SEMI通信 2017年7月号 Report 2

2022年の車載エレクトロニクスは1台6,000ドル、市場規模1600億ドルへ

SEMI ポーラ・ドー

 

※7月11-13日にサンフランシスコで開催されたSEMICON Westに関連した記事のご紹介です。記事の内容からSEMICON Westの紹介部分は割愛して翻訳しております。

 

未来のスマート自動運転カーは、電装部品メーカーにとっては大きな変化を意味します。それは、車内ネットワークから、ディスプレイまでの厳しい安全基準への適合、前方道路との5G通信、そしてAI運転手の運転免許にいたるまで、その変化は及ぶでしょう。

ハイエンドカーの電装部品は5年以内に1台あたり6,000ドルを超え、2022年の車載エレクトロニクス市場を1600億ドルへと押し上げると、米調査会社IHS Markitの車載エレクトロニクス首席アナリスト、ルカ・ド・アンブロッジ氏は予測します。

IHS Markitによると、車載エレクトロニクスに占めるソフトウェアと半導体のコスト割合が高まっており、半導体の2022年までの年平均成長率(CAGR)は7%以上となる見込みです。これは、同期間の車載エレクトロニクス全体の成長率4.5%、自動車台数の成長率2.4%をいずれも上回る数字です。

自動車メーカー各社は、車載エレクトロニクスをさらにインテリジェント化しようと、全体の見直しをはじめています。各社とも、Control Area Network(CAN)をベースにした標準的でフラットな車載ネットワーク構造を、より高度なネットワークへと置き換えて、複雑化とデータシェアリングに対応しようとしていると、ド・アンブロッジ氏は言います。「すべての電装システムは、厳しさを増す安全基準に適合しなければならず、まずはセキュリティからの取り組みとなります。セキュリティが確保できなければ安全な車とはなりませんから」と氏は指摘しましたが、これにはラジオを操作し電話を接続するために使用されるディスプレイでさえ対象となります。こうした機器も運転に関連した情報を通信するようになり、厳しい安全基準が適用されるのです。

 

必要なのは共通プラットホームと運転免許

「AIは、完全自動運転(L5)を実現する原動力となりますが、性能、安全、コストへの要求を満たせるようになるには、あと数年はかかるでしょうし、現在のシリコン技術ではまだ不十分です」とド・アンブロッジ氏は述べ、効率を高めた新しい構造と、消費電力の低減が必要だと言及しました。しかし、自動車市場単独では、半導体部品の開発費をまかなうだけの十分な大きさがない恐れがあり、したがって、より汎用的な半導体部品で、自動車市場にカスタマイズ可能なものが必要とされる場合も考えられます。

車載AIシステムは物体を認識することから先へ進んで、その情報を使って動作を予測し、それがスマートフォンに気が散っている歩行者に見える場合は、その人が車道に踏み出すかどうかを判断しなければなりません。チップレベルの音声認識は比較的成熟した車載インフォテイメントですが、これでさえも、運転アシストのアプリケーションでは、大幅な改善が必要となります。「安全性が重要になるアプリケーションでのAIの課題のひとつは、どうすればディープラーニングが十分にされたと判断できるのか? どうすればバーチャルな脳を認定できるのか? マシンが自動運転するスマートさを備えていることを明確にするために、マシン用の運転免許を発行する必要があるのか? ということです。」

センサーについては、レーダーやカメラを超えるLIDAR(Light Detection and Ranging)が「必需品」となり、2025年までに約3500万台の需要が生じるでしょう。このビジネスだけでも、15ほどの異なる技術が競い合っています。こうした複数のセンサーから入力された情報は、正確性と冗長性のためにリンクする必要があります。IHSの予測によると、高度運転支援システム用のセンサーフュージョンの部品コストは、2025年までに倍増するでしょう。一方で、駐車支援用のベーシックなサラウンドビューセンサーフュージョンのコストは、コモディティ化にともなって半減するでしょう。

 

将来は車載5G接続でさらなる変化の可能性

Intelの自動運転グループ担当VP、キャサリン・ウィンター氏は、自動運転車の生成するデータが2020年までに1日最大4テラバイトになるので、5Gによる通信とクラウド上のストレージサービスが必要となるだろうと述べました。ウィンター氏は、Intelは現在、何百台もの自動運転テスト車に「頭脳」を提供しており、自動運転での車、コネクティビティ、クラウドを包含するエンドトゥエンド(またはエンドto エンド)のソリューション提供に向けて開発を進めていると言及しました。収集されたデータは5Gを通じてデータセンターに送られ、学習ならびにアルゴリズムトレーニングに供されると同時に、高精度地図にアクセスして車を安全かつ効率的にナビゲートする助けとなり、リアルタイムに走行中の車にアップデートを提供します。Intelはこの分野で多くのイノベーションを推進していますが、ウィンター氏はパートナーシップと、自動運転を取り囲むより大きなエコシステムでのチャンスの重要性を強調し、IntelとBMW、Mobileyeとの協力関係を挙げて「自分たちだけでできる会社はありません」と述べました。

Qualcomm Technologyの製品マネージメント担当VPであるナクル・ダガル氏は、車載のすべてのセンサーと知的機能とは別に、未来のスマートカーは次世代の5Gでのインターネット接続に大きく依存することになると語りました。「5G技術は、自動車産業を一変させ、自動車に対する考え方、その利用の仕方を再定義することになるでしょう。2035年までに、5G技術は広範な自動車分野において、2.4兆ドルの経済生産高を可能にすると予測しています。」

 
図1: 5Gが自動車の知能の指針を動かす。
出所:Qualcomm Technologies, Inc.

レーダー、LIDAR、カメラの進歩には希望がありますが、こうしたセンサーには視野の制限があります。コネクテッドカー向けの無線通信技術「セルラーV2X」が5Gに進化すると、こうしたセンサーを、360度死角のない認識能力で補完し、死角になる交差点や悪天候であっても車の道路を見る能力を拡大することができます。C-VX2技術は、他のセンサーを補完して、運行位置、スピード、方向、さらには目的を伝達することで、これまでのセンサーでは推測しかできなかったことを、髙水準で予測するのです。

理想的には、スマートカーは3D高精度マップの中で、自分の精密な位置情報を知っています。このマップは現実世界を大量情報でモデル化したものであり、リアルタイムにセルラーV2X技術によってアップデートされます。正確な3D高精度マップには、0.1mレベルの位置精度が、常時、あらゆる条件下でも求められます。そして、3D高精度マップデータを、車と車、車とネットワーク、車とスマートシティのインフラの間で通信するには、ゼロから設計した新タイプの高速無線通信技術が必要であり、これによって、危険情報を、道路にあいた穴や道路工事から、カーブの向こうの交通事故まで知ることができるのです。5G技術の自然な進化によって、新しい自動車がCV2Xに対応するモデムを搭載する比率が増えることになりそうです。また、5Gで必要となるスモールセル(カバー範囲の狭い基地局)は、インフラ全域のロードサイドユニットと同居できるだろうとダガル氏はコメントしました。

本稿にコメントを寄せた各氏は、SEMICON West 2017でSAE Internationalと共催したSmart Automotiveセッションの講演者です。同様のプログラムは、12月のSEMICON Japanでも提供を予定しています。

(初出 SEMI Global Update 2017年6月27日号)