SEMI通信 2016年6月号 Report 2

アナログIC/MEMS/センサ市場とサプライチェーンのビジネス機会

 

SEMI デボラ・フォーグラー

 

スマートフォンなどの携帯機器が求める電力マネージメントの効率化が、アナログIC市場をけん引しています。また、この成長に拍車をかけているのが、IoTと、それを実現するMEMS/センサデバイスです。MEMS/センサなどアナログ分野でのサプライチェーンのチャンスを探求するため、SEMIはSEMICON West 2016で、アナログおよびニュー・フロンティアというプログラムを実施します。これはExtended Supply Chain Forumの4つの異なるサプライチェーンのテーマを取り上げるセッションのひとつとなります。講演者の一人、InvenSenseのアドバンスト・テクノロジー担当シニア・ディレクタ、ピーター・ハートウェル博士に、事前インタビューをして、MEMS/センサメーカーが直面するサプライチェーンの課題について刺激的な見解をお聞きしました。

MEMS/センサメーカーが直面する課題の中でも、最重要となるのが、センサのコモディティ化と利益の行方でしょう。ハートウェル氏は「大儲けするのは、頂上でアプリケーションを提供する人々です。特に、モバイル機器やIoTです」と述べます。しかし、それに従属する階層、つまりIoTを作り出すシステムやデバイスを提供する企業が利益を得る構造でないとイノベーションは頭打ちになるだろうとも予告しました。「テクノロジを前進させるためには資金が必要なのです。ですから、当社はセンサメーカーとして、バリューチェーンを上へと昇る方法を模索し、利益のいくらかを引き出そうとしているのです。」

バリューチェーンを上へと昇るために、センサメーカーはシステム的な考え方を強める必要があります。設計の収束は、そのひとつの解です。「当社では設計の収束を、SiP(システム・イン・パッケージ)またはSoC(システム・オン・チップ)として考えています。自社のセンサを他の機能と組み合わせることをはじめます。それは、パッケージの中にプロセッサを取り込む場合もありますし、一緒に別の種類のセンサを使用することを検討する場合もあります」

ハートウェル氏は、シングルチップのIoTデバイス、つまり、センサ、メモリ、無線、電力制御、さらにはエネルギーハーベストまでが組み込まれたワンチップデバイスが登場する日について考えを巡らせ、「恐らくは、そこが収束のいきつく処になるのでしょう」と述べます。しかし、結局は、サプライチェーンの末端まで、いかに利益をいきわたらせられるかが課題となります。「当社は、このようなシステムを設計し、そのために何が必要であるかの理解を深めることを通じて、利益がある場所へと少しずつ近づいているのです。」

MEMS/センサのファブレスモデル

コモディティ化という難問に加え、ハートウェル氏は、MEMS/センサ業界が真のファブレス・ビジネス・モデルを採用することができるかという、あらたに浮上している命題にも言及しました。このビジネス・モデルは、他社が提供するプロセスを使って、デバイスの設計だけを行う企業をベースにしたものです。この筋書きで、MEMS/センサ企業は自社製品を差別化可能かどうかが根本的な問題であるとハートウェル氏は主張しています。

ハートウェル氏は、InvenSenseがファブレス・モデルを採用していることにも言及しました。同社はTSMCおよびGLOBALFOUNDRIESを提携ファウンドリとしたシャトルプログラムを提供しています。InvenSense Shuttleは、MEMS開発技術者に同社が特許を持つInvensense Fabrication MEMS-CMOS集積プラットフォームで、自身の設計したデバイスを製造することができます。競合がこれを利用することはできませんが、大学やスタートアップのパートナー企業には提供されています。とはいうものの、ハートウェル氏は同社がこのカードの使い方には慎重であると述べます。「ファブやファウンダリは、可能な限りプロセスを標準化してプロセス開発コストを圧縮しようとするのが常ですから、このモデルを公開した場合に、差別化を維持できるかが問題になるのです。」

ハートウェル氏はこのようにも述べます。「ファウンドリがセンサメーカーに何をすべきかを指示する時代が来るのでしょうか。EDA企業はそれを望んでいるでしょう。そうなれば、デザインツールやシミュレータの標準化も可能となるのですから。」

テストおよびデジタルインタフェースのビジネス・チャンス

テストおよびパッケージング分野でも、サプライチェーンにとってのビジネス機会が生まれるでしょう。ハートウェル氏は、ほとんどのMEMS/センサメーカーが、内製テスト装置を使って社内でテストをしていると指摘します。「私たちは、これを差別化の要因としており、手放そうとは考えてもみませんでした。ですから、誰かがやってきてこれまでの習わしをひっくり返すチャンスがあるのです。」

マルチチップで構成されたシステムと交信するセンサが急速に増殖したことで、接続に必要なピン数が増大することが問題になっています。業界はすでにセンサにデジタルインタフェースを利用するソリューションを用意していますが、インタフェースを強固なものにするための追加の作業が必要となります。ハートウェル氏によると、複数のインタラプトとデジタルラインが必要となりますが、5個、6個、7個と、システム内のセンサ数が増えてくると、これが複雑なものになります。ハートウェル氏は「ピン数が足らないのです。ですから、配線方法の変更を求めており、集積化の問題を解決する上で、インタフェースの刷新が重要になっているのです。」と述べます。また、IoTの特質として、サイズ、コスト、消費電力、パフォーマンスの4つを挙げ、「IoTを実現するためには、1兆個のセンサに到達するためのブレークスルー技術が必要です。サイズ、コスト、消費電力を小さくし、パフォーマンスを挙げなければなりません。場合によっては一桁から二桁の縮小が求められるでしょう。」

パッケージングのコスト削減(またはパッケージをなくす)

ハートウェル氏はMEMSパッケージのサイズおよびコストへの取組みについては、率直に「サイズとコストを削減する最大のチャンスがここにあります」と述べました。「トランスデューサに対するパッケージングの影響は無視できません。パッケージングによって、サイズもパフォーマンスも左右されますが、コストはかけたくないのです。ここには巨大な変化のチャンスがあります。」

ハートウェル氏にとって、問題の核心となるのは、6軸センサシステムのシリコンチップを切り出し、テスト、調整した後に出荷し、ついに何らかのシステムに組み込んだときに、調整が保たれたままにすることです。チップスケール・パッケージングがMEMS業界にとってのビジネス・チャンスとなるかもしれませんが、ハートウェル氏は選択を狭めず、パラダイムシフトの余地を残すことを望んでいます。

MEMS/センサ分野では、サプライチェーンにビジネス・チャンスが豊富に存在するということです。コストとサイズの削減、テストのソリューション、パッケージングの削減、さらには部品のハンドリング、組み立ての新手法まで、それは様々です。

さらなる情報を提供するSEMICON WestのAnalog and New Frontiers Forum(Extended Supply Chain Forumのセッション)にご参加ください。7月13日(火)にキーノート・ステージで開催されます。ぜひ上記リンクから最新のスピーカー情報をご確認ください。

(初出 SEMI Global Update 4月26日号)