SEMI通信 2016年10月号 Repo 1

未来自動車のゲームに参入する ?

自動車メーカーが抱える電子ユーザインターフェイスのギャップに注目

by Lux Research トニー・サン

 

運転者は未来の自動車をどのように操作するのか? 新しい電子ユーザインターフェイス(EUI)が車に採用される

高解像度のタッチスクリーンとハイディフィニションのサラウンドオーディオが、自動車の標準的なEUIとなりました。モバイルデバイスとIoTの革命は、新しいEUIのスタイルを生み出し、これを採用した自動車メーカーは、運転者と自動車のより自然な関係を実現しています。次の図では、自動車に導入されている運転者との新しいインターフェイスの概要を示しています。これには、タッチ(Touch)、ジェスチャー(Gesture)、視線(Eye)、顔認識(Facial expression)、表示(Display)、触覚(Haptics)が含まれます。また、それぞれの実現度(一般的、限定的、プロトタイプ段階)と、GUIを搭載するデバイスもまとめています。ただし、本稿からは、機械的なボタンやスイッチ、オーディオ、音声は除外しています。こうしたユーザインターフェイスには大きな変化はなく、また音声の統合は本稿でとりあげる他のEUI技術とは別の形で行われているからです。

新しいEUIの中には自動車(ダッシュボード、ステアリング、フロントガラス、シート)に組み込まれているものだけでなく、運転者が使用する電子デバイス(スマートメガネ、スマートウォッチ、モバイル機器)に組み込まれるものもあります。

  • 自動車の車内でイノベーションが発生している場所は、主にダッシュボードとステアリングになります。ジェスチャー、アイトラッキング(視線追跡)、触覚、顔認識は、高級車のダッシュボードに組み込まれ、一般的なタッチスクリーン式ユーザインターフェイスを強化しています。ジェスチャーによる制御は、BMW 7シリーズのような車種にはすでに搭載されていますが、2017年式フォルクスワーゲンe-Golfのなどのベーシックモデルにも今後は搭載されていきます。アイトラッキングは、ヘッドライトの方向のコントロールなどの能動的な機能に向けて、オペルが開発中です。ダッシュボードのスクリーンにおける触覚インターフェイスは、2013年式キャデラックXTSで最初に採用されました。顔認識もダッシュボードに組み込もうと開発が進められています。例えば、フォードとインテルの共同研究プロジェクトであるProject Mobiiでは、カメラを使って運転者が誰かを認識し、カレンダー、音楽、連絡先などをその人用に設定しようとしています。未来のステアリングは情報量が豊富で、タッチ、ディスプレイ、アイトラッキング、触覚のインターフェイスによって強化されていきます。トヨタの3代目プリウスは、ステアリングスイッチに「タッチトレーサー」を備えていて、ダッシュボードのディスプレイにどのスイッチを触っているかが表示されます。さらに、現代自動車のGenesis 5.0のステアリングには触覚インターフェイスがあり、車線を逸脱すると振動して運転者に警告します。キャデラックの2013年式XTSの場合、振動による警告は座席に搭載されていて、座席も触覚インターフェイスでは重要になります。フロントガラスには、まだイノベーションの余地が大幅に残されていますが、メルセデスベンツのCクラスのように、ヘッドアップディスプレイが組み込まれている車種もあります。
     
  • 運転者が所持するモバイル機器やウェアラブル機器もまた、運転者と自動車のインターフェイスとして働くことができます。スマートフォンは道路状況を表示するディスプレイとして使用されることが増えています。スマートウォッチは曲がり角の手前で振動して運転者に知らせますが、用途はナビゲーションに限られたものではありません。スマートメガネは、そのユニークな形状から開発者を魅了しています。ODGのスマートメガネRシリーズのカスタムバージョンは、BMW Miniとリンクしてディスプレイとして利用することもできます。

