SEMI通信 2017年9月号 Report 4

EU REACHにおける新成形品定義とPFOA規制の業界への影響

東京エレクトロン(株) EHS推進室 プロダクトコンプライアンスG 鶴 元浩 (国際EHS規制適合委員会日本地区委員長)

EU REACH規則は、2007年に施行され、毎年見直される中で、規制の対象となる化学物質(SVHC)も年々増えており、規制の強化が進められています。

 

新しい成形品の定義(解釈)

EU REACH規則では、成形品中に含有される化学物質も規制していますが、規制の対象となるかどうかは、対象の化学物質に設定されている閾値により判断することになります。

この閾値判断を行う際、何を分母とするかにおいて、元々、各社が販売(もしくは、EUへ上市)する単位を分母とされていましたが、2015年9月にEU司法裁判所の最終判決が下され、成形品の解釈が見直されることになり、EU域外から持ち込まれる製品においては、各製品を構成する個々の部品(部位)を分母として、閾値判定をすることになりました。(これはEU REACH規則が2007年に制定される以前から異論があり、裁判が続いていました。)

これに伴い、ECHA(欧州化学品庁)は、成形品中に含有する化学物質に対する要求事項をまとめたガイダンス文書の見直しを進め、2017年6月に最新版(Version 4.0)がリリースされました。(各業界団体への影響も考慮し、ECHAは直接ヒアリングを実施した上で、様々な具体例を基に説明しています。)

このように規則の条文自体は変更されないものの、規制判定の運用上必要な解釈等が明示されたガイダンス文書が出されたことにより、成形品をEUへ販売(もしくは上市)している企業の規制遵守活動へ大きな影響を及ぼすことになりました。

Bill of Materials Chart

SEMIでは、半導体製造装置やそのコンポーネント製造における規制対応の参考となるガイダンス文書の作成に向けて準備を進めています。

 

PFOA規制

2017年6月にEU REACH規則の制限対象物質リスト(Annex XVII)が修正され、パーフルオロオクタン酸(PFOA)とその塩および関連物質が正式に規制の対象となりました。

これにより、2020年7月4日から、PFOAとその塩およびPFOA関連物質を含有する成形品をEUへ販売(もしくは上市)するためには、Annex XVIIに規定される使用制限を厳守することが必須となります。(半導体製造装置においては、プラス2年の猶予があり、2022年7月4日から規制が開始されます。)

 

規制内容は以下の通り(表1)

化学物質名

範囲・用途

Annex XVIIに規定される

使用制限

PFOA(CAS No. 335-67-1)とその塩およびPFOA関連物質

(Perfluorooctanoic acid, its salt and PFOA-related substances)

  • 化学物質としての製造または、上市

禁止

  • 他の化学物質の構成要素としての使用または上市
  • 混合物に使用、またはそれを上市
  • 成形品中もしくは成形品の一部の中に使用、またはそれを上市

PFOAとその塩:

濃度25ppb未満

 

PFOA関連物質:

濃度1000ppb未満

 

このPFOAとその塩およびPFOA関連物質は、優れた界面活性を有するため、フライパンのフッ素コーティングから、繊維製品の撥水、防汚機能等、様々な用途に使用されており、工業用製品にも多く使用されています。しかしながら、一方で極めて自然環境において分解しにくく生殖蓄積性も高い物質であることから、環境汚染や健康被害の要因として懸念されており、世界的に規制の動きが高まっています。(ストックホルム条約でも規制する方向で検討が進められており、これが決まると世界規模で規制がかかることになります。)

 

PFOAは、2006年に世界の主要フッ素化学メーカー7社(計8社)による、「PFOA自主削減プログラム(2010/2015スチュワードシップ・プログラム)」が米国主導で進められ、2015年までにPFOAおよび関連物質の全廃化を実施しています。

そういうことから、上記プログラムに参加したメーカーは、ほぼPFOAの全廃化は完了していますが、これに参加していないフッ素化学メーカー(特にアジア)においては、現状も、まだ使用されている状況です。表1にある通り、規制の閾値は25ppbで極微量となっているため、成形品中に含有しているかどうかを判定するのも容易ではなく、各社におけるサプライチェーンの最上流から情報を入手する必要があります。また、川上からの情報が川下まで確実に伝達されないと意味がなく、サプライチェーン全体での協力が必須となります。

 

SEMIでは、半導体製造装置やコンポーネントのサプライチェーン全体におけるPFOAの全廃化に向けて、ホームページ上で情報を提供しています。
http://www.semi.org/en/pfoa-info

上記URL内にPFOAに関する詳しい説明資料(英語)「Primer Document」のリンクがありますが、日本語版も完成次第、共有予定です。

SEMI Japanでは、このような化学物質規制を含めた、最新の環境法規制情報を発信するとともに、毎年、国際EHS規制適合セミナーを開催し、会員企業とそのサプライチェーンの皆様の環境法規制対応に協力できるよう努めていきます。

 

● 関連セミナー情報

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● この記事に関する問い合わせ:

SEMIジャパン スタンダード& EHS 部
コリンズ純子
03-3222-5819(直通)
jcollins@semi.org