デジタルサイネージ世界市場 -最新動向と市場規模、液晶市場の第四ウェーブか-

デジタルサイネージ世界市場
-最新動向と市場規模、液晶市場の第四ウェーブか-

アイサプライ・ジャパン株式会社 ディレクター 増田淳三

(SEMI News 2009年7-9月号より転載)

はじめに

大型液晶パネル(>10インチ)は、ノートPCを第一ウェーブとして成長し、第二ウェーブとしてモニタ市場でCRT市場を代替して成長、今第三の波としてテレビ市場で成長をしている。テレビ市場はいずれCRT市場を席巻すれば、現在の高成長率(年率20%)は通常のテレビの成長率(年率4~5%)に落ち着く。更なる成長を求めて、第四の波として期待されているのが、デジタルサイネージ市場である(図1)。世界市場の詳細を、用途別、デバイス別に分析し、今後の成長を探る。

大型液晶パネルの成長

1. デジタルサイネージ市場

市場の定義は、テレビ以外の用途でサイネージ市場および業務用市場全般で、ディスプレイのサイズは30インチ以上としている。用途は、通常よく見る駅の情報モニタからスタジアムなど、多用途にわたる(写真1)。一方、ディスプレイデバイスは、LEDビデオ、LEDテキスト、フロントプロジェクタ、リアプロジェクタ、プラズマパネル、液晶パネルがあり、用途に応じて適材適所で強みを発揮している。用途区分は、室内用、ホテルテレビ、販売用、フィナンシャル、教育、会議室、交通、屋外用、制御室、レンタル/ステージ用など、多用途にわたる。

写真1. サイネージ用途

したがって、分野ごとに要求事項や要求性能が異なり、デジタルサイネージ市場は多くのデバイステクノロジが共存している。また、利用者側からすれば便利と思う用途から、設置者側からすれば投資効率はどうか、ビジネスから回収する方策は何か、そこに発達するデジタル技術やコンテンツが絡む市場である。

2. 市場予測

昨今の経済不況の影響は、デジタルサイネージ市場にも影響を及ぼしているが、図2に直近で見たすべてのデバイスを総合した世界市場予測を示す。2008年670万台が、2013年には2,250万台に成長すると予測している。平均年成長率は実に30%である。分野別に見ると、ホテルテレビ、室内用途、販売用途など、身近な分野で成長する。

図2. サイネージ分野別世界市場予測デバイス別で見ると、図3に示すように液晶パネルの成長が圧倒的である。これは、上記成長分野のホテルテレビ、室内用途、販売用途に液晶パネルが利用されるからである。プラズマパネルは、50インチ以上のニッチ市場をカバーする。フロントプロジェクタは、大型画面においてコストパフォーマンスに優れ、教育市場や室内大型用途で成長する。LEDビデオは、室内・屋外の外光が明るい所での主役である。それぞれのデバイスがその特長を発揮して、用途に応じて使い分けされる。

図3. サイネージデバイス別世界市場予測

3. 分野別市場の課題

液晶パネルが第四の市場として期待するためには、それなりに規模の大きい市場に参入する必要がある。

3-1. ホテルテレビ

ホテルテレビは通常のテレビの市場ではないのかと言う向きもあるが、ホテル側の思惑は違う。従来ホテルのテレビというと、日本ではせいぜい20インチが置いてあり、見る番組もテレビ放送かケーブルチャンネルである。しかし、今世界の大手ホテルチェーンは、リピート客の取込みを課題とし、世界のどの部屋でも同質の客室サービスを提供するため、室内のテレビを豪華にして積極的に活用し、室内滞在の価値を高めようとしている。大型FPDテレビの設置、提供するデジタルコンテンツ、インタラクティブなネットワークの接続など客室内サービスの充実を図っている。また、米国では、FCC(Federal Communications Commission)がホテル客室内でのHDテレビサービスを義務付けている。

では、どれほどの客室規模があるのか?ホテル客室数は、北米520万室、欧州470万室、世界全体では1,300万室があり、2012年には1,850万室に増加すると予測されている。中でも高級大手ホテルチェーンMarriott、Hilton、Int.Conti.などは、それぞれ10万室ある。昨今の不況で少なからず影響はあるものの、客室のサービス充実は、FPDテレビの価格下落で大型テレビの室内設置が増加すると期待されるのである。しかし、そのテレビは、家庭用に設計された機能充実のテレビではなく、ホテルテレビ専用のシンプル、耐久性などの機能が要求される。

3-2. 販売用サイネージ市場

販売用のデジタルサイネージが注目される理由は、たとえば、店内に入った顧客の80%が店内でどのブランドを購入するか決めると言われており、ブランド側としては、効果的にどこで何を売っているかを各店共通に表示し、購買を促したい思惑がある。従来の固定化した広告方式からデジタル化になり可能になった新しい分野である。また、販売店側では、次から次へと出てくる新商品に販売員の商品説明が追い付かず、デジタルディスプレイを通して商品説明すれば、販売効率が向上、さらには展開するチェーン各店で同質の効果を生む利点があり、積極的な導入と進展が進んでいる。

ディスプレイは、大きさ、明るさ、色、ポートレート型など、テレビ筺体の延長線上でなく、顧客を引き付ける魅力的なものでなければならない。販売先進国である米国では、Out-of-Homeテレビというネットワークが急速に拡大、全国ネットで各ストアやモール内で商品宣伝と商品販売を一体化した新しいシステムが進展しており、Mall Networks、CBS Outernet、PRN、Simon Media、Targetなど、メディアネットワークがすでに存在する。

4. デジタルサイネージ市場参入の課題

システム構築の系図は、図4に見るように、多くの異なる業種が連携して全体システムを構築する。ディスプレイが成長するためには、システム構築の中に深く関わらなければならないということである。その中で、ディスプレイが金額的に占める割合は32%である。もちろん、分野ごとに状況は異なるが、液晶パネルが狙う成長分野の市場は、システムメーカーが主導権を握っているようである。また、このようなシステムを進めるソフトウェアメーカーは、Cisco、3MDigital Signage、Symon、EnQuil、Planarなど、多くの会社が参入している。一方、ハードウェアメーカーには、NEC、Sony、Sharp、Panasonic、Philips、Samsung、Hitachi、Mitsubishi、Dell(順不同)など、お馴染みのメーカーが並ぶ。

図4. デジタルサイネージのシステム構成

サイネージや業務用ディスプレイは、室内用途を設計主眼とする民生用テレビに比較して、長時間使用や過酷な使用条件下での耐久性、省電力化などが求められる。ハードウェアメーカーは、そのような商品を提供しながら、ソフトウェアメーカーと連携して、成長するデジタルサイネージ市場に参入できるということである。

第四の波は来る。しかし、それはテレビ事業の延長線上ではなく、多様な対応を求められる市場である。ただ、システム構築のソフトウェアメーカーに、日本企業の顔が見えないことが気にかかる。

初出: SEMI News 2009年7-9月号