SEMI通信 2017年6月号 Report1

EUVリソグラフィを巡る議論はまだ熱い


SEMI デブラ・フォーグラー

 

SEMICON WestのTechXPOTステージでは、再びアドバンスト・リソグラフィにスポットライトあてる「リソグラフィ戦略選択の経済」セッションが開催されます(7月13日 10:30-12:30)。SEMIは確定している講演者の何人かにインタビューし、選択判断の経済面を中心に、予告編となる質問をしました。全講演者のリストとプログラムについては、こちらをご覧ください:

http://www.semiconwest.org/programs-catalog/economics-choosing-lithography-strategy

ASMLの戦略マーケティング担当ディレクタ マイク・ラーセル氏は、SEMIのインタビューに対し、7nmおよび5nmノードのEUVリソグラフィの導入を妨げるようなインフラの問題はないと回答しました。「2年前に試作品と図面をお見せしましたが、今年になって、転写される欠陥がないペリクルの製造に成功しました」と述べています(図1参照)。また、「マスクショップ向けに、EUVレチクルへのペリクル装脱着装置を開発し、すでに複数セットを顧客に出荷しています」とのことです。

 

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図1  出所: ASML

 

ASMLでは現在、10nmロジックノードのチップメーカーにおける量産拡大と、7nmファウンドリ―ノードのプロセス開発を、同社の第4世代機種 TWINSCAN NXT:1980システムで進めています。最初のEUVLによる量産は、7nmのロジックノードおよび10nm台半ばの DRAMノードになるだろうというのがASMLの予想です。「EUVはコスト効率のよい微細化に最適なプラットフォームであり、チップメーカーはそれぞれのプロセスに基づいてEUVをどのように加えるか判断をすることになります。また、そのノードのnm値は、チップメーカーそれぞれの慣習によって呼び方が異なるでしょう。」

EUVリソグラフィのプラットフォームについても、ASML社は今後10年間の拡張性に自信を深めています。「現在のNA(開口数)は0.33だが、新しく設計した光学系では0.5以上に上げることができます。これによって、2017年中に出荷するNXE:3400Bの解像度は、現在の13nmから8nmまで改善されることになります。」

 

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図2  出所: ASML

 

「これだけ高NAのシステムであれば、チップメーカーが微細化でタイトになる許容差に対処し、さらにデバイスをシュリンクするための最もコスト効率の良い方法を提供することができます」とラーセル氏は述べ、さらに続けて、ASMLは高NAシステムのロードマップを顧客と検討しており、2020年~2023年の間に投入することを目指していると述べました。「ただし、この目標時期は確定したものではなく、顧客の需要に影響を受ける可能性があります。」(図3参照)

 

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図3  出所: ASML

 

リソグラフィの要求条件は、微細ノードでのイールド確保のために厳しくなっており、ラーセル氏はASMLがリソグラフィの総合的アプローチとして、リソグラフィシステムと、メトロロジ―、計算機リソグラフィを統合し、これによってプロセス誘起変動の制御といった多くのメリットを提供していると説明しました。「EUVはDUVと同水準の制御能力を備えるようになるでしょう」とラーセル氏はSEMIに語りました。

ラーセル氏は、これまで多重パターニングを必要としていた最もクリティカルなレイヤーではEUVへの置き換えが進むが、他の多くのレイヤーについては、予測できる将来の範囲では液浸装置の利用が続くとし、「結局のところ、DUVとEUVは今後も長期にわたって共存するでしょう。当社は両技術の進歩を継続し、カスタマの性能とコストに対する要求に最適に対応する組合せを提供します」と述べました。これを達成するため、同社ではEUVとDUVを組合せた環境においても顧客のプロセスフローを有効にするため、両者による露光をマッチングさせる機能を提供する予定です。

 

論点

半導体業界ではどんなことでも100%の合意がされることは通常はありませんが、量産に向けたEUVの準備状況、あるいは将来的な可能性については、何年にもわたって完全に異なる様々な見解が噴出してきました。Nikon Research Corporation of Americaのイメージングフィジックス担当ディレクタ、スティーヴン・レンウィック氏は、SEMIのインタビューに対し、EUVリソグラフィの7nmノードで取り入れられるかどうかは分からないと答えました。「依然として、レジストの性能、高価なマスクを保護するペリクルの欠如という固有の課題が存在しています」とレンウィック氏は述べ、また、新たなEUVの課題の中から、光近接効果補正(OPC)が露光装置個別に必要となる可能性を指摘しました。

