SEMI通信 2016年11月号 Repo 1

地図はここにある。さぁ、ビジネスの新大陸へ。

 

微細化によるコストダウンの終焉

半導体産業はこれまで、技術開発によるトランジスタのコスト低減を推進力として、爆発的な成長を続けてきました。プロセスの微細化とウェーハの大口径化が、その両輪です。しかし、この素晴らしいシナリオが永遠に続くことはなさそうです。最先端の微細プロセスによるトランジスタ製造コストが、28nmを境に上昇していることが観測されています。米コンサルタント会社 International Business Strategiesによると、90nmで4ドルほどだったゲート1億個あたりのコストは、28nmまでは1ドル30セントへと減少を続けましたが、20nmからわずかに上昇に転じ、10nmでは1ドル45セント、7nmでは1ドル52セントを予測しています。

 

 

これはSEMIの観測ともほぼ一致します。SEMIは半導体の前工程ファブの投資動向を調査していますが、2009年の32nm/28nmを境にして、これ以降の微細化スピードが鈍化しています。また、この時点を境に、前工程ファブに設備投資をしても生産能力は増えないという現象が発生しています。既存の設備を最先端の微細プロセスにアップグレードすると、8%~15%の生産能力減少が発生するようになったのです。

 

 

つまり、微細化によるコストメリットは失われてしまったのです。しかし、メモリやMPU、ハイエンドロジックなど、最先端の微細化技術を必要とする分野では投資が続けられており、その結果、半導体業界では設備投資の大半を一握りの企業が担うという状態になっています。SEMI World Fab Forecastレポートによると、2015年に販売された前工程ファブ装置の金額の実に87%を、半導体デバイスメーカーの上位10社が支出しました。

また、ウェーハの大口径化についても、300mmから450mmへの拡大は、国際的な枠組みの中で技術開発が進められましたが、巨額のコストが問題となって、生産への導入が足踏みをしている状態です。

これまでの微細化と大口径化をメルマークとするロードマップにそって、全員が足並みをそろえて前進するという半導体業界の成長シナリオは、もはや成立しません。Intel、Samsung、TSMC、東芝などのMPU、メモリ、ファウンドリ大手が微細化に大型投資を継続する一方で、微細化以外の方法による価値提案をすることが、求められるようになったのです。

 

新しい価値提案

この傾向に拍車をかけるのが、IoTの半導体需要です。あらゆるモノをインターネットに接続し、人々の暮らしを効率的で豊かなものにしようとするIoT革命が必要とする半導体デバイスの数は膨大です。米調査会社 IC Insightsによると、IoTの半導体需要は2019年に296億ドルに達する見込みです。2014年~2019年の年平均成長率(CAGR)は19.1%に上ります。

しかし、幅広い価格の製品や消耗品にも採用されるIoTは、低コストのデバイスを必要とします。そのため、IoT向け半導体は最先端プロセスではなく、小口径ウェーハの成熟したプロセスで製造されるものがほとんどです。実際に比較的高価格な製品であるスマートフォンや自動車に搭載されているデバイスを見ても、その大半は200mm以下のウェーハで製造されたものです。

今年のSEMICON Westにおける「? 200mm manufacturing」セッション*のApplied Materialsの講演によると、BMWの電気自動車 i3に搭載された545個の半導体デバイスのうち、9割近い484個が200mm以下のウェーハで製造されています。IoTが必要とするマイコン、センサー、通信の各デバイスは、ほとんどが200mmあるいはそれ以下のウェーハのプロセスで製造可能であり、コストがかさむ300mmプロセスは不要なのです。SEMIのGlobal 200mm Fab Outlookレポートによると、200mmファブの生産能力は2019年までに2006年の水準まで再び増加すると予測されます。(*セッションのレポートへのリンクはこちら。)

 

 

半導体業界では、IoTや車載半導体が求める多様な半導体デバイスを提供するためのM&Aが多数発生しており、これもまた、半導体デバイスメーカーの再編成の一因となっています。電子部品メーカーによるセンサーメーカー等の買収なども、この一環といえるでしょう。

 

問われるサプライヤの製品戦略

半導体産業の価値提案が多様化した今、装置、材料メーカーも、これまでの微細化、大口径化という一本道から、新たな展開へと選択肢が広がっています。冒頭で半導体設備投資の寡占化を述べましたが、装置産業も同様に、上位10社が世界市場の77%を占め、そのうち上位3社で全体の半分近くを販売しています。難易度と複雑性が高まる最先端プロセスに向けた装置開発のコストを負担できる企業が減っていること、また装置業界の企業統合が進んでいることがその原因です。IoT需要を背景とした200mm以下の装置ビジネスも含め、各社の戦略が問われる時代となりました。

半導体バリューチェーン全体が、業界再編成によるプレイヤーの変化、そして最先端プロセスとレガシープロセスへの2極化という、これまでとは全く異なる環境にあります。この新しいビジネス環境で成功するビジネスモデル、そして各社が選択する戦略が、大きく問われています。

 

地図はここにある!

12月14日(水)からSEMICON Japanが東京ビッグサイトで開催されます。第40回となる今年は、半導体バリューチェーンの変化を経た新たなビジネス環境での成功戦略を発見するために「地図はここにある。さぁ、ビジネスの新大陸へ。」をテーマに開催します。大きな変化は大きなチャンスの時でもあります。成功への飛躍に必要な情報とパートナーシップが、ここにあります。

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