SEMI通信 2017年10月号 SEMIスタンダード情報

酢酸蒸気曝露による太陽電池セル耐久性試験方法に関するSEMIスタンダードが発行されました

 

SEMIスタンダード 日本地区PV Materials技術委員会
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター モジュール信頼性チーム

招聘研究員  棚橋 紀悟

 

SEMI PV79-0817「酢酸蒸気曝露による太陽電池セル耐久性試験方法」により、これまで数千時間を必要としていた屋内試験が約1/50~1/100の期間で完了できるようになり、すべての太陽電池メーカーや関連する部材メーカーにおいて共通した試験条件のもと低コストで(従来と変わらない)耐久性試験が可能となりました。

 

1. SEMI PV79-0817の出版と意義

SEMI通信(2016年6月号)でご紹介いたしました「酢酸蒸気曝露による太陽電池セル耐久性試験方法 [Test Method for Exposure Durability of Photovoltaic (PV) Cells to Acetic Acid Vapor]」は、SEMIスタンダード日本地区PV Materials 技術委員会傘下のPV Materials タスクフォースの活動として、2016年4月に開始され、本年8月、SEMI PV79-0817として発行されました。

本耐久性試験方法の策定背景などを前記事に概説しておりますが、20年を超える期間にわたり屋外環境に曝される太陽電池パネル内で(加水分解などにより産生される)酢酸が太陽電池セルへ与える影響を、数十時間程度の短期間試験により判定しようとする試験方法です。この試験方法の適用により、これまで数千時間を必要としていた屋内試験が約1/50~1/100の期間で完了できるようになり、すべての太陽電池メーカーや関連する部材メーカーにおいて共通した試験条件のもと低コストで(従来と変わらない)耐久性試験が遂行できるものと考えております。

 

2. 試験手順

試験手順は比較的簡単で、密閉容器内の底部に酢酸水溶液(3%)を張り、その上部空間に太陽電池セルを懸架することで、太陽電池パネル内に封止された太陽電池セルの環境を模擬しています。恒温槽内(例えば85℃)に密閉容器を設置することで、温度に依存した劣化加速も可能となります(図1)。

酢酸蒸気曝露試験中の太陽電池セル

図1  酢酸蒸気曝露試験中の太陽電池セル。ガラス密閉容器中のプレートが太陽電池セル(ひとつの容器に3枚の太陽電池セルを懸架している)。密閉容器下部に酢酸/飽和KCl水溶液を張っており、溶け残っているKClが白く見えている。

 

本試験手順を策定する際に、有意義な試験方法とするために、以下の2点について考慮いたしました。1) 太陽電池セル表面への(意図しない)結露を防止するために、密閉容器内の酢酸水溶液に飽和濃度の塩化カリウム(KCl)を添加しました。これは、飽和KCl水溶液の上部空間の相対湿度が、室温から100℃程度の温度において約80%程度に維持できることが知られているため、試験中だけでなく試験前後に周囲温度が低下することで太陽電池セル表面に(高濃度に凝縮した)酢酸水溶液が付着することを避けるために添加しています(同じ目的のため、出来るだけ熱容量の大きい密閉容器を使用することも推奨しています)。

2) 太陽電池セルの特性評価方法のひとつとして、交流インピーダンス特性評価を加えました。これは、酢酸などが太陽電池セル表面の集電電極を腐食する際に、(当該電極とセル表面間の剥離に由来する)新たな交流インピーダンス成分が生じることが報告されており、この成分変化を捉えることで、的確に(腐食に由来する)耐久性を評価することが可能となるものと考えたためです。

 

3. 本試験方法の他への活用

この耐久性試験方法は、試験期間短縮や太陽電池セル耐久性の相互比較指標の提供などを通して、太陽電池セル・パネルの開発サイクルを短縮・加速するという工業的利用を主眼として策定いたしましたが、太陽電池セル・パネルの耐久性を損なう要因探索やメカニズムの解析などの基盤的研究にも利用が可能であると想定しています。つまり、屋外で生じる太陽電池セル・パネルの劣化に関するモデル試験系としても利用でき、腐食劣化の素反応解析や(太陽電池セル作製工程などにおける)腐食劣化抑制策の創出をはじめ、(屋外劣化との対応が可能な場合には)屋外での耐久性(寿命)を推定することも出来るようになるものと期待されます。

 

4. 最後に

最後になりましたが、本試験規格の策定にあたり多くのご協力をいただきましたSEMIスタンダード 日本地区PV Materials技術委員会メンバーの皆さまをはじめ、本試験規格の策定・実験などの遂行をエンカレッジいただきました産業技術総合研究所 太陽光発電研究センターの関係各位に深く感謝いたします。また、本試験規格に関する検討は、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)よりの委託研究の一部として実施いたしました。あわせて御礼申し上げます。