SEMI通信 2013年2月号 記事2

セミコン・ジャパン2012 報告

オープニングキーノート: トップエグゼクティブが描く半導体産業の成長戦略

セミコン・ジャパンの初日を飾るオープニングキーノートでは、世界の半導体産業を代表するトップエグゼクティブ4名が、持続的成長を見据えて潜在する新たなニーズや、産業を牽引するアプリケーション、そして技術革新について展望し、産業全体の成長戦略を発表しました。会場は400名を超える参加者であふれ、講演に寄せる関心の高さを物語っていました。

東芝の半導体およびストレージ事業戦略と日本半導体産業の再生
(株)東芝代表執行役副社長  齋藤昇三

東芝 齋藤昇三氏まずはじめに、日本を代表する半導体メーカー(株)東芝の齋藤副社長が、半導体とストレージをひとつのカンパニーで擁する強みを生かしてイノベーションを展開する企業として、日本の半導体産業再生に必要なビジネスモデルについて講演を行いました。

齋藤氏はチャールズ・ダーウィン著「種の起源」の言葉を引用し、環境が著しく変化する中でも自らの道を切り開き、持続的成長を実現していこうとする東芝の取組みについて言及しました。

円高、電力などのコスト高で海外企業との厳しい競争を強いられる中、国際競争力をつけるうえでも、事業基盤を強化する必要があると述べました。「その対策として、東芝では国内の製造拠点を集約し、コスト力を回復させて構造改革を前進させた」。そして更なる成長路線へ移行するための取組みとして、スマートコニュニティ社会へのアプローチを2つ挙げました。

ひとつ目はストレージ・イノベーション。情報量の多いビッグデータをいかに処理し、セキュリティの高いデータとして確保していくか。2つ目はトータルエネルギー・イノベーション。「電力コストなどのエネルギー問題がある中、電力の安定化と効率化に注力していきたい」と述べました。

また、最近注目されている450mmについても言及し、「見える化とスループット向上の両輪で、現状の300mmの生産効率をさらに向上させていきたい」と語りました。

新しい技術の開発を進めていくうえで、装置だけではなくインフラの整備の重要性にも言及し、パートナーやサプライヤーなどとのコラボレーションがいかに重要であるかについて述べました。さらに、パートナーとともにイノベーションを起こし、スマートコミュニティ社会の発展に貢献したいとして、講演を締め括りました。

Silicon Innovation For The Bright Future
インテル(株)代表取締役社長  吉田和正

インテル 吉田和正氏続いて、インテル(株)の吉田社長が、スマートフォンやタブレット、ノートブックPCなどのモバイル機器によってもたらされる市場機会と、将来の半導体需要を満たすための課題や将来展望について解説しました。

世界半導体市場統計(WSTS)の2020年までの半導体販売予測は、右肩上りで伸びていくと予想されています。この長期的な成長を見据えてキャパシティプランニングを行い、需要増を見込んだキャパシティ投資を積極的に行っていきたいと述べました。

また、ムーアの法則がもたらしたエコノッミクインパクトの重要性を強調し、「来年には14nm、またその後は10nm、7nmとムーアの法則を継続していきたい」とアピールし、そのためにも、各社との協業が、イノベーションを起こしていくために非常に重要であると語りました。「世界中に工場を持っているインテルでさえ、1社でイノベーションを維持していくのが難しい時代になってきている。今こそ業界が協業し、サプライヤーとともに効率の良いイノベーションを起こしていきたい」。

さらに、450mmについての報告として、日本(筑波)に450mmの半導体装置開発をサポートするJMC(Japan Metrology Center)を立ち上げたことを発表しました。「このセンターでは、移行をサポートするために、ウェーハの測定を短時間で行うサービスを提供し、装置開発のスピード加速と効率化アップに貢献したいと考えている」。またもうひとつの開発拠点として、ニューヨークにあるG450Cについても触れ、450mm移行のチャレンジへの意気込みを述べました。

日本は、少子化の問題、高齢化社会の支援、国際競争力など、多くの課題を抱える課題先進国として、情報通信技術の利活用や知恵とチームワークで、解決方法や解決の糸口を示すことが“Bright Future”に近づく一歩であると熱く語りました。

最後に、「ひとり一人が作り出すイノベーションや半導体技術で、どういう問題が解決できるのか、何が実現できるのか、使う人にとっての付加価値を考えることこそが、ナンバーワンのソリューションサービスに繋がる」と述べ、社会への貢献に目を向けた視点がこれからのビジネスの成長に非常に重要であると、力強い言葉で締め括りました。

All Programmable 3D IC Integration: Leaping A Generation Ahead of Moore’s Law
Xilinx, Senior Vice President, Worldwide Quality & New Product Introductions, Executive Leader, Asia Pacific, Vincent Tong

Xilinx Vincent Tong氏続いて登壇したXilinxのVincent Tong氏は、同社のAll Programmable FPGAおよび第二世代3D ICがもたらすイノベーションについて講演しました。

「FPGAは、製造後に購入者が現場で適切なアプリケーションにプログラミングすることが可能な集積回路であり、ワイヤレスの基地局やネットワークルーター、フラットパネルTV、監視カメラや超音波機器など、あらゆる場面での需要が期待されている。現在20nmの量産開始を目指しているが、ムーアの法則を継続するには、技術的な障害や膨らみ続ける製造コストといった課題に取り組まなくてはならない。このムