はじめに
昨今、半導体は高集積化、高機能化、高性能化の歴史の中で、次々と新規の化学物質を採用してきました。1985年には、わずか11種類の元素しか半導体には使用されていませんでしたが、現在では約50種類の元素が使用されています。多様化する半導体材料の中には、毒性や可燃性、あるいは温室効果などの環境への影響等の危険有害性のあるものもあり、例えば2006年の欧州RoHS指令による鉛規制などに対し、業界は代替技術・材料の開発に多大な努力をしてきました。
化学物質の規制強化
近年、世界各国で環境法規制が強化され、その中でも化学物質に関してはますます規制が厳しくなっています。2014年に始まった米国有害物質規制法(TSCA)作業計画を皮切りに、2020年には欧州化学物質戦略(CSS)として欧州における持続可能な化学物質戦略が公表されました。欧米が中心となって規制を開始した、半導体産業に大きな影響のある難燃剤を始め、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)、ビスフェノール類、重金属類などがその対象となっています。さらに今まではそれぞれの物質単位で危険有害性が評価され、規制がかけられてきましたが、例えばPFAS類のように、炭素数の異なる類似物質をグループ化して規制をかける傾向が顕著となり、ビスフェノール類も含め、特に欧米の規制当局による効率的かつ効果的なグループ化(あるいはクラスベース)規制の取組みも始まっています。
半導体産業が注視するPFAS規制
PFASは、構造の中に2つ以上のフッ素原子を有する有機フッ素化合物の総称ですが、定義される構造は国や機関によって異なります。現在、経済協力開発機構(OECD)で提案されている定義は炭素数が1つ以上、米国環境保護庁(EPA)の規則に規定された定義では炭素数が2つ以上の化合物が対象となっています(いずれも炭素原子に結合する元素によって定義に非該当となる物質があります)。こうした定義上、PFASは空調機用冷媒として使用される低分子量のガス状物質から、航空機電線の被覆材に使用される高分子量のポリマーまで、さまざまな物理化学性状を有する多様な化学物質群であり、その数は1万を超えると言われています。PFASは耐熱性、耐薬品性、難燃性、耐候性、高摺動性、耐電圧性などの優れた性質があり、半導体製造でも広く使われている一方で、環境や生態系に悪影響を及ぼすとして規制に向けた検討が世界各国で進んでいる状況です。特に欧州でのPFAS規制案は世界に先駆けた大規模なものであり、これに対応することは企業にとって大きな挑戦となります。
化学物質規制の複雑さとサプライチェーンへの影響
前述のPFAS等、国や地域により定義が統一されていないケースに表されるように、各化学物質に関する法規制への対応が複雑化していることから、化学物質に関する情報伝達は、非常に分かりづらく困難なものになっています。このような影響はサプライチェーンの川上から川下まで広範囲に亘るため、原材料から最終製品の製造・廃棄までのすべての工程で必要な情報を共有し対応を進める必要があり、サプライチェーン全体の協力が必要不可欠となっています。今後はますますサプライチェーン情報(化学物質の種類・同一性の識別、含有量、危険有害性情報など)を含めた情報の共有化が重要です。
SEMIの取り組み
SEMIは半導体製造に関わる材料・部品・装置を扱う企業を中心とするグローバルな工業会です。世界で約3,500社、国内約400社のSEMI会員が活動にかかわっています。中でも、化学物質規制等に対応したEHS活動は、SEMIにおいて重要な取り組みの1つと認識しています。SEMIは、各種法規制ごとにグローバルにワーキンググループを構成し、法規制情報の共有と業界への過度なインパクトを軽減するためのアドボカシー活動(意見表明)を展開しています(図1)。国内外問わずSEMI会員企業であれば、これら活動に参加が可能です。

図 1 SEMIにおけるグローバルなEHS活動
また、SEMIジャパンにおいては、国際規制適合委員会(International Compliance and Regulatory Committee:ICRC)が構成され、半導体産業がより安全で環境に優しいものとなるために、EHS規制要求に関する業界ニーズを探り、情報を共有し適合に役立つツールを提供する活動を日米連携して行っています(図2)。また、毎年12月に東京ビッグサイトで開催される「SEMICON Japan」では、ICRCのコーディネーションのもと「国際EHS規制適合セミナー」を開催し、多数のエキスパートが登壇して国内外のEHS法規制動向の最新情報を提供しています。

図 2 国際規制適合委員会(ICRC)概要
SEMI University「化学物質法規制の動向」セミナー
SEMIが提供するe-learningプラットフォーム「SEMI University」では、「化学物質法規制の動向」を概説するセミナーをご用意しています。化学物質や化学物質法規制のベーシックな知識、また規制動向についての最新情報を入手する手段として、本セミナーをご活用いただき、企業のコンプライアンス戦略の強化にお役立てください。
「化学物質法規制の動向」セミナー ダイジェスト動画
お問い合わせ
上記活動についてのお問い合わせ・参加希望につきましては、SEMIジャパン スタンダード&EHS部([email protected])までお問い合わせください。