SEMICON Japan 2023では、「世界市場における日本半導体産業の競争力―競争力をいかに高めるか、グローバル視点も踏まえ、識者に聞く」というタイトルのもと、日本の装置と材料の強みを伸ばし、かつ、デバイス製造を含む半導体産業全体の競争力をいかに高めるかという観点から国会議員小林鷹之をはじめ識者の方々をお迎えし議論していただきました。
その続編となる本ウェビナーの理解を深めるため、前回の議論をまとめます。
登壇者のポジショントーク
南川氏: 日本の半導体産業の競争戦略に関する重要な観点について
1. 半導体市場の現状と展望
- 半導体市場は大きな成長期に入りつつあり、過去60年間にわたり成長を続けてきた。
- 現在、半導体市場は変革の時期にあり、過去20年間の個人消費による成長から、DX、GX、カーボンニュートラル社会への移行による政府主導の投資が主流になりつつある。
2. 供給と消費のポジション
- 世界の半導体の8割近くが中国・アジアで消費されており、かつ半導体製造の中心地はアジアである。
- アメリカはブランドベースで半導体の50%を供給しているが、製造に関しては10%にとどまる。
- 半導体製造装置の供給は、アメリカ、日本、欧州の三極で9割を占め、日本とアメリカが特に強い地位を持っている。
3. 日本の重要性と支援策の必要性
- 日本はウェーハ、レジスト材料、ガス、ターゲット材などの半導体製造における材料に関して50%以上のシェアを占めており、アメリカにとって重要なパートナーである。
- こうした状況下、政府による半導体支援策の強化が必要であり、日本は世界の重要なサプライチェーンの構築において注目を浴びる国である。
南川氏の発言からは、日本の半導体産業が世界のサプライチェーンにおいて重要な位置を占めており、政府支援策の強化が必要であることが示唆されています。また、半導体市場が大きな変革期にあり、これに適応するためには新たな投資や取り組みが必要であることが強調されました。
上野弁護士:国際競争力の観点から日本の半導体産業における問題点を整理し、世界の半導体関連政策の動向を分析
1. 政策の類型化
- 政策は育てる(プロモーション)と守る(プロテクション)の観点から考えられる。
- 各国はサプライチェーンの強みを活かし、弱み(チョークポイント)を補完するために補助金による産業育成に力を入れている。
2. 日本の政策動向
- 日本では、私見ながら、合計15億円規模の補助金・投資額が言われており、2023年までには12兆円規模の官民追加投資が計画されている。
- 企業は政府の補助金を受けつつ、自社の付加価値を発揮し、規制の動きに適応することが競争戦略として重要である。
3. 企業の対処方法
- 企業は法的・地政学的リスクの収集・分析・戦略実行を行い、リスク分析から最終的な意思決定までをPDCAサイクルで繰り返すことが重要。
- 人材の育成も重要であり、競争戦略を考える際には欧米との競争も見据える必要がある。
上野弁護士の発言からは、日本の半導体産業が直面する国際競争力の観点からの課題や、政府の支援策、企業の対処方法が明確に示されています。特に、リスク管理や人材育成の重要性が強調され、政策としての取り組みと企業の戦略が緊密に連携する必要性が示唆されています。
小林議員:日本の半導体産業の復活と競争力向上について、過去から現在、そして将来にわたる経緯と戦略を示唆
1. 背景と現状の認識
- 1980年代から1990年代初頭にかけて世界トップであった日本の半導体産業が後退し、その復活への注目が高まっている。
- ラピダスが2027年に世界最先端ロジックの生産を目指し、注目を集めている。
2. 経済安全保障と半導体産業
- 半導体は経済安全保障に直結するため、自民党内で半導体を含む経済安全保障に関する会議体を立ち上げ、その重要性を議論してきた。
3. 戦略の構築
- 半導体産業の再生に向けた戦略は、TMSCの誘致、アメリカとの連携による次世代半導体製造の実現、光電融合技術など3つのステップで構築されている。
- 10兆円の投資を通じて、国力を高めるための取り組みを打ち出し、国としてのコミットメントを示している。
4. 技術革新と後工程の重要性
- 技術革新と後工程の自動化が半導体産業の発展に不可欠であると認識しており、DXやGD推進による電力需要の増加にも対応する考え。
