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Chips PCB Wafers
9月 29, 2026
9月 29, 2026

先端パッケージとその先にあるモジュール開発をつなげる考えが重要

Chips PCB Wafers

まずは先端パッケージに関してまとめます。

半導体開発において、微細化(ムーアの法則)が物理的・コスト的な限界に近づく中、複数のチップを1つのパッケージに統合して性能を向上させる先端パッケージング技術が、AI半導体などの性能を左右する新たなボトルネックとなっています。 

世界市場規模が拡大を続ける中、米国の輸出規制に直面する中国は、微細化の遅れを補うための国家戦略として先端パッケージング開発に巨額の投資を行い、凄まじいスピードで技術力を高めています。 
先端パッケージ開発の現状と、中国の具体的な技術力・動向についてまとめました。

 

従来のパッケージングはチップを保護し外部と接続するという後工程の役割でしたが、現在はチップの性能を引き出す前工程の延長(中工程)と捉えられています。主な技術トレンドは以下の3つです。 

  • 2.5D / 3Dインテグレーションとチップレット: 異なる機能を持つチップ(ロジック、メモリなど)をシリコンインターポーザーと呼ばれる基板上で超高密度に2.5D接続したり、垂直方向に3D積層したりする技術です。AI向けGPUとHBMが代表例です。 
  • FOWLP(Fan-Out Wafer Level Packaging): チップのサイズよりも広いエリアに端子を広げて配置する技術で、薄型化と高密度化を両立します。 
  • ハイブリッドボンディング: 金属バンプを介さずに、Cu配線同士を直接接合することで、接続密度を飛躍的に高める次世代技術です。

現在、この分野はTSMCのCoWoSが圧倒的なシェアを握っていますが、供給不足が続いており、世界の半導体サプライチェーン全体のボトルネックとなっています。 

 

中国は、最先端の露光装置(EUVなど)の入手が米国の規制によって制限されており、5nm以下の微細化ができないため、既存の14nmや7nmのチップをチップレット等で繋ぎ合わせて高性能AIチップを作るという戦略をとっています。 
 

① 封止・テスト(OSAT)大手の台頭

中国には、世界のOSAT市場でトップクラスに君臨する巨大企業があり、これらが開発を牽引しています。

  • JCET: 世界第3位のOSATで2.5D/3D、FOWLPの量産体制を整えており、上海などで巨額の先端パッケージ投資を継続しています。 
  • TFME: AMDなどの大手と深く提携し、チップレットやAI・GPU向けパッケージング技術を急速に高度化させています。
  • Huatian Technology: 2.5D/3D技術に焦点を当て、数千億円規模の新規工場建設・増産計画を次々と打ち出しています。 
     

② 猛烈な投資スピード

中国政府およびファンドは、投資の重点を前工程の微細化から先端パッケージングへ軸足をシフトさせています。2026年前半だけで、先端パッケージング関連の10大プロジェクトに対し約40億元(900億円規模)以上の投資が次々と実行され、ヘテロジニアス・インテグレーションの量産化を急いでいます。 
 

③ HBMの国産化とエコシステム

AI半導体の性能を左右するHBMの分野でも、中国国内のDRAMメーカー(CXMTなど)とこれらOSATが密に連携し、インターポーザーやテスト工程を含めた中国国内だけで完結する先端AI半導体サプライチェーンの構築を急ピッチで進めています。HuaweiのAIチップ「Ascend」シリーズの進化なども、こうした国内の先端パッケージ能力の向上に支えられています。 

 

開発スピードは驚異的ですが、世界の最先端(TSMCやINTEL、SAMSUNG、および日米の素材連合)と比較すると、まだいくつかの課題が存在します。 

  • ハイブリッドボンディングの精度不足: より高度な3D積層に必要なハイブリッドボンディングや、超高精度な検査装置・EDAの一部はまだ未成熟です。
  • 熱管理と材料の制約: 高密度にチップを詰め込むため、発熱対策が極めて難しく、これに必要な高性能なサブストレートや特殊ガラス、樹脂などの高機能材料は、依然として日本や台湾のサプライチェーンに依存している部分が多いです。
  • 米国のさらなる規制強化: 米国商務省は、中国がパッケージングを迂回策に使うことを防ぐため、先端パッケージングや特定のIC設計者を狙った輸出管理規則の強化を継続的に行っています。 

中国の先端パッケージング技術開発は、単なる組み立てではなく、米国の規制を打破するための国家戦略として位置づけられています。装置の国産化率も年々上昇しており、数年内にはコモディティ領域だけでなくAI向け先端領域でも完全に自給自足できるレベルへ到達する勢いを見せています。
日本企業が強みを持つ半導体製造装置や材料の分野において、先端パッケージングの国際競争で日本が目指すべき勝ち筋は、かつての日の丸半導体のような自国でチップを製造して売るスタイルではありません。 

