SEMI通信 2018年9月号 Report 2

センサーフュージョンがデバイスによる周囲の認識を実現する

 

SEMI Europe Marcomマネージャー セリーナ・ブリケット

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Infineon Technologiesのヒューマン-マシンインタフェース(HMI)担当ディレクターであるクリスチャン・マンドル氏に、人間の五感に迫るマシンの知覚能力について話を聞きました。

 

SEMI:InfineonのHMIグループはどんなことをされているのでしょうか。

 

マンドル:スマートデバイスによる状況の認識を例にとると、私たちの取り組んでいることが良く分かるでしょう。デバイスがその特定ユーザーに対して順応するためには、周囲の状況を認識することが必要になります。消費者によりパーソナライズされた体験を提供するため、と言ってもよいでしょう。マシンがその周囲の状況を良く理解できれば、判断力はまるで人間であるかのように高くなります。この状況認識を可能にする鍵となるのがセンサーフュージョンです。センサーフュージョンのおかげで、マシンは、同じ状況に関するものでも、さまざまなセンサーから情報取得することにより、信頼できるフィードバックを提供することができるのです。これまでのデバイスと比較すると、フォールス-ポジティブやフォールス-ネガティブの誤判定が減少し、完全なソリューションをスマートに提供するようになります。

HMIグループが現在取り組んでいるのは、クラス最高のセンサーと高度な機械学習アルゴリズムを組み合わせて、周囲状況を認識するシステムを実現することです。デバイスが置かれた環境をセンシングし、ユーザーに合わせた反応をするためのソリューション作りをしているのです。当社ではこれを直感的センシングと呼んでいます。

 

マンドル

SEMI:この取り組みについて詳しくお聞かせください。既存の諸技術やデバイスとセンサーを組み合わせる上で、最も困難な点は何でしょうか。

 

マンドル:何らかの技術にセンサーを組み入れる方法は、従来は非常にシンプルでした。例えば、存在検出に使用するレーダーセンサーは、通常は最も近くにある物体までの距離を提供し、指定された行動を始動させます。この方法でも機能するでしょうが、これではカスタマイズができないので、使い方によっては適用できない場合があります。センサーフュージョンと高度な機械学習技術を組み合わせれば、ソリューションはより強靭かつ安定したものとなります。スマートスピーカーに、当社のマイクロフォンとレーダーセンサーを搭載すると、これによってユーザーの存在を検知し、その位置や動きを追跡することができます。ビームフォーミングのような高度なアルゴリズムがこれに加わると、マイクの指向性をユーザーに合わせ、ノイズを除去して命令をクリアに聞き取れるようにすることができるのです。

 

SEMI:センサーによって、リアルワールドとデジタルワールドを結びつけようとされていますが、センサーフュージョンのコンセプトについてもっとお聞かせください。

 

マンドル:レーダーセンサーをスマートスピーカーに組み込むことは良い例です。その結果、デバイスが現実世界を理解する能力が大幅に改善され、あらたに可能となる活用事例が大幅に増えます。次世代のIoTデバイスは、ユーザー自身の行動やいる場所に関する情報がキーワードとして命令の中に含まれていなくても、センサーデバイスがその情報を検知して最適な処理を行う能力が備わるようになります。例えば、リビングルームに置かれたスマートスピーカーに「明かりをつけて」とか「音楽をかけて」と命じた場合、ユーザーの周りの照明やスピーカーだけがオンになるべきで、キッチンで作動しても意味がありません。ユーザーが別な部屋に移動したら、照明と音楽もユーザーと一緒に移動すべきです。レーダーによる存在位置の精密な検出とトラッキングが消費者との最適な交流を可能にし、命令の明確な理解や完璧なユーザーエクスペリエンスを提供するのです。また、誰もいない所では照明の消灯やデバイスのスイッチを切ることで、スマートホームの省エネにもつながります。

 

SEMI:マシンのセンシング能力は人間の五感に近づいて、行動する前に環境の理解をするようになりました。コンシューマ市場で、どんな新しいアプリケーションが生まれるのでしょうか。

 

マンドル:センサーフュージョンでマシンのセンシング能力が強化されることによる可能性の広がりは、まだ想像がつきません。センサー、データ処理アルゴリズム、機械学習ツールをうまく組み合わせれば、無数の使用事例の可能性が生まれます。スマートデバイスは状況をこれまで以上に認識してユーザーからの命令に対する行動を予見するようになり、直感的なセンシングの時代を導くことでしょう。スマートデバイスとまるでもう一人の人間のようにコミュニケーションをとれる世界を創造してみてください。

 

当社HMIグループが取り組んでいる先進インテリジェンスは、デバイスの用途に合わせたセンサーフュージョンデータとカスタマーニーズのマッチングをするセンサー頭脳を実現しようとしています。この変化を経験しようとしているのはスマートスピーカーだけではありません。ホームセキュリティやユーザー認証、また身体データを計測するウェアラブル機器など、様々なIoTデバイスも同じように変化することでしょう。デバイスに適切な技術の組み合わせが備われば、より多くの成果を上がられるようになります。センサーフュージョンは複雑な状況の中でスマートな判断をするテクノロジーを可能にするでしょう。それは場合によっては人間を上回ることも考えられます。

 

(初出 SEMI Blog 2018年9月5日、本稿は左初出記事の抄訳)