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2025-04-18
2025-04-18

高エネルギー効率コンピューティングのためのサステナブルなAIシステム

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かつてない大量のデータを得た人工知能(AI)がもたらす新たな可能性に、世界が沸き立っています。AIは半導体のパワーで稼働し、それが半導体チップの需要拡大に繋がっています。マッキンゼー・アンド・カンパニーは、半導体市場が2030年に1兆ドルに到達すると予測していますが、その大きな要因とされているのが、AIとデータ向けの需要です。しかし、この好循環を持続させるためには、克服すべき大きな課題があります。SEMI Smart Data-AI Initiativeは、SEMI Future of Computing Think Tankと協力し、業界がこれらの課題に対処できるよう支援しています。本記事に、その全体像をまとめます。
 

「AIの潜在能力を最大限に引き出すには、AIのモデルやソフトウェアからデータセンターのアーキテクチャ、チップ設計、チップの製造方法に至るまで、テクノロジーの全領域にわたるイノベーションが必要です。基礎となる半導体技術の進歩は、AIデータセンターのシステムレベルでのエネルギーとコストの削減に劇的な効果をもたらすでしょう。」

Applied Materials 社長兼CEO、Gary Dickerson氏

 

AIシステムインフラへの投資は目まぐるしいペースで増加しており、世界中の企業や官民パートナーシップから数千億ドルが投じられています。データセットの規模が大きいほど、AIモデルがもたらす結果がよくなるのが通常であり、モデルサイズは毎年指数関数的に増加し、最先端のモデルでは数十億から数兆のパラメータが必要とされます。この傾向は、生成AIに使用される大規模言語モデル(LLM)の急速な成長において特に顕著です。

基礎となる半導体技術は、この大規模化ペースについていけるのでしょうか? 半導体チップが名高いムーアの法則に従っているとしても、性能は2年ごとに倍増するにすぎません。実際には、半導体の最先端技術が材料の物理的限界に到達しつつあるため、性能向上のペースは減速しています。チップ上の最小パターン寸法は、原子間距離に近づいているのです。半導体設計者やプロセス技術者は新しいテクノロジー、デバイス、3次元積層などを駆使してイノベーションを進めていますが、AIモデルやデータセットの成長スピードに、いかにしてシリコンチップやハードウェアシステムが追随できるかが、依然として大きな課題となっています。

 

大規模化するデータセットやAIモデルを処理するには、より多くのエネルギーが必要となります。米国エネルギー省の最近の報告書によると、データセンターのエネルギー消費量は過去10年間で3倍に増加しており、今後5年間でさらに3倍増加する可能性があるとのことです。他の分析結果では、2万台のGPUが稼働するデータセンター1つで、約4メガワットの電力を消費することが考えられ、これは米国の31,000世帯の電力消費量に相当します。したがって、データセンターのエネルギー需要を公共電力で賄うのは難しくなっており、複数のハイパースケーラーが原子力発電に投資をしています。

AIのエネルギー需要の加速は、シリコン技術の進化が「デナード則」に従わなくなったことでさらに悪化しています。デナード則とは、半導体技術の微細化が進行しトランジスタ数が増えても電力密度は一定であるというものです。実際には、シリコンデバイスのエネルギー消費量は、過去10年間、微細化するにつれて増加しています。これらの要因が組み合わさることで、AIシステムのエネルギー消費量がサステナブルなレベルを超えて増加するという、2つ目の深刻な課題が生じています。

 

この2つの課題に対処するには、アルゴリズムやアーキテクチャから、基礎となるシリコン技術に至るまでのイノベーションが必要です。AIシステム全領域にわたる事例をいくつか次にあげます。

ソフトウェアおよびアルゴリズムレベル:技術者たちは、モデルサイズを縮小し、ハードウェアをより効率的に使用する方法を見出そうとしています。例えば、IBMのGraniteモデルは、パラメータが10億未満という小さなサイズとなっています。同様に、GoogleのGemmaプラットフォームでは、小型言語モデル(SLM)を提供しています。DeepSeek推論モデルの発表が起こした市場の混乱は、比較的小規模なドメイン特化型推論モデルが大幅な効率化をもたらす可能性を示唆しています。

