半導体製造が先端パッケージング、ハイブリッドボンディング、複雑化するプロセスなどの技術革新によって進化を続けるなか、ファブを支えるインフラの重要性はこれまで以上に高まっています。しかし、サブファブと総称されるシステムについては、多くのエンジニアや専門家にとって依然として馴染みの薄い存在です。
International SubFab Research Labs(ISRL)の創設者であるIlya Zabelinsky氏に、サブファブの重要性の高まり、業界が直面する主要な課題、また協業やサステナビリティ、標準化に向けた機会についてお聞きました。
Padmanabhan:まず、サブファブという用語に馴染みのない読者のためにお聞きします。サブファブとは何であり、なぜ半導体製造において重要なのでしょうか。
Zabelinsky氏:言葉の意味としては、サブファブはファブの下にあるものを指します。現代の多くの半導体工場では、実際にクリーンルームの下の階にサブファブが設置されています。しかし、その定義は単なる場所を示すものではありません。サブファブには、ファブの下だけでなく上部や周辺に配置された設備も含まれ、場合によってはクリーンルーム内に設置されるシステムを指すこともあります。
サブファブとは本質的に、製造を支える装置、技術、システムです。具体的には、真空ポンプ、排ガス除害装置、チラー、温度制御システム、薬液・ガス供給システム、廃棄物処理インフラなどが含まれます。こうしたシステムは通常は目に触れることがありませんが、ファブで行われる製造プロセスを支える上で欠かすことができません。
Padmanabhan:設備やオペレーションに直接関わっていなくても、半導体業界の人なら理解しておくべき重要なサブファブシステムや概念にはどのようなものがありますか。
Zabelinsky氏:私はサブファブシステムを大きく3つのカテゴリーに分類しています。
1つ目は、実質的には製造装置の一部でありながら、ファブ内に設置するには大型すぎたり、騒音が大きすぎたり、振動に敏感すぎたりする装置です。真空ポンプ、チラー、ヒーター、RF電源、電気システムなどがその代表例です。これらがなければ、多くの半導体製造装置は動きません。
2つ目は、プロセスに必要な材料を供給するシステムです。成膜、エッチング、リソグラフィー、CMPなどの製造工程に使用されるガスや薬液の供給システムがこれに当たります。材料を適切な純度、圧力、流量、温度で供給することは、歩留まり、プロセス制御、安全性の確保に不可欠です。
3つ目は、製造工程で発生したものを取り除くシステムです。排気システム、廃液・廃棄物処理、除害システム、冷却インフラなどが含まれます。私はこれらを人体の消化器系に例えることがあります。正常に機能しているときにはほとんど意識されませんが、ひとたび機能しなくなれば、他のすべてに影響が及びます。このように、サブファブシステムはいずれも半導体製造を支える重要な役割を担っています。

Padmanabhan:最近、SEMI University(グローバル版)において提供いただいた「Subfab 101」コースは満席となりました。参加者に最も響いた点は何だったと思いますか。
Zabelinsky氏:サブファブ技術への関心は、この数年で飛躍的に高まりました。私が数年前にISRLを立ち上げた頃は、このテーマに関する公開情報は非常に限られていました。しかし現在では、記事、動画、画像、技術的な議論などが増え、半導体製造におけるサブファブの重要性への認識が広がっています。
認知度が高まったといっても、多くの専門家は全体のほんの一部分しか見ていません。技術者が真空ポンプや除害装置、ファシリティネットワークなどを担当していても、それらがどのようにつながり合っているのかを十分に理解しているとは限りません。提供したコースでは、ファブレイアウト、システム間の相互作用、技術の進化、そして製造を支えるサブファブの役割を包括的に理解していただきました。多くの参加者にとって、それぞれのシステムが統合された環境の中でどのように機能しているのかを初めて理解する機会だったと思います。
Padmanabhan:ファブの高度化に伴い、サブファブではどのような課題が生じていますか。また、最も大きな改善の可能性はどこにあるとお考えですか。
Zabelinsky氏: 業界における最大の課題の一つは、材料がプロセスチャンバーを出た後に何が起こるのかを、いまだ完全には理解できていないことです。基本原理については理解が進んでいますが、半導体製造を支えるシステム内での、化学反応、粒子生成、材料の挙動、輸送現象などについては、依然として多くの未知の領域が残されています。