5. 科学技術力と国力
国力の源泉は科学技術力だ。半導体産業の復活は国富への道であり、日本を、世界をリードする国にするための重要な一歩である。
小林議員の発言からは、半導体産業の再生に向けた明確な戦略と、その過程での技術革新や経済安全保障の観点が強調されています。また、国としてのコミットメントや、科学技術力の重要性についての強い信念が示されています。
パネルディスカッション
導入として
ファシリテータの榊原氏は、半導体はDXやGXなどあらゆる産業に必要な要素であり、各国が国産化を進める中で規制も強化されていることから、世界の半導体戦略や製造拠点の確保策、製造装置や材料分野の競争力向上の課題と解決策について議論していきたいとしました。
・各国の半導体規制、半導体産業育成策など、世界の半導体戦略について
上野氏:各国の半導体産業に関する規制や支援策について
育成策ではアメリカが約7.1兆円の投資を計画し、輸出管理規制を強化しており、中国も補助金や人材育成を行い、対抗規制を取ることでアメリカとのバランスを図っています。日本もアメリカに合わせ規制強化の動きがあり、守る観点では外為法省令改訂や対内投資管理の強化が進んでいます。これらの動向を踏まえ、日本も対応策を検討する必要があると述べました。
南川氏:世界の半導体戦略が日本の業界に与える影響について
半導体の生産は一国で完結することは不可能であり、日本がグローバル・サプライチェーンの中でどの分野を重視し、どの強みを伸ばしていくかが重要であると指摘しました。多くの国が半導体支援を行っており、供給過多の可能性がある中で、日本は価格競争で負けない戦略を模索する必要があります。そのためには、モジュール化などの差別化を行い、持続的な競争力を確保することが重要だと述べました。
・デバイス製造中心に、その製造拠点を如何に確保すべきか、国家として講ずるべき策について
小林議員:日本の半導体戦略と世界の状況を比較
日本は経済安全保障を重視し、半導体産業の戦略的自律性と戦略的不可欠性を強調しています。先端ロジックからメモリー、産業用スペシャリティー半導体、先端パッケージまでの戦略を立て、経済安全保障法や5G法を通じて研究開発や設備投資を支援しています。日本政府は半導体産業の復活に積極的に取り組み、世界のトップに返り咲くための資金的コミットメントを強調しました。
次に、榊原氏は、世界の半導体戦略と日本の戦略を踏まえ、先端ロジック半導体の国内製造基盤確立が課題であることを指摘、生産量産と供給・需要の側面から考察し、競争力向上のための具体的な議論へと展開します。
南川氏:先端半導体デバイスの量産における課題と解決策について
IBMからの技術供与でサンプル立ち上げは進むが、量産には新たな技術が必要、また、他社とのコラボレーションや新たな生産モデルの探求が必要となるとしました。市場の方向性に合わせ、差別化が鍵であり、3Dパッケージングやチップレットが注目される中、日本が一気に取り組めばトップ集団入りのチャンスがあり、これからの3〜4年が重要ことを強調しました。
小林議員:半導体製造装置と部素材の安定供給を強化するための支援策について
経済安保推進法に基づくサプライチェーン強靭化への取り組みや、国家戦略としての半導体産業復活に向けた具体的な施策を説明するとともに、ラピダスの技術獲得と量産開始への取り組みに注力し、2兆円の補正予算を組んでいるとし、国家戦略の成功に向けては、国の資金的コミットメントが不可欠であり、自身や与党はその実現に取り組む姿勢を崩さないと強調しました。
上野氏:法務的側面からの量産技術に関する重要な注意点を指摘
先端技術の規制強化により、情報開示の範囲が問題視されること、特にロシアや中国との取引に制約が生じる可能性があるとして、企業は、適切な業務を行いながら、規制されていない部分にエビデンスを残し、業務を継続する必要があること、また、先端技術の共同研究開発においては、日本企業が自身の利益を守るために、相手国からも同等の技術供与を求める契約内容が重要であることを述べました。
続いて、榊原氏は、日本半導体業界の凋落には的確な需要把握と柔軟な対応が欠けていたと指摘し、ゲームチェンジングな戦略が必要であると述べ、的確に需要を掴み柔軟に対応していくための戦略についてパネリストの発言を求めました。
