SEMI通信 2017年4月号 Report 1

トランプ大統領の議会初演説の意味

SEMI米州パブリックリレーションズ担当 テイラー・シェラー

 

2月28日、ドナルド・トランプ大統領は上下両院合同会議において、初めてとなる演説を行いました。一般教書演説とは異なりますが、大統領の広範にわたる演説からは、技術分野および米国経済界の全体にむけた重要な政策上の意味が読み取れます。1時間にわたる演説の中で、大統領は過去に大統領選挙で聞かれた発言の多くを繰り返し、貿易、移民、税制など、SEMIの会員が注目すべき多くの問題に言及しました。

貿易問題

大統領:「私は自由貿易を固く信じていますが、それは公平な貿易でなければなりません。私たちが公平な貿易をしていたのは遠い昔になってしまいました。初の共和党大統領、エイブラハム・リンカーンは「米国政府が保護政策を廃止すれば、国民は困窮し荒廃する」と警告しました。リンカーンは正しかった。今こそ、私たちは彼の言葉と助言に耳を傾けるべきです。私は、アメリカと、その偉大な企業、労働者が、これ以上つけ込まれるままにしておくつもりはありません。」

大統領の重商主義的な貿易政策については、財界で色々と言われています。就任してからの短い期間に、大統領は世界で最も重要な貿易交渉である環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から離脱し、北米自由貿易協定(NAFTA)の一方的な見直しを提案し、中国の輸出を麻痺させる障壁をつくると脅し、世界貿易機関(WTO)は完全に無視すべきであると提案しました。就任演説においても、トランプ大統領は同様に次のように述べました「他国の暴挙から国境を守らなければなりません。彼らは私たちの商品を生産し、私たちの会社を盗み、私たちの雇用を破壊しています。保護こそが偉大な繁栄と力をもたらすのです。」

米国通商代表に就任したロバート・ライトハイザー氏やウィルバー・ロス商務長官など政権当局者の多くは、自由貿易がホワイトハウスの基本方針であることに変わりはないと繰り返し発言していますが、この点について説明がされたことはありません。大統領は議会演説において、国際競争および通商のおかげで、米国企業および消費者が、より良い製品をより安く購入できるようになったということには触れませんでした。我々のような輸出型産業は、このような保護主義的な貿易政策を打ち消すために力を尽くす必要があります。

 

移民問題

大統領:「私は何百万人もの雇用を取り戻します。我が国の労働者を守ることは、合法的な移民制度を改革することでもあります。現在の時代遅れの制度は、もっとも貧しい労働者の賃金を押し下げ、納税者の負担を重くしています。」

米国の移民政策は歴史的に、世界から優秀で創造力にとんだ人々に、この国へ来て、学び、仕事をするように呼びかけてきました。トランプ大統領は演説の中で、この慣習を根本的には変えないとしても、妨げるような計画を示唆しました。トランプ政権が提案する米国移民政策の改革は、H-1B就労ビザも対象としています。規則の草案は、移民枠の削減、留学生に対する制限、配偶者の就労権を廃止、また技術産業が才能のある人材を引きつけ確保するためのオプションの削減を招くであろう内容です。

政権の行政当局は、高度な技能を有する移民について、いまだ特段の関心を示していませんが、当局の一般的な体制からして、米国国土安全保障省などの機関に、移民への公共サービスの全コスト、コスト削減の可能性、公益上の規則変更についての調査が命じられることになるでしょう。これに相反するのですが、全米アカデミーズ(全米科学アカデミー、全米技術アカデミー、米国医学研究所、全米研究評議会から構成される学術機関)が昨年発表した研究によると、「長期的には、(移民が)米国生まれの労働者の賃金および雇用全体に及ぼす悪影響はない、もしくはわずか」です。むしろ、この研究でわかったのは、高度な技能を有する移民は、特に科学技術分野において、熟練および労働者階級の米国人に顕著な好影響を与えています。マイクロ/ナノエレクトロニクス業界では良く知られていることですが、彼らはイノベーションを加速し、新たに多くの雇用を生み出す助けとなるのです。

 

税制問題

大統領:「現在、米国企業には、世界でもっとも高い水準の税金が課せられています。私の経済チームは、米国企業がどこのだれとでも競争し繁栄することができるように、税率を引き下げる歴史的な税制改革に取り組んでいます。私たちが製品を米国外に出荷すると、海外の多くの国が非常に高い関税や税金の支払いを求めますが、海外企業が米国に製品を出荷するときに、私たちはほとんど課税していないのです。」

大統領は演説の中で変化を求めていますが、改革案の詳細を明らかにはしていません。政権当局が今後数週間のうちに総合税制改革案の概要を示すものと思われます。これは共和党議員による提案をしっかりと反映したものとなるはずです。この共和党案は、輸出を免税する一方で、輸入に対して国境税調整(BAT)を伴う仕向地主義キャッシュフロー法人税(DBCFT)を課すものです。これによって法人税率は35%から20%に低減し、米国のあらゆる輸出は免税となり、輸入には20%が課税されるようになります。米国から輸出をするSEMI会員にとっては大きな利益をもたらしますが、米国に装置や材料を輸入する会員にとっては困難が生じるでしょう。また、共和党案では設備投資の即時償却を許すと同時に、常に重要である研究開発税額控除も維持します。SEMIはSEMI会員に関係するあらゆる租税政策を詳細にモニターし続けます。米国内外のあらゆる地域の会員からの、本問題に関するご意見を歓迎しますので、ぜひお聞かせください。

 

このような継続的問題に取り組むため、SEMIはワシントンDCにアドボカシーチームを組織しています。こうしたSEMIの活動に関心のある会員企業の方はご連絡ください。

Taylor Sholler, senior manager, Public Policy
Eメール: tsholler@semi.org

(初出 SEMI Global Update 2017年3月14日)