こうした科学的理解が十分でないため、私たちはしばしば、設備を追加したり、より多くのエネルギーを消費したり、パージガスなどのユーティリティの使用量を増やしたりすることで対応しています。根底にある物理学や化学をより深く理解できれば、効率的なソリューションを開発する機会が生まれるでしょう。それに加えて、多くのサブファブシステムはいまだに数十年前に確立された設計思想に基づいています。先端パッケージングやハイブリッドボンディング、新たな製造技術が浸透する今、これまでの常識を見直し、まったく新しいサブファブ設計に挑戦する機会がこの業界にはあります。
Padmanabhan:この分野の課題解決を目的としてISRLを設立されました。設立のきっかけと、サブファブに関する知識やイノベーション、業界連携の促進における役割について教えてください。
Zabelinsky氏:私はキャリアを通じて、新しいトランジスタアーキテクチャ、プロセス技術、材料、製造装置への大規模な投資を数多く目にしてきました。一方で、材料がプロセスチャンバーを出た後にどのような挙動を示すのか、そしてそれらをどのように処理し、再利用し、中和すべきかについては、比較的少ない取り組みしか行われていませんでした。半導体プロセスがますます複雑化する中、この課題の重要性は高まっています。
そうした認識から、International SubFab Research Labsを立ち上げました。そのビジョンは、大学、半導体メーカー、装置メーカー、材料サプライヤー、研究者が協力しながら、材料挙動の理解を深め、次世代のサブファブ技術を開発できる環境を構築することです。
最終的には、量産ファブに近い環境を再現できる研究インフラを整備し、生産ラインに影響を与えることなく新しいコンセプトを研究・実証できる場を提供したいと考えています。量産ファブでは、歩留まり、品質、生産性が常に最優先であるためです。
Padmanabhan:サステナビリティは半導体製造における重要課題となっています。サブファブの改善は、環境負荷低減と製造拡大の両立にどのように貢献できるでしょうか。
Zabelinsky氏:サステナビリティ、オペレーショナルエクセレンス、そして製造経済性は、ますます密接に結び付いています。先端半導体では、成膜、エッチング、真空プロセス、排ガス処理の利用が増えるため、それを支えるインフラも複雑化し、資源消費も増大します。新しいプロセスノードが登場するたびに、エネルギー、ガス、加熱、冷却、環境制御に対する要求はさらに高まります。
その一例が窒素です。現代のファブでは、特にサブファブシステムにおいて、パージや希釈のために膨大な量の窒素を使用します。しかし、その窒素を製造するためにはエネルギー集約型の空気分離プロセスが必要であり、結果として間接的にファブの環境負荷増大につながっています。加熱についても課題があります。多くのプロセス副生成物は、排気・搬送系全体を高温に維持することによって、不要な堆積を防ぐ必要があります。こうした加熱は直接的なエネルギー消費が増えるだけでなく、その熱を除去するための冷却負荷も増大させます。サブファブ技術の改善によって、エネルギー使用量を削減し、排出量を低減し、資源利用効率を向上できる可能性があり、業界全体の持続可能な成長を支えることができます。
Padmanabhan:もし業界全体でサブファブ関連標準化プロジェクトに取り組むとしたら、それは何でしょうか。またSEMIはどのような役割を果たせるでしょうか。
Zabelinsky氏:特に重要だと考えているのは、ヘリウムリーク検査です。現状では、装置メーカー、建設会社、ファブ運営者、立ち上げ支援組織、半導体メーカーなどによって、それぞれ異なる要求事項や仕様が存在しています。この不統一が不要な煩雑さを生み、コスト増加、導入期間の長期化、結果のばらつきにつながっています。
業界共通のアプローチを確立できれば、関係者全員が同じ技術言語で議論できるようになります。標準化は一貫性の向上、非効率の削減、サプライチェーン全体における期待値の明確化につながります。これは業界協力によって比較的早期に成果を得られる現実的なテーマであり、SEMIは関係者を結集させる上で最適な立場にあります。
今後に向けて
サブファブは表舞台に現れることは少ないものの、その影響は半導体製造の未来を左右する重要な要素です。真空技術、排ガス処理、薬液・ガス供給、廃棄物処理、熱除去、安全性、そしてサステナビリティに至るまで、サブファブはファブの性能と生産能力向上に直結しています。
Ilya Zabelinsky氏は、今後の発展には重点的な研究、独立した研究インフラの整備、そしてファブ、装置メーカー、材料サプライヤー、大学、標準化団体の間でのより強固な協力が必要だと考えています。その具体的な第一歩として、ヘリウムリーク検査仕様の標準化が挙げられます。標準化においては、SEMIが中心となってステークホルダーを結集し、業界全体が共通の技術言語を持つための役割を果たせるでしょう。
Mayura PadmanabhanはSEMIのテクニカルプログラムマネージャーです。