SEMI通信 2016年8月号 Report 1

次世代量産プロセスにむけた装置部品を要因とする欠陥の対策

SEMI ポール・トリオ、Applied Seals NA ダリア・ヴァーニコフスキー

 

サブミクロンの世界で大きな問題となるもの

サブ10nmの大量生産を業界が目指す中で、製造装置の部品に起因する欠陥が及ぼす最終的なウェーハ品質や歩留り・製造コストへの影響に対する注目が高まっています。これは半導体製造サプライチェーン全体にとっての重大な問題として、業界の主要なプレイヤーが前競争領域で協力をして対処することが急務であり、今まさに求められているのです。

SEMIの重要部品に対する取り組み

これまで、各種の部品やサブコンポーネントの欠陥計測方法とその報告方法については業界内の調整がほとんどありませんでした。歩留りの変化が発生すると長期化し、サプライチェーンの分断によって解決が妨げられることが見受けられました。このプロセスは、ハイテク業界のものとしては原始的といわざるをえません。また、いくつかのスタンダードは存在するものの、それらは必ずしも最先端のプロセス制御の要求には対応できていません。

SCIS(Semiconductor Components, Instruments and Subsystems)は、SEMIの特定業界グループであり、以下のような業界の重要課題について、関係者の前競争領域における協力の場を提供しています。

  • 業界のパートナー間で次の取り決めをするための枠組みの提供
    • 特定のプロセスに関連した各種部品の測定可能な欠陥
    • 欠陥を測定するための標準テスト方法
    • テスト結果の一貫した報告方法
  • 部品のトレーサビリティプロセスにチアする業界スタンダードの適用
    • 標準フォーマットおよびプロトコルの定義
    • サプライヤー、装置メーカー、デバイスメーカー間のコミュニケーションの促進
    • 問題の診断および解決の効率化

SCISに参加する部品/サブコンポーネントサプライヤ、大手装置メーカー、デバイスメーカー、ファウンドリの意見に基づいて、以下のワーキンググループが編成され、プロセスに重大な影響を及ぼす様々な装置部品を担当しています。

 

 
図1 SCISのワーキンググループ

 

SCISの各ワーキンググループは、担当する部品が使用されるアプリケーションやプロセス分野を考慮しながら、その欠陥の要因となる性能パラメーターを明確にしました。

 

図2 欠陥に関連するパラメーター

 

SCISでは、挙げられた各パラメーターについて、測定・試験方法を開発します。このアプローチによって、各種部品やサブコンポーネントの欠陥への影響のベースラインが確定されます。テスト方法の開発が現在進められているのは、以下の重点分野です。

 

SCISグループパラメーター
シール洗浄および梱包
 シール力保持率
ガス供給金属汚染
炭化水素汚染
薬液供給パーティクル
金属汚染
バルブリーク率
動作中の清浄度
ドライポンプ到達圧力
排気スピード
チャンバ―部品シャワーヘッド
ペデスタル
RFRF電源の過渡応答
 RF電力供給システム
トレーサビリティ確認トレーサビリティ確認モデル

表1 SCICワーキンググループの重点分野

 

SCISグループの中には、今年5月のSEMI ASMCカンファレンスに合わせて開催された前回のSCIS会議で、暫定試験方法を発表したところもあります。さらに多くの試験方法が、SEMICON West 2016のSCIS会議(7月14日)で発表されることになるでしょう。

ガス供給システムの金属および炭化水素汚染

SCISガス供給グループは、金属および炭化水素汚染にフォーカスし、超高純度ガス供給部品および配管の接ガス表面の禁則組成評価の標準方法を規定しようとしています。Ultra Clean Technology(UCT)のマット・ミルバーン氏、Horibaのトロイ・フリーマンがリーダーを務めるこのグループは、ASMCの会議で暫定試験方法を発表しています。提案された仕様には、接ガス表面に存在する金属成分を抽出・測定する方法を詳細に規定しています。同グループはまた、炭化水素化合物についても試験方法を開発しました。グループはこれらの試験方法を梱包から取り出したそのままの部品やシステムに適用し、それによってこのアプローチを広く利用しやすくすることを目指しています。

 


図3 ガス供給システムの金属汚染に対する暫定試験方法(抜粋)

 

「これらの開発中の試験方法から期待されるのは、サプライヤーとユーザーの双方が共通した試験方法と評価の表現を参照できるようになることです。これによって、全ての関係者が試験結果と改良点に集中することができるようになります」と、リーダーのマット・ミルバーン氏は述べます。

RF過渡応答および電力供給システム

SCIS RFグループは、RF電源の過渡応答ならびにRF電力供給システムにフォーカスしています。すでにSEMIのRFに関する複数のスタンダードがRF製品やシステムに対する確固たる基盤を提供していますが、対象となる試験方法は業界からの最新の要求にあわせてアップデートする必要があります。例えば、SCIS RFグループはSEMI E135(半導体処理装置のRF電力供給システムの過渡応答を決定するためのRF発振器のテスト方法)にRF電源への動的不可条件を追加する改定案を開発しました。

SEMI E135は半導体製造装置に使用されるRF電源の過渡応答を測定するための標準試験方法を規定したものです。現行版の適用範囲は50Ωの定格負荷での試験に限定されており、静的条件を表しています。

半導体製造装置はRF電源に動的な不可を与えます。過渡応答を測定するための追加試験が、最悪条件でのシミュレーションのためには必須となります。2つの不可条件が提案されています。

 