 

日本はチップのブランド名(NVIDIAなど)や最終製造ファブ(TSMCなど)という目立つ表舞台ではなく、それら全てを裏で支配し、誰からも拒否されない黒幕として勝つのが最も現実的かつ強力なシナリオです。もちろん経済安全保障の観点からRapidusが成功することは重要ですが、その背景には、日本の材料・装置の競争力を維持するための先端工場を日本に持つことの意味もあります。
現在の世界秩序において、日本は世界中の半導体メーカーが依存せざるを得ない、代替不可能なサプライヤーとなることが最大の勝ち方です。具体的な戦略は以下の4点になります。 
 

①コンソーシアムによるデファクトスタンダードの確立

先端パッケージングは、単一の材料や1台の装置だけで成立するわけではなく、複雑なプロセスをすり合わせる必要があります。 

  • 日本独自の共創プラットフォームとしてレゾナックが主導するJOINT3のように、装置・材料の競合や垣根を越えた国内企業10社以上が連携し、顧客が求めるパッケージングソリューションを丸ごと提案・実証できる体制を築いています。 
  • 個別に買わせるのではなく、日本の装置・材料の組み合わせが最も歩留まりが良いというデファクトを握ることで、海外のファウンドリやOSATに対する価格交渉力と絶対的な地位を維持できます。
     

②海外ファウンドリのR&D・中工程の国内誘致と抱き込み

TSMCに続き、サムスン電子がみなとみらいにAI半導体向けの先端パッケージング研究拠点APL(Advanced Package Lab)を開所するなど、海外大手が次々と日本に拠点を構えています。 

  • 海外メーカーからすれば、イビデンの最先端基板や、ディスコの薄化装置、東京エレクトロンのボンディング装置のプロトタイプに、世界で一番早くアクセスして自社専用にすり合わせたいというインセンティブがあります。 
  • 日本側としては、これらを国内に誘致することで、自国のサプライチェーンを盤石にしつつ、海外の最先端AIチップ開発のロードマップを常に把握できるという、安全保障・情報面での優位性を得られます。
     

③次世代技術の光電融合やハイブリッドボンディングでの先行

現在のCoWoSなど2.5D/3D技術の次に来る、真のブレイクスルー技術の特許や要素技術を先んじて押さえる戦略です。

  • 光電融合(CPO)ではパッケージ基板の重要性はさらに高まっています(新光電気工業やイビデンなどが先手を打っています)。
  • ハイブリッドボンディングは接着剤やバンプを使わずに銅同士を直接接合する技術です。高精度な工程において、ウエハを切る・削る・磨く技術を極限まで追求するディスコや東京エレクトロンの装置、および超高純度の洗浄・化学薬品のシェアを維持・拡大することが重要です。
     

④チョークポイントの戦略的独占

中国をはじめとする世界各国がどれだけ巨額の投資をしようとも、日本企業が供給を止めれば、世界の最先端AIサーバーの製造がストップするという必須の特定部材・装置を徹底的に維持する、防衛的かつ攻めの戦略です。 

  • たとえば、パッケージを保護・封止するエポキシ樹脂や、3nm以下に使う微細レジスト、ウエハを薄く削るときに使うダイシングテープなどは、日本企業が世界シェアの大部分を握っています。
  • 価格競争に巻き込まれる汎用品ではなく、他国が真似できない高付加価値な製品を強化し続けることが、日本の確実な勝ち方となります。

さらに先端パッケージの先にはモジュール開発があると思います。日本には電子部品や小型モーター、基板やコネクターなど、世界のトップ企業が存在します。これらの企業が協調開発することで、日本にしかできないモジュールを提供することができます。ここは日本企業だけで組む必要はなく、海外企業との連携も重要です。

先端パッケージのさらに先にあるモジュール開発(あるいはシステム・イン・パッケージ:SiP、ヘテロジニアス統合)において、日本の電子部品、小型モーター、基板、コネクターの大手企業が協調開発する意義は非常に高く、むしろすでに国家プロジェクトや企業間アライアンスの形で急速に動き始めていると認識しています。
かつての半導体はチップ単体で性能を決めていましたが、AIや自動運転、人型ロボット、ドローンなどの進化により、現在は半導体+受動部品(コンデンサなど)+センサー+アクチュエーター(モーターなど)+超高速コネクターを1つの超小型モジュールに詰め込む技術が求められています。
日本企業がこの領域でどのように協調し、どのような可能性を秘めているのかを次回に報告します。