台湾と日本からの最近で最も大きなニュースといえば、間違いなく2月24日に執り行われたTSMCが日本にはじめて建設した熊本工場の開所式のニュースでしょう。この出来事を明治維新(1868年に明治天皇のもとで日本が王政復古をした歴史的な政治転換)になぞらえて、その重要性を強調した記事もありました。23万平方メートルのファブは今年後半に量産を開始する予定です。
今年3月にグランドメイフルホテル台北で5年振りに開催された、中国東亜経済協会主催の日台二国間会議に参加しましたが、そこで目にしたのは台湾が日本から迎えたおそらく過去最大規模の代表団でした。その大人数は両地域における半導体の並外れた重要性を反映しており、会議のエネルギーと興奮が手に取るように伝わってきました。
台湾からは蔡英文総統、日本からは日本経済団体連合会東亜経済人会議日本委員会の飯島彰己委員長、日本台湾交流協会の片山和之台北事務所長らの指導者が出席されました。
会議終了後、東亜経済協会の招きによりTSMC Museum of Innovationを視察した日本代表団は、両地域の今後の協力関係強化に向けた強い意気込みと期待を表明しました。
近年台湾と日本のチップ産業は、半導体製造工場建設への二国間投資を加速しています。TSMCの熊本第一工場の開設は、台湾と日本の半導体業界にとって重要な節目となりました。両地域のチップ産業は、シリコンウェーハ、製造装置、化学薬品や各種消耗品など幅広い分野で長年密接に結びついており、さらに相互依存関係が強まり、新たな投資が生じるのは素晴らしいことです。
TSMCの熊本工場はターニングポイントです。台湾の半導体サプライチェーン全域から、企業がTSMCの後を追って日本で事業を開始し、新たな市場、パートナーシップ、顧客を開拓することは確実です。先端製造装置、ファクトリー・エンジニアリング、半導体消耗品、特殊化学品の台湾サプライヤーは、新市場のニーズに応えるため、日本に必ず進出します。
一方で、日本の半導体サプライチェーンも九州に進出し、クラスター効果を強めて地域のエコシステムを支えるでしょう。双方による九州進出によって、日台の産業協力と人材交流が拡大すると同時に、台湾半導体企業の海外進出を促すことにもなるでしょう。
TSMCの日本への投資は、多くの半導体製造地域が地理的多様化を続ける中、グローバル半導体サプライチェーンのレジリエンス強化にもつながります。多様化によるチップ供給の信頼性確保が求められる大きな理由は、半導体が産業の米となり、IoTやAIといった最先端テクノロジーの実現に不可欠な存在となったことにあります。
自動車産業はその好例です。TSMC熊本工場の開所式には、TSMC熊本第二工場建設で大きな役割を担うトヨタ自動車とデンソーをはじめとする日本の自動車業界のリーダー企業の代表者が出席しました。この工場は、日本の自動車産業にとってレジリエントな半導体サプライチェーンが極めて重要であることを示しています。また、将来的に自動車メーカーとの取引拡大を目指すチップメーカーにとっても、この工場は決め手となるでしょう。
熊本工場は海外企業に日本への半導体事業拡大を促すだけでなく、台湾の半導体を争奪する諸地域に競争圧力をかけることにもなり、台湾半導体業界の交渉力強化につながります。
また、TSMCが日本で成功すれば、日出国の半導体産業のグローバルサプライチェーンにおける価値が高まり、日台のチップ産業が補完しあって力をつける中で、日本のチップ産業復活も進んで行くでしょう。
グローバル展開による国際化は、台湾の半導体産業が今、着手すべき道です。台湾の半導体業界にとって海外進出の黄金期が、そしてグローバルサプライチェーンにおける台湾の注目度を高める好機が到来したのです。
世界中にプレゼンスを拡大することで、台湾は志を同じくする地域と技術交流、顧客サポート、人材育成、グリーンエネルギー、持続可能な開発といった重要分野で協力する新たな機会を得ることができます。このような協力関係は、知識、資源、技術の共有を促進し、世界市場における競争のペースを加速させ、最終的にはより多くの地域にとってのWin-Winを実現し、世界全体の半導体産業の成長に貢献するのです。
Terry Tsaoは、SEMIのグローバル・マーケティング最高責任者 兼 SEMI Taiwanのプレジデントです。