新型のEUIが自動車に導入される入口となるのは、自動車メーカーとEUI開発企業のパートナーシップですが、まだその例はあまりありません。

自動車メーカーはこれまで、制御やインフォテイメント関係では、一次請けサプライヤと仕事をしてきました。しかし、新型のEUIの登場により、自動車メーカーはEUI技術開発企業と直接かかわるようになったのです。次の図は知られている自動車メーカーとEUI技術開発企業のパートナーシップを示しています。

自動車の新たなEUIは誇大に宣伝されていますが、パートナーシップの状況は活発とはいえません。一般に発表されているパートナーシップはわずか12しかありません。さらに、EUIの開発企業はインテルやマイクロソフトのような企業か、あるいは2000年以前に設立された比較的成熟した企業(Seeing Machines、Immersion、ODG、Cybernet)しかありません。パートナーシップの全体数が少ないだけでなく、若い開発企業とのパートナーシップがないことは、自動車メーカーと若い開発企業の間にコミュニケーションがないことを示しています。こうしたパートナーシップの欠如を招いている要因のひとつは、EUI分野の細分化と進化のスピードです。このため、自動車メーカーがパートナーシップのターゲットを見つけにくくなっているのです。

パートナーとなるEUI開発企業を見つける

EUI開発企業はたくさんありますが、自動車メーカーが探すべきは2種類のパートナーです。

  • 車内のインターフェイスを強化するためには、自動車メーカーは、ひとつの技術から複数のスタイルのインターフェイスを提供できる開発企業を探すべきです。未来の自動車のキャビン設計は、様々なインターフェイスが搭載された複雑なものになります。ほとんどのEUI技術開発企業は、ひとつのインターフェイスのスタイルに特化していますから、未来のキャビンを設計するためには、複数の開発企業による複数の技術を統合する必要が生じます。ですから、様々なインターフェイスのスタイルをこなせる開発企業や技術を見つけることができれば、自動車の設計や技術の統合の複雑性を減らせることになります。その一例がAitoです。同社は感圧タッチパネルとしても、触覚フィードバックアクチュエータとしても使用できる圧電部品を提供しています。さらに、この技術でダッシュボードの機械的ボタンを置き換えることも計画しています。
     
  • 運転者が所持する電子機器を活用するために、自動車メーカーはコンシューマエレクトロニクスの車内利用を強化する技術を探すべきです。車内に搭載されたエレクトロニクスと運転者が所持するエレクトロニクスは未来の自動車では共存します。ですから、両者をシームレスに統合することが重要になります。溢れる量のスマートフォンやウェアラブルデバイスの増加によって、次世代エレクトロニクスは人々の生活とは切り離せなくなっています。しかし、これらの機器の機能は自動車用に最適化されているわけではありません。現時点では、多くの技術的ギャップや使いにくさが存在します。そのため、コンシューマエレクトロニクスと自動車の統合に興味を示す自動車メーカーが増加しています。モバイル機器やウェアラブル機器の車内での有用性を改善する技術は、これから価値が高まっていくでしょう。例えば、SenseDriverは、スマートフォンを使ったヘッドアップディスプレイを開発していますが、この種の製品の大きな課題となっている、周囲の光の状況にあわせて調整可能な反射板を備えています。

関係者は自動車メーカーとEUI開発企業の間にあるパートナーシップのギャップをよく検討し、自動車メーカーが開発サイクルを短縮し、ユーザーの期待に応え続けるためのサポートを提供するEUIパートナーを見つけるためのチャンスだと考えるべきです。

Lux Researchについて

Lux Researchは、新規技術に関する戦略提言や最新情報を提供するコンサルティング企業です。多数の企業・金融機関・政府のリーダーが、戦略決定に必要な情報の提供を同社に依頼しています。基礎研究に焦点を合わせた独自の調査アプローチや、世界規模の幅広いネットワークを通じて、同社はクライアントに、新技術分野への洞察とコネクション、競争優位性を提供します。詳しくはwww.luxresearchinc.comをご覧ください。

初出 SEMI Global Update 2016年9月13日号

 

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