SEMI通信 2016年6月号 SEMIスタンダード情報

酢酸蒸気への曝露による太陽電池セル耐性試験方法
(Test Method for Exposure Durability of PV Cells to Acetic Acid Vapor)
の標準化について


SEMIスタンダード 日本地区PV Materials技術委員会 共同委員長
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 
再生可能エネルギー研究センター 太陽光チーム 招聘研究員
金沢工業大学客員教授 福田哲生


全ての工業製品は、出荷前検査で合格しなければ販売できません。太陽光発電パネルも例外ではなく、このためには数年以上の長期的な屋外設置によって生じる経年劣化を短時間の屋内試験で再現できることが大変重要です。

この屋内試験は、パネルが実際に被る温度、湿度、荷重等をより苛酷な値に設定した環境下で行われるので、加速試験とも呼ばれIEC(International Electrotechnical Commission)によって標準化されています。

屋外設置後10~30年経過したパネルの解析によって、パネル内で生成される酢酸の量が設置期間にほぼ比例することが見出されています。またパネルを高温かつ高湿度に晒す加速試験によって、図1に示すように、試験時間の増大に伴い内部で生成される酢酸の量が増えること、およびそれと共にパネルの出力が低下することもわかってきました。図の横軸の1000、2000、・・・は試験時間(単位:アワー[ h ])を表します。屋外に何年も設置する時間に比べれば数1000時間は短いのですが、室内での検査時間としてはかなり長くメーカーには大きな負担です。

図1.パネルの出力(左縦軸)と内部で生成される酢酸量(右縦軸)の加速試験時間依存性(Masuda et al., 2014 EU-PVSEC).
図中の写真はパネル内のセルの観察結果.

以上のように、パネル内で長年の間に生成される酢酸が発電量の低下を引き起こすことが明らかになりましたので、我々はセルそのものを酢酸の蒸気に晒せば非常に短時間で耐性試験が行えるのではないかと考えました。その概要を図2に示します。数枚の太陽電池セルを、3%の酢酸を入れた湿度80%の容器に閉じ込めこれを85℃で保持します。数時間~数10時間後に取り出して種々の特性を測定すると、図3に示したように出力(Pmax)が10時間程度で落ち初め、図1の試験方法による劣化開始時間(1000時間以上)と比べて約1/100以下です。しかも試験方法は図2からわかるように極めてシンプルであり、試験コストの大幅な削減になります。

 

図2.セルを酢酸蒸気に晒す実験の概要図

図3.太陽電池セルを酢酸蒸気に晒す実験での劣化の様子

そこで、SEMIスタンダード日本地区PV Materials技術委員会傘下のPV Materials タスクフォースでは、本方法を標準化すれば、すべての太陽電池メーカーやその部材メーカーが、共通かつ低コストで試験ができるので、業界にとってメリットが非常に大きいと考え、2016年2月より、本方法の国際標準化を目指した活動を開始しました(文書番号6016)。

現在は標準化文書(案)を作成中であり、今後議論を重ね、今秋、グローバルな電子投票にかける予定です。太陽電池セルの性能試験コストを大幅に低減できる本方法の標準化にどうぞご期待下さい。

以上