地政学的力学が世界の産業に影響を与える中、半導体産業は極めて重要な岐路に立たされています。ポーランドのソポトで開催されたSEMI Industry Strategy Symposium(ISS Europe)では、半導体地政学をテーマにしたエグゼクティブパネルディスカッションが行われ、分断化する世界にあって、戦略的な依存関係と進化する同盟関係が形作る欧州の役割を議論しました。
SEMI EuropeのアドボカシーマネージャーであるStefano Ramundo Orlandoが司会を務めたこのパネルディスカッションには、業界のエグゼクティブ、戦略アドバイザー、政策専門家が参加し、欧州半導体の未来に向けた課題と機会について将来を見据えた意見が交わされました。
ディスカッションは、急速に変化する地政学的状況と、そのグローバル半導体サプライチェーンに与える影響を認識するところから始まりました。輸出管理、投資審査メカニズム、経済安全保障戦略は、もはや抽象的なポリシーの問題ではありません。世界中の投資決定、製造戦略、さらには人材計画までを再構築しています。こうした劇的な変化は確かに課題をもたらしていますが、パネリストたちは、重要な転換点でもあると強調しました。欧州にとって、今は後退する時ではなく、目的を持って適応することが求められているのです。
ギャップを埋める:欧州の戦略的優位性
Giulietta Poltronierl氏(McKinsey & Company パートナー)は、グローバル・バリューチェーンにおける欧州の戦略的ポジションを明確にしました。欧州は、IP、リソグラフィー、R&Dで世界的なリーダーシップを誇っていますが、ファウンドリ生産能力とバックエンド製造では依然として大きなギャップがあります。解決策は、これらのギャップを埋めるだけでなく、欧州が備えている強みを確保すること、つまりレジリエンスと競争力のバランスを取ることにあります。

Gillietta Poltronieri氏(McKinsey & Company Global Semiconductor Practiceパートナー)
Malcom Penn氏(Future Horizons 創業者兼CEO)もこの意見に賛同し、半導体での成功には長期的なビジョンとグローバルな考え方が必要であることを強調しました。ペン氏は、欧州は域外市場に目を向けなければならないとし、国内市場が小さくてもグローバルリーダーシップを制限することはないことの査証として台湾のTSMCを挙げ、「欧州に最終市場がないという言い訳は、まさに言い訳に過ぎない」と述べました。ペン氏は、欧州は大きく考え大胆に行動する勇気を持たなければならないと主張しました。

Malcolm Penn氏(Future Horizons創業者兼CEO)
不確実性の中での経営戦略
Hendrik Bourgeois氏(Intel 欧州政府業務担当バイスプレジデント)は、地政学的リスクが企業戦略に組み込まれた要因について見識を提供しました。Intelの米国と欧州の両方において製造を拡大するという決定には、特定地域への過度の依存を認識したことが直接影響しています。
Bourgeois氏は、企業は制限的な政策にも適応できるが、依然として不確実性が長期的な意思決定にとって最大の課題となっていることを強調しました。政府との一貫性があり信頼のある関係性が重要であり、企業はインフラや人材に投資するのと同じように、政治的資本の構築に投資する必要があります。

Hendrik Bourgeois 氏 (Intel、欧州政府業務担当バイス プレジデント)
中国:パートナー、競争相手、地政学的難題
Boris Metodiev氏(TechInsightsディレクター)は、中国が重要な市場であると同時に戦略上の競争相手でもあると認識した上で、同国の役割についてバランスの取れた見方を示しました。世界の半導体需要の40%近くを占め、国からの大きな支援を受けている中国には、抗しがたいビジネス機会と現実的なシステミック・リスクの両方が存在します。
重大な懸念事項には、技術移転、多額の補助金の影響、市場集中の進展があります。Metodiev氏は、これらの問題に対処するには、サプライチェーンの多様化、知的財産の保護、貿易法令遵守の強化に重点を置いたバランスの取れたアプローチが必要であり、同時に協力のためのオープンチャネルを維持し、完全なデカップリングを回避すべきだとの提言をしました。

Boris Metodiev氏(TechInsights 製造業分析担当ディレクタ)
人材:沈黙のボトルネック
パネリストは、欧州半導体の未来に対する最も議論されていない脅威として、人材不足を挙げました。ヨーロッパには、現在および将来の人材需要を満たすための理数系卒業生が不足しています。
Intelのような企業は、大学や教育機関とのパートナーシップに多額の投資を行っています。しかし、特にEU国民以外の欧州内移動に関するものなど、大きな規制障害が依然としてあります。なすべきことは明白です。欧州は、移民および教育政策を、従来の政策枠組みだけでなく、経済戦略のレンズを通じて再考し、政策と産業の目標との整合を図り、将来の人材需要に合わせた取り組みを拡大しなければなりません。
中東欧:欧州戦略の新たな柱
パネルディスカッションでは中東欧をとりあげ、この地域がいかに欧州半導体戦略にとって重要性を増しているかが検討されました。Mikołaj Trunin氏(Invest in Pomerania 副所長)は、地政学的な逆風にもかかわらず、中東欧地域は今も海外直接投資(FDI)を引き付けていると述べました。ポーランドは、信頼できる投資先および新進の半導体ハブとして注目されており、北西部のポメラニアは先進パッケージングの重要拠点に位置付けられています。
ポーランドのような国が、EU理事会の今後のリーダーシップなど、政治的にも産業的にも注目を集める中、中東欧は、欧州産業の中核市場とフロンティア市場との間の戦略的な架け橋として位置付けられています。この勢いは、この地域をより広範な半導体エコシステムに完全に組み込むことが重要であることを明確に示しています。

Mikołaj Trunin氏(Invest in Pomerania 副所長)
協調的行動の要請
パネルディスカッションは、地政学的な混乱は一時的な逸脱ではなく、今後の産業時代を形作る特徴であるという明確な結論で締めくくられました。半導体産業は、技術、安全保障、主権が交差する位置にあり、欧州はこれに対して断固とした行動をとらなければなりません。企業は進化を続け、政治的に関与し、俊敏性を維持する必要があります。長期的な競争力とレジリエンスを確立するためには、政策立案者と業界のリーダーが手を取り合って、統合された欧州の半導体エコシステムを形成する必要があります。リスクは大きいですが、その可能性もまた大きいのです。
この記事の著者Iranda Chakiは、SEMI Europeのシニア・ポリシー・コーディネータです。
夏の北海道で、半導体産業の明日を議論する。ISS Hokkaido 2025
日本はこの変革の中心にあり、特に北海道はインフラや気候、政策的支援など、半導体製造に理想的な場所として注目を集めており、次世代半導体エコシステムの形成が進んでいます。この夏、半導体産業を牽引するトップエグゼクティブのための、待望のカンファレンスイベント「ISS HOKKAIDO 2025」が開催されます。サステナビリティ、微細化技術の行方、新技術の見極め、AIによる効率化、地政学的緊張、DXやAI実装による市場の変化など、エグゼクティブリーダーが考えるべき、重要課題について世界のビジョナリーやエキスパートの分析を共有し、直接、意見交換できる場を提供します。豊かな自然に囲まれたプライベートな空間での議論は、会議室の中では決して生まれることのない斬新で卓越した成果が得られることは間違いありません。
ISS Hokkaido 2025開催概要
日時:2025年7月10日(木) - 12(土)(2泊3日)
場所:〒049-5722 北海道虻田郡洞爺湖町清水336
ザ・ウィンザーホテル洞爺リゾート&スパ
主催:SEMI
規模:150名