SEMI通信 2018年6月号 Report 1


小休止はあっても米中間の緊張はヒートアップ

 

SEMI パブリックポリシーマネージャー ジェイ・チットゥーラン

 

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希望は永遠に湧きつづけるものです。先ごろの米中当局者による対話において、貿易戦争の不安が深刻なものとして取り上げられなかったことを、多くの米国企業が歓迎しました。お互いの貿易格差が解消に向かうと想像できたからです。スティーブン・マヌーチン米財務長官は、中国との貿易戦争は「保留された」とまで述べました。

しかし、希望と楽観主義は泡のように消え去りました。5月29日、ホワイトハウスは、トランプ政権が、中国から輸入される500億ドル相当の品目に25%の関税を課す手続きを進めると、マヌーチン長官と相反する発表をしたのです。先進的製造品目の国産化を増進する中国の戦略「中国製造2025」につながる米国がみなした品目に重点を置くだけではなく、トランプ政権は重要な工業技術の取得に対する厳しい投資制限と貿易管理強化も発表しました。

6月15日にトランプ政権が発表した340億ドル相当の関税賦課対象品目リストには、残念ながらSEMIが指摘した米国半導体産業に対する影響が懸念される品目のうち、80%が含まれています。USTRはまた、160憶ドル相当の品目リストを提案しており、これには、半導体、ウェーハ、FPD、マスクの製造に使用されるケミカル、機械、スペアパーツなど、「中国製造2025」の下で製造されたと判断される品目が含まれています。トランプ政権はさらに、投資制限と貿易管理の提案リストを6月30日までに発表するとしています。訳注:6月15日にトランプ政権は関税賦課対象品目理リストを発表、翌6月16日には中国がこれに対抗し、同等の追加関税賦課対象品目を発表しました。

 

関税と新たな輸出管理における重点項目

 

このすべては関税と投資制限による中国との商取引抑制について、ホワイトハウスと連邦議会の数か月に渡って加熱してきた活動がもたらしたものです。

今回の動向の重要な要素である通商法301条の調査は、中国の知的財産権侵害に関する商慣習に焦点が絞られました。一ヶ月間の調査を終えた米国貿易代表部(USTR)は、2018年3月、中国が米国企業に対して差別的に、技術および知的財産の移転を強要したと断定しました。この結果を受けたトランプ大統領は、中国からの500億ドル相当の輸入に対する25%の関税賦課提案を含む一連の是正措置で対抗することになったのです。

提案された関税賦課対象品目の内、100項目以上が半導体サプライチェーンに直接影響を及ぼし、半導体製造プロセスの基本的要素に打撃を与えることになります。 SEMIはこれらの品目をリストから削除するよう強く求めています。 中国に対する追加関税の賦課は、中国から物品を輸入する米国企業にとって年間数千万ドルのコスト増となり、輸出減による収益低下、何千人もの高報酬雇用の危機、イノベーションの抑制、米国の技術的リードの減少を招くことになるでしょう。これらはいずれも米国と中国の関係を改善するものではありません。

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この追加関税と輸出規制強化は、半導体サプライチェーンにとって特に問題となります。この最近の動きは、鉄鋼、アルミ、太陽電池に対する追加関税などの通商措置に続くものです。これらは貿易を制限し米国経済の成長機会を減じるだけでなく、米国企業に重大な不確実性をもたらすでしょう。

 

対米外国投資委員会が改革されても消えない懸念

他にも政府による投資の継続を妨げかねない動きがあります。上院銀行委員会と下院金融サービス委員会の双方が、全会一致で外国投資リスク審査現代化法(FIRRMA)を承認したのです。この法律は、対米外国投資委員会(CFIUS)という外国からの投資を国家安全保障の見地から審査する米国政府の省庁間委員会の強化を目的としたものです。このような滅多にない超党派協定が主要な法案で成立をしたからには、同法は両院を通過し、年内に署名され成立することが見込まれます。

現行の法案は当然、以前の草稿を改善したものです。米国企業と外国企業とのジョイントベンチャーを審査する権限をCFIUSに付与するという、問題のある記述はなくなりました。またCFIUSの管轄を外国への投資にまで、前例のない拡大をすることもなくなりました。半導体産業が世界のサプライチェーンに拡大することに強く依存していることから、こうした記述は私たちの産業にとって大きな懸念事項となったのです。

しかし、CFIUSがどのように機能するのかという点で、広範な懸念がまだ残っています。ここ数か月間にわたり、CFIUSは国家安全保障という議会の意図とは外れ、経済安全保障という観点で取引の評価をしているように見受けられます。この傾向が継続すると、受け入れられたはずの投資が妨げられ、半導体産業では特に、イノベーションの抑制や成長の制限に繋がりかねません。

 

SEMIは政策立案者に産業へ影響する情報を提供します

緊張が今後も高まり、中国との商取引に壁を築く努力が進むような場合、SEMIは政策立案者に対して、こうした制限がいかに半導体産業の長期的な健全性を損なうか情報を提供します。SEMIはこれからも政策立案者と接触し、半導体産業の継続的繁栄にとって、貿易と投資が非常に重要であることを伝え続ける所存です。SEMIのパブリックポリシー活動にご興味のある方は、SEMIのパブリックポリシーマネージャー ジェイ・チットゥーランまでご連絡ください(jchittooran@semi.org)

 

初出 SEMI Global Update 2018年5月22日号に最新情報を補足