アーキテクチャレベル:この領域では複数の方向が模索されています。ひとつ目は、特定のタスクに対して、消費電力を増やさずに、あるいはより低減しながら性能を向上する、専用(またはドメイン特化型)プロセッサです。例としては、最適化された AI アクセラレータを備えたCerebras のウェーハスケール設計や、Mueon のシステムスケール・インテグレーションなどがあります。

もうひとつの方向性は、コンピューティングの位置をデータがあるメモリに近づけることです。これは、業界の誕生以来の柱となっているフォン・ノイマン型アーキテクチャが持つ、プロセッサとメモリ間の大きなボトルネックへの対応となります。Micronのメモリにフォーカスしたアーキテクチャや、SK のプロセッサ・イン・メモリ(PIM)などのイン・メモリ・コンピューティングあるいはニア・メモリ・コンピューティングは、特定の作業負荷に対して、高いパフォーマンスを低消費電力で実現します。一方で、AMDIntelNVIDIAなどの大手CPUおよびGPUメーカーも、電力効率の高いソリューションの革新を進めています。さらに、「エッジ・インテリジェンス」イノベーションがあります。例えば、ArmQualcommによるIoTソリューションは、エッジデバイスでより多くの処理をすることで、データセンターでの処理および電力の負荷を軽減します。

重要な実現技術:例えば、ASEのヘテロジニアス・インテグレーション・ソリューションなどのアドバンスト・パッケージング技術は、複数の異種コンポーネントをうまく統合することで、効率的で高性能なコンピューティングを実現します。もうひとつの新しい動きが、「チップレット」の登場です。これは、チップをより小さなパーツに分割して構成する技術で、一般的なプロセッサ、メモリ、インターコネクトのパーツを組み合わせることで、専用アクセラレータ・ビルディング・ブロックを組み立てることが可能になります。チップレットのエコシステムが十分に発展すれば、シリコン設計者が最適化されたシステムを設計する上で、高い自由度が享受できるでしょう。

エレクトロニクス分野以外に目を向けると、フォトニクスの統合により、低消費電力で高帯域幅の接続が可能になります。例えば、LightMatterのシリコンフォトニクス・インターコネクトCienaのデータセンター・インターコネクトなどです。

材料とデバイス:これらが、テクノロジーを積み上げる基盤を形成します。 技術イノベーションの例のひとつに、スタンフォード大学が主導したN3XTがあります。これは、ReRAM(抵抗変化メモリ)やSTT-RAM(スピン注入メモリ)、カーボンナノチューブ、2D材料など、複数の新しいデバイスや材料を統合する3Dソリューションです。 同様に、カリフォルニア大学が主導する取り組みでは、低次元ナノ構造、センサー、検出器、フォトニクスを統合ソリューションとして合成しています。

先進的でイノベーティブなプロセスと装置:最後に、例えばApplied MaterialsやLam Researchなどが、これらの新しい材料やデバイスを製造するためのプロセスや装置の開発を進めています。

こうした一つ一つのイノベーションはどれも驚くべきものであり、必要不可欠なものです。しかし、それだけで十分でしょうか?もしシステム全体で協力し、ハードウェアとソフトウェアのイノベーションを相乗的に共同最適化することができたらどうでしょうか?統合された全体は、個々の総和よりも大きなものにならないでしょうか?どのような効率性を引き出すことができるでしょうか?そして、どのようなビジネスチャンスが生まれるでしょうか?

SEMI Smart Data-AI Initiativeは、AIのコンピューティングのエネルギー効率を抜本的に改善することを究極の目的として、サイロを打破し、システムレベルのソリューションを模索する、競争前のコラボレーションの構築を開始します。最終目標は、AI コンピューティングのエネルギー効率を大幅に向上させることです。

Pushkar ApteはSEMIの戦略技術アドバイザーであり、スマートデータ-AIイニシアチブを主導しています。

Jim SextonはIBMのフェローです。
Melissa Grupen-ShemanskyはSEMIのCTO兼技術コミュニティ担当副社長です。