SEMI通信 2017年11月号 Report 1

MEMSはコモディティビジネス? 新技術が実現する意外なアプリケーション

SEMI ポーラ・ドー

         

新たなセンサ技術と、スマート化によって知能を組み込むことで、MEMSビジネスは予期せぬ機会の創出を続けています。(※本稿は11月1日~2日にサンノゼで開催されたSEMI|MSIG MEMS & Sensors Executive Congressの予告篇として発表された記事を一部省略して翻訳したものです。)

 

コンテキスト・アウェアネスのために必要となるセンサとは

デジタルアシスタントが本当に便利なものになるためには、感情を理解するためのある種の特別なセンサが必要になるだろうと、Intel予想コンピュータ研究所のラーマ・ナッハマン所長は語ります。「当社では、人のニーズをより深く理解することで、人をアシストする方法を変えてしまおうと考えています。今のところ、デジタルアシスタントが先回りしようとしても、あまり上手くいっていません。コンテキストを充分に理解できていないことがその原因です」

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ひとつの問題は、別のアプリケーションのために設計された既存のセンサでは、デジタルアシスタントが求めるものを実は測れていないということです。人の覚醒度や注意度と関連する瞳孔拡張の検出での問題にナッハマン氏は言及しました。一般的なカメラやイメージセンサは、いい写真を撮るように設計されています。つまり、電話機の中でバックグラウンドノイズを除去するために何が行われているのかを知りたいのです。「センサにアプリケーションプログラミングインタフェース(API)があればとても助かります。それがあれば、開発者は特定の目的に対して設定できます。イノベーションのサイクルは大変なスピードで進行し、機械学習も登場しました。センサはこれに追随する十分なスピードで変化をしていないのです」

コンテキスト・アウェアネスに真の変革をもたらすものは、感情を認識する能力だとナッハマン氏は言います。例えば、心拍数の変動を非常に正確に測定する、人が問題なく装着できるサイズのセンサです。「感情の認識は、むしろシステムにとって学習したいことになります。デジタルアシスタントにとって情緒反応は素晴らしいフィードバックなのです。学習することで有能になり、それに相手から窓の外へ放り出されることもなくなりますから」

 

一般的なMEMSセンサには成長機会がたくさん残っている

MEMSセンサの開発はスローダウンするだろうと考える方もいるかもしれませんが、まだまだイノベーションの機会が豊富にあります。「もうこれ以上高性能な圧力センサなど必要ないだろうと思われるかもしれません。これまでに開発されたもので十分以上だと」とInfineonのセンサ部門長であるローランド・ヘルム氏は述べます。「しかし、これまで以上に高性能な圧力センサあるいはマイクロフォン、レーダー等の3Dセンサ、高度なアルゴリズムや機械学習の3つを組み合わせると、予想もしなかった新しいアプリケーションの領域が広がるのです。これまで考えたこともないことが、可能になるのです」

静電容量型圧力センサおよびマイクロフォンの超高感度化によって、新たな用途が可能になります。他のセンサや高度なソフトウェアと組み合わせることで、飛行中のドローンの高度を安定させたり、ドアや携帯電話機の蓋の開閉を感知したり、エネルギー制御のために室内の人数を検出したりすることができます。新世代のマイクロフォンシステムは、音声がどこで発声されたのかを音声制御機器が捉え、また誰が話しているのかを区別することを可能にします。

 

グラフェンバイオセンサの量産成功で創薬アプリケーションが可能に

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Nanomedical DiagnosticsとMEMSファウンドリのRogue Valley Microdevicesは、独自の創薬プラットフォームに向けたグラフェンバイオセンサ製品を6インチシリコンウェーハで生産しています。グラフェンの高い導電性、大きな表面積、優れた生体適合性によって、現在利用可能な諸技術よりも優れた検出範囲、複雑な検体に対する適合性が得られています。米国疾病予防管理センター(CDC)、スタンフォード大学、ジョンズホプキンス大学、メルク等の組織が、研究に使用しています。Nanomedical Diagnosticsでは、来年、高スループットバージョンを発売する計画です。

同社ではCVDで成膜したグラフェンをシリコン上に効率よく移動するシステムを開発し、グラフェンの単原子層膜をパターニングするためのフォトリソグラフィおよびエッチングプロセスをMEMSファウンドリに委託しています。「当社では一般的ではない材料の仕事を引き受けてくれるMEMSファウンドリを必要としていました」と、Nanomedical Diagnosticsの製造担当VPであるミッチェル・ラーナー氏は言います。「今までに200万個のトランジスタを製造し、歩留りを改善するために必要な生産量に到達することができました」
このグラフェン加工技術は、他のアプリケーションにも転用できる可能性があります。例えば、光検出、磁気センサ、ICの温度コントロールなどです。

 

バイオメディカルセンサが狙う量産市場

Yole Développementのアナリストであるセバスチャン・クレール氏は、バイオメディカルMEMSおよびマイクロ流体デバイス市場は現在は33億ドル規模だが、今後数年間に大きな成長を示すだろうと述べます。Yoleの2016年版市場レポートによると、BioMEMS市場は4年間にわたって年間16%前後の高い成長率を維持してきました。しかし、特殊なニッチデバイスから大量生産製品へと移行することで、何倍もの市場拡大が到来するとクレール氏は予測しています。コンシューマ向けヘルス・フィットネスセンサの著しい高品質化、高機能化は、それらが性能面で医療グレードに接近していることを意味し、心臓疾患などの慢性病状のモニタリングに向けた本物の量産市場が開けようとしているのです。

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マイクロ流体力学を応用したポイント・オブ・ケア・デバイスもまた、中期的将来に年間10億個まで飛躍的な増加をする可能性があります。簡単な血液検査で癌細胞を短時間に調べられるまで、分子診断技術が成熟したためです。「特に、将来多数の患者を毎年スクリーニングして、癌の早期発見を為す可能性がある巨大な潜在市場に、多数の企業が注目しています」とクレール氏は言います。「マイクロ流体技術の課題は、チップに化学的手法を統合し製造することです。特に試料の調製ステップは今日でも大きな課題として残っています」 各種の試験にはそれぞれの反応プロセスフローがあるように、それぞれの試料調製方法があります。検出化学の開発とカートリッジの設計に着手する大学やスタートアップ企業の多くは、量産されるシステムの設計経験がありません。しかし、これに早期から着手しないと、費用と時間がかさむ設計のやり直しは避けられません。

 

(初出 SEMI Global Update 2017年10月10日号)

 

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