図4 RF電源の過渡応答について最新の産業要求を反映

 

RFグループでは、RF電力供給システムの過渡条件についても、SEMI E113(半導体処理装置のRF電力供給システム用仕様)への改訂提案で対応する予定です。

SEMI E113は半導体製造装置に使用するRF電力供給使用を提供することで、システムおよびサブシステムの性能改善を導くことを目指した文書です。性能基準に加えて、システムあるいはサブシステム部品の供給時に提出する文書においても規定しています。その目標は、良好な特性のRF電力供給システムを製造するために必要な仕様を提供し、安定性、再現性や、重要な電気特性を運転エリア内で測定可能とすることです。

半導体製造装置はRF電力供給システムに動的な不可条件を与えますが、SEMI E113は過渡条件は扱っていません。このスタンダードで、試験する位相角と最少試験ポイント数を定義する必要があります。最終的に、試験データを収集し記録するための表を作成することも必要です。

シールの洗浄および梱包、ならびにシール力保持率

SCISシールグループは、SEMI F51(エラストメトリックシーリング技術に関するガイド)の大幅改定に、全有機炭素(TOC)、表面の抽出可能金属汚染、灰化による金属分析を盛り込み、その作業を一旦完了しています。これらの変更は、2015年11月に発行されたSEMI F51の改訂版により提供されています。

その後、シールグループはそのフォーカスを洗浄、梱包、ハンドリングにシフトしました。寸法精度や仕様に対するプロセスコントロールは確立されたものの、製造後のシールの洗浄、梱包、ハンドリングについての業界標準が存在していないためです。こうした製造の最終段階についての業界の整合性の欠如によって、ウェーハ製造工程に汚染がもたらされる場合があるのです。

提案には、パーフルオロ-エラストマーシールの取り扱い、ら辺リング、保存条件についての考察も含まれます。シールの情報を梱包ラベルにどのように表記するか、内袋と外袋のどちらにどんなラベル情報を添付するのかは、業界の整合が現在とられていません。シール製品情報(材料、寸法、製造日、発注情報等)はこうしたラベルに記載されているのが通常です。しかし、カスタマーに移転した後のシール性能を保障するための保存条件(冷却、乾燥、紫外線を避ける等)や使用期限においても検討する必要があります。最終的に、提案にはシールのハンドリング中ならびに梱包中の清浄度に対する推奨測定方法も含まれる予定です。Applied Seals NA、Greene Tweed、DuPont、Valquaの参加を得て、グループはSEMICON West 2016のSCIS会議で提案を発表する計画です。

 

図5 SCISシールグループが開発したシールの洗浄、ハンドリング、梱包に対するガイダンス

 

SCISシールグループは、シール力保持率の試験方法についても開発を計画しています。半導体産業ではこのようなスタンダードは存在しないため、グループでは宇宙産業に関連した文書について、規定の中に適用可能なものがあるかを検討しています。

部品のトレーサビリティモデルによる歩留り変動の改善

SCISトレーサビリティ検証グループは部品のトレーサビリティ改善にも取り組んでいます。これによって、問題診断の効率化と早期解決が可能になります。このグループは、重要な特性がクラウドアプリケーションで容易にアクセス可能な適合情報に対して制御されていることを保証するための実施モデルを開発しています。知的財産権は、アクセスレベルの事前承認によって担保されます。このモデルは全てのサプライヤーに責任を課しますが、同時に機密情報の漏えいがないことも補償します。

 

図6 トレーサビリティ検証情報の交換モデル

 

SEMI SCISからSEMIスタンダードへ

F51の改訂提案と同様に、SCISの各グループが開発した暫定試験方法は、最終的にSEMIスタンダード委員会へと提供されます。SCISの作業の移転の完了は、早ければ2016年秋の北米地区スタンダード会議となります。SCISの枠組みはその成果であるSEMIスタンダードと共に、業界が先端の微細化で要求される部品の清浄度、あるいは性能を達成するための助けとなるでしょう。

重要な業界イニシアチブ

次世代大量生産の課題への取組みには、業界関係者の協力が不可欠です。SCISは部品メーカー、サブコンポーネントメーカーを代表するものですが、この活動はサプライチェーンおよびエコシステムの全体に影響するものであり、装置メーカーやデバイスメーカー、ファウンドリにも対話に参加していただくことが重要となります。

SCISの共同チェアをつとめるAppliedSeals North Americaのダリア・ヴェルニコフスキー氏は次のように述べています。「協力という言葉は、誰でも口にする、おそらく業界で最も多用され、しかし最も活用されていない言葉でしょう。実際の行動、パラダイムシフトを引き起こす積極的な行動は、強力な意思と情熱、開かれた心、変化への切望から生まれるのです。こうした人々は、この言葉の本当の意味を達成し、最終的には業界を改革し、協力の意味を具現化するのです。」

SEMI SCISへの参加は、デバイスメーカー、装置メーカー、部品サプライヤのいずれにも同様に強力な価値提案をもたらします。

 

図7 SCISの価値提案

 

SEMI SCISスペシャル・インタレスト・グループ(特定業界グループ)は、全てのSEMI会員企業に門戸を開いています。SEMICON Westの後の会議予定は、9月のSEMI Strategic Materials Conferenceの直後に予定しています。会議はサンノゼのSEMI本部で開催されます。詳細についてはSEMIのポール・トリオ(Paul Trio)(ptrio@semi.org)までご連絡ください。

初出 SEMI Global Update 2016年7月12日号