レンウィック氏は、193nm液浸多重パターニングリソグラフィがコスト問題に直面していることを認めていますが、「しかし、7nmノードにおいてはEUVリソグラフィでも多重パターニングが必要になる可能性があり、5nmでは確実に必要であることを忘れるべきではありません」と述べ、「コストを低く抑え、信頼性を高めるニーズから、その先のノードではEUVの導入がおそらくは推進されるだろうと思います」と続けました。5nm以下のノードに関して、レンウィック氏はSEMIに、パターンのシュリンクをリソグラフィ装置だけで推進し、その他のプロセス装置はこれを支援するだけという時代は終わったと語りました。「将来のノードサイズのパターニングは、光学印刷と化学処理の両領域で、自己組織化リソグラフィ(DSA)のような新技術を使った開発が必要とされるでしょう。」

前向きな話として、レンウィック氏は、193iとEUVリソグラフィは、いずれか一方だけの選択肢として考えられたことはないことを、再確認しました。「単一の技術に頼るのは悪いソリューションです」と彼は述べました。「リソグラフィの未来は、全ての選択肢の組合せを必要とします。当社はたまたま、193iリソグラフィがその選択肢の中心であり続けると考えているということです。」

 

7nmおよび5nmのメトロロジーは?

米国標準技術局(NIST)の物理学者で3Dナノ構造メトロロジープロジェクトの光学方式担当プロジェクトリーダーを務めるブライアン・バーンズ氏は、7nmおよび5nmのメトロロジーアプリケーションは、個々のメトロロジー手法の根底にある物理を正確に理解することが益々必要になると述べました。「クリティカルな計測には、複数の装置の併用が求められことがしばしばです。半導体産業はすでにプロセス制御での困難に直面しており、微細な計測では、ひとつだけのメトロロジー装置で十分なプロセス制御を高スループットで提供することができなくなっています」と、バーンズ氏はSEMIに語りました。NISTはハイブリッドのメトロロジー手法を開拓し、これがファブにおいて勢いを増していると言います。「この手法によって、複数のメトロロジー装置の組合せを統計処理し、一組の測定値と不確かさが求められるのです。」

10nmから5nmへと進むと、バーンズ氏は各メトロロジー手法の根底にある物理の役割が大きくなると説明しました。その一例が、NSTが取り組んでいる光CDメトロロジーの微小寸法における電磁気モデリングの精度です。「私の同僚のアンドラス・ブラダーやジョン・ビラルビアは実験的な走査型電子顕微鏡を進歩させているだけでなく、電子ビームの物質との相互作用をモデリングして、SEMイメージを適合させる研究もしています」とバーンズ氏は述べました。

7nmの多重パターニングで必要となるメトロロジーについて、NISTの研究者、ダン・サンデイ氏とジョー・クライン氏は、微小角入射X線散乱法による測長装置(CD-SAXS)による多重パターニングされた形状のサブnm分解能のピッチ測定を最近発表しています。バーンズ氏はSEMIに「この測定はシンクロトロンで実施されましたが、さらに強い光源を開発して、CD-SAXS測定をファブや、さらにインラインでの使用に関心が寄せられています」と語りました。

さらに5nmを視野にすると、バーンズ氏は複数のメトロロジー法を使わなければ、正確な測定は実現できないと指摘しました。「インラインのものもあれば、オフラインのものもあるでしょう。本質的に破壊技術である手法は、測長だけでなく、ナノスケールでの材料組成についても議論が続くと考えられます」とバーンズ氏は述べます。そして、5nmのデバイスを理解するためには、高解像度手法(3次元アトムプローブや走査型透過電子顕微鏡(STEM)など)と、低解像度手法(二次イオン質量分析法など)のどちらもが必要となるとの見解を述べました。

業界が5nm以下に進むとなると、いくつかのエキサイティングな課題に取り組むことが求められます。「1nm3の量の結晶シリコンは、わずか50個の原子しかないのです」とバーンズ氏は言いました。5nmの幅のラインの正確な原子の数は、結晶方位によって変わりますが、このような寸法は、わずか10原子ほどの幅と表現できるとバーンズ氏は説明しました。「ラインエッジラフネスを制御するためには、正確なプロセス制御が必要ですが、それが5nm になると、シリコンの格子定数に匹敵するようになるのです。メトロロジーは原子のサイズに近いスケールでの計測が必須となります。」

SEMICON West 2017のリソグラフィ関連のプログラムについては、こちらでご確認ください: www.semiconwest.org

 

初出 SEMI Global Update 5月9日号