南川氏: 日本が半導体需要に的確に対応するためには、日本の差別化が重要であると主張
半導体だけでなく、日本の優れた技術を組み合わせて携帯用や車用のモジュールを作り込み、企業間の横のつながりを強化することで競争力を高めるべきだと述べるとともに、日本企業がグローバル・マーケットで勝つためには、半導体だけでなくモジュールまで含めて競争する視点が必要だと述べました。
上野氏:企業が半導体供給において輸出管理に留意すべき点を指摘
輸出管理は複雑で変動が多く、技術者と法務部門が協力して対応する必要を述べました。また、市場や顧客との関係から見ると、日本は防衛予算を使わないため、最先端半導体を作るための方向性がずれる可能性があることを指摘し、このため、日本でも防衛に使える半導体を育成し、国力を挙げる必要があると述べました。
小林議員:日本の半導体供給戦略について、需要の把握と市場の創造が重要であると強調
日本には世界に対抗できる半導体企業が必要であり、そのためには最先端の情報と技術が集まる環境が不可欠とし、日本のパワー半導体は一定のシェアを持つものの、個々の企業のシェアはまだ低く、協業や再編が必要であると指摘しました。政府は日本が世界の三極の一角を占めるよう支援すべきだと述べ、ラピダスを活用した専用チップの開発や、シリコンバレーへの進出を促進すべきだと主張。さらに、半導体産業の勝負は単なるチップの競争ではなく、モジュールの戦略も重要であると強調し、国と民間企業の連携が必要だと述べました。また、半導体のデュアル・ユース性と安全保障上の重要性を強調し、経済力と安全保障力の両面を高めるために半導体産業を戦略的に考える必要性を示唆しました。

最後に、榊原氏は、国内の半導体製造基盤確立について、製造装置や部素材、原料分野の競争力強化が重要であり、技術革新や国内産業の育成が鍵と述べ、そのために何ができるか小林議員に意見を求めました。(半導体製造装置や材料分野の競争力の維持・向上、課題と解決策)
小林議員:2030年に20兆円規模の半導体製造装置市場が期待される中、これまで日本の装置メーカーが最先端技術を学びながら競争力を維持してきたことを強調。今後も世界の最先端メーカーと連携しつつ、国内の最先端半導体メーカーの育成が必要との考えを示しました。そして、サプライチェーン強靭化プログラムや経済安全保障重要技術育成プログラムを通じて、部素材を含む技術革新を進める必要があるとした上で、ラビダスとの連携を通じた研究開発の重要性を強調しました。
パネルディスカッションの最後、各登壇者は次のように考えをまとめていただきました。
上野氏
米国の輸出管理における新制度「第三者通報による酌量制度」の重要性に言及し、技術の不正輸出への対策の必要性を強調しました。違反行為の通報者が将来的に優遇される制度は、企業にとってインセンティブとなることもあるが、法的な変化に対応し、コンプライアンスを確保する姿勢が競争上重要であるとしました。また、補助金や企業間競争における公平性も考慮し、幅広い視点で戦略を立てる必要があるとしています。
南川氏
今後日本が半導体産業復興のために必要なものは人材であり、その人々の目的が一つになることだと述べました。そのことによって生まれる大きな力が大切であり、過去にはそのことを経験していると指摘した上で、ラピダスが無理との意見もあると思うが、批判ばかりしていても何も生まれない、目標を一つにして、10年間突っ走れば、日本はいいところまで行けると思っていると結びました。
小林氏
民間企業の挑戦が鍵であり、政府は真剣な取り組みや起業を支援するべきだと強調。また、人材育成が重要であり、イノベーションの基盤は教育と人づくりにあると述べました。熊本の事例を挙げ、最先端の人材育成が必要であり、ラピダスの成功によって若者が育つ環境を構築したいと訴えました。
榊原氏
本パネルディスカッションにおいては、各企業の企業戦略とともに国家としての半導体戦略をうまくかみ合わせながら、競争力を高めていくべきということが伝えられたと思っているが、時間の関係であまり語ることができなかった装置・材料に関するディスカッションについては、今後も継続して議論を展開していきたいと述べ、パネルディスカッションは終了となりました。