SEMI通信 2018年5月号 Report 2

MEMS製造:成長の鍵か、業界の障害物か?

 

Okmetic Oy シニアテクノロジーマネージャー ヘイッキ・ホルムバーグ

 

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MEMS産業は大きな成長の可能性を秘めています。MEMSの製造は、持続的成長のボトルネックとなるのでしょうか、あるいはこの可能性を達成するための重大な道筋となるのでしょうか。開発サイクルに時間がかかる、製造プラットホームが複数必要、研究開発の少量試作が高コストという障壁が、新製品のスピーディーな開発を妨げてきました。MEMS製造の特殊性と、様々なエコシステムの選択肢を理解すれば、あなたもこうした問題をうまく操って、ユニークな新製品をより短期間に開発できるようになるでしょう。

MEMS製造の多くの問題の原因となっているのが、MEMSデバイスの多様性と、そのそれぞれで要求条件が異なること、また製品ごとにプロセスアプローチが変わることです。ひとつのアプローチを全ての企業に当てはめることは無理ですが、様々な企業の専門技術に対応可能なエコシステムを形成できれば、こうした問題に対する最適なソリューションとなるでしょう。しかしながら、このエコシステムをつなぎ合わせることは、容易とは言えません。サプライチェーン全体が共通の基本設計ルールを守り、共通のトップレベル技術開発のロードマップに従わなければ、混成のパートナー企業グループを機能させることができないからです。

このような共通性を確立するには時間も努力も必要なので、大企業や中企業の多くは、コストはかかっても自社専用のサプライチェーンを選択しています。その逆に、新興企業は装置に大きな設備投資をすることができませんから、装置を保有し様々なMEMSプロセスに対応するファウンドリーという、より魅力的な選択肢を必然的に選ぶことになります。あなたがMEMS製造に乗り出すなら、競合から抜け出すためにどちらの選択肢を選ぶでしょう。

 

エコシステムパートナーを見つける

MEMSの製造テクノロジーの選択肢は数が多く、そのためプロセスインテグレーションが困難になっていますが、ここでユニークな製品をタイムリーに開発する上で重要になるのが技術ノウハウです。もし、あなたが自社専用のサプライチェーンを持っていないなら、あなたのテクノロジーとマッチし、それを補完してくれる専門技術をもったエコシステムパートナーを見つけなければなりません(表1)。

 

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表1: 企業の専門分野とエコシステムの選択肢。1=最適 2=良好 3=まあまあ

 

また、あなたの会社が、最終製品あるいはエコシステムのパートナーに付加価値を与えられるか、考える必要もあります。すべてに優先して、パートナー間に信頼がなければなりません。相互に信頼できなければ、情報の十分な共有はできませんし、お互いの知識の集積もできません。これでは、問題解決も遅くなり、開発サイクルは極端に長期化するでしょう。

 

Option 1: 自社でサプライチェーンを抱える

BoshやSTMicroelectronicsのようにサプライチェーンを全て社内に抱えるというOption 1を維持できる会社は少ないでしょうが、その利点は多々あります。すべてのノウハウが社内に封じ込められる、IPの保護が容易、サプライチェーンの管理が簡単、などです。しかし、このモデルは莫大で長期にわたる投資、相当な企業努力、そしてサプライチェーンの各部分で技術競争力を維持するための資金を必要とします。

 

Option 2: ASICの外注

サプライチェーンは抱え込むものの、ASIC製造だけは、場合によっては設計と組立も含めて外注するという選択肢です。この選択肢は、かなりのMEMSの専門技術を持っていることが必要ですが、MEMS製造プロセスのコントロールができるため、ファブレスモデルにある制限から自由になります。また、ファウンドリーを使用するより、IP保護の点でも有利になります。

 

Option 3-4: ファウンドリーモデル

多くの会社が、MEMSファウンドリーを利用するよりも、サプライチェーン全体を抱えたり、デバイスのASIC部分のアウトソースに止めていますが、コスト志向を持つ会社にとってMEMSファウンドリーは、素晴らしい選択肢となります。新しい装置や先進的な材料に必要な大金を投資する余裕がない場合、あるいは製品のライフサイクルが短いので早急に増産する必要がある場合などに、ファウンドリーによるソリューションを検討すべきでしょう。ファウンドリーには大きく2種類があります。専業ファウンドリー(Option 3)と設計サービスと自社IPを提供するファウンドリー(Option 4)です。Option 3では設計サービスは提供されず、自社の設計の提供もありません。製造ラインを持たないMEMS設計会社にとって素晴らしい選択です。しかし、あなたの会社にMEMS設計の深い知識がない場合は、Option 4が設計のサポートや、場合によってはIPの提供をしてくれるでしょう。

 

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Option 5: MEMSを購入する

出来合いのMEMSチップを購入し、自分たちの部品作りの基礎とするのが、Option 5です。あなたの会社がバリューチェーンの上位にある場合や、システムレベルの専門性がある場合には、確かな選択肢でしょう。

将来的には、MEMSエコシステムのプレイヤーは、デザインライブラリーの開発と、これをサポートするMEMSプロセスデザインキットの品ぞろえによって、成功を勝ち取ることになるでしょう。これはIC産業で今行われていることです。このアプローチは、MEMS製品の設計サイクル(アイディアからプロセス開発、そして製品完成まで)を大幅に短縮し、MEMS製造産業のゲームのルールを根底から変えてしまうでしょう。

 

写真:ヘイッキ・ホルムバーグ博士

フィンランドのヴァンターに勤務するヘイッキ・ホルムバーグ博士は、Okmeticの高性能シリコンウェーハの新たなビジネス機会を開発しています。彼はまた、OkmeticのEUおよび国家研究プロジェクトのマネージメントも担当しています。

さらに詳しい情報は、こちらをご覧ください: https://www.okmetic.com/

 

初出 SEMI Blog (http://blog.semi.org/blogs) 2018年5月7日