document 6767, Test Method for Flatness of Silicon Carbide Wafers by Optical Interference(光学干渉によるシリコンカーバイドウェーハの平坦度の試験方法), and SEMI Draft Document 6769, Test Method for Residual Stress of Silicon Carbide Wafers by Photoelastic(光弾性によるシリコンカーバイドウェーハの残留応力の試験方法) が開発中となっています。これら4つの書面は、8インチの材料サイズもカバーします。
シリコンカーバイドが「車に乗る」ことは、独占的な技術や用途ではありません。なぜなら、車にはすでに「シリコン」という成熟した技術があるからです。つまり、シリコンカーバイドが「車に乗る」ことは、必然的に「シリコン」への強い妨害につながります。その競争「領域」には、メインインバータ、OBC、DC/DCなどがあります。もちろん、車に搭載されているMCU、AI、CMOSイメージセンサー、情報、知能、制御チップなどは、誰も太刀打ちできない「シリコン」網に入っています。
シリコンカーバイドは上記ように優れた特性を有してはいますが、それが消費者の厳しい要求であるのか、それとも使用上の問題点であるのか、それにより人々がこれらの便益に対して支払う意思があるかどうかが決まります。これが実際には非常に敏感な市場の問題になっています。市場に解決させましょう。加えて、自動車産業は伝統産業であり、パッシブセーフティは「生と死」の問題に関係しています。そのため、サプライチェーンシステムは常に厳格かつ保守的であり、OEMメーカーの認定サプライヤーリストに入ることは非常に困難なものとなっています。企業の技術、信頼性、給能力のしきい値は非常に高く、そして認証サイクルも非常に長くなっています。
電気自動車は、伝統的な自動車産業から生まれた新しいビジネスフォーマットの特徴を持ってはいますが、上述した高いしきい値と長い認証サイクル特性は以前と同じままです。
AEC-Q101、QG-324製品認証、そしてIATF16949システム認証などの自動車法規制は、その法規制の適用、すなわち必要最低限の要件への足がかりというだけであり、より厳しいのは顧客認証であるとよく耳にします。
デバイス/モジュールに対するこれらの認証要件は、必然的にシリコンカーバイド材料に対する認証および要件に引き継がれます。自動車用のシリコンカーバイド材料に関しては、関連する規格や認証はありませんが、この分野での研究や創造が必要であると思います。シリコンカーバイド材料の品質はシリコン材料のレベルからはかけ離れているため、電気自動車へのシリコンカーバイド材料の適用を促進するには、自動車規制に適合する高い信頼性のある材料を選択するスタンダードを与える必要があります。
現在、BYDはシリコンカーバイドを使用したTesla Modelに加えて、BYD Hanモデルのフルシリコンカーバイドモジュールメインインバータも使用しています。OBCでシリコンカーバイド技術を使っている自動車メーカーはおそらく何十社もあるでしょう。しかしながら、自動車用パワーデバイス市場におけるシリコンカーバイドの普及率は約5%に過ぎません。もちろん、Wolfspeed、インフィニオン、ローム、ONセミコンダクターなど多くのデバイスメーカーがTier1や自動車メーカーと提携しています。「車に乗る」ためにシリコンカーバイドの準備を万全にしているのは、結局、これが将来的に年間何百億ドルものお金になる「大きなケーキ」であり、誰も見逃したくないからです。
以上の理由から、シリコンカーバイドの「車に乗る」道は長く続き、その市場浸透率はシリコンカーバイド価格の下落率(シリコンカーバイド基板価格の下落が中心)に左右されながら、2030年か2035年ごろまでかかるのではと推定されています。そのころ自動車用パワーデバイス市場におけるシリコンカーバイドの普及率は約50%に達することでしょう。したがって、シリコンカーバイドとシリコンは車の中で長期間共存することになります。シリコンカーバイドの価格がある程度下落すれば、自動車市場の生産能力が最も大きい中・低価格車市場に参入するでしょう。長い浸透サイクルは実際には良いことです。これは、成長するためのより多くの時間をEV業界へ与えると同時に、「先行者」に追いつくためのより多くの時間と機会を「後発走者」に与え、比較的健全で温和な市場競争の形成を促進することになるでしょう。
EVレースでは、最終的に誰が勝つか、主なレースは下記になるのではないでしょうか。
- テクノロジーが王者である。王者の技術は最先端の技術ではなく、最高の技術です。特に、結晶成長技術やパッケージ技術など、低コストで高性能な技術にはブレークスルーが必要です。1つは、手頃な価格に関する問題です。もう1つは、ウェルの使用に関するものです。この点に関して、材料およびデバイスの標準は、技術のペースに追いつかなければなりません。
- 経営志向。OEMサプライチェーンに入ると、需要はかなりのものになります。大規模で信頼性が高く安定した安全な生産能力によって支えられなければなりません。厳格で高度で成熟したマネジメントシステムがなければ、その仕事をするのは難しいと思われます。そのため、品質、EHS、省エネ、排出削減などの管理基準やシステム認証を継続的に強化する必要があります。
- 協力は魂である。車両規制の適用には高いしきい値と長い期間があります。その中核は、需要と供給の間に強固で信頼できる信頼関係が確立されなければならないということです。この方法でのみ、安全で信頼性が高く費用対効果の高い電気自動車を製造するため、効率的に通信し、問題を迅速に解決し、効率的に反復することができます。そのため、シリコンカーバイド基板とエピタクシーデバイスおよびモジュール-Tier1-OEMサプライチェーンの協力アライアンスを最初に確立し、徹底した実践的な協力を行い、徐々に完全な信頼関係を確立する必要があります。したがって、サプライチェーン管理、共同イノベーションにおけるパテントプール共有、そして標準必須特許はすべて、注目すべき産業要素となっています。
端的に言えば、「車の上」にあるシリコンカーバイド製のパワーデバイスは止められません。
まだまだ道のりは長いけれど、楽しみですね!
参加方法
SEMIスタンダードの開発活動は、全主要製造地域で年間を通じて行われています。
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June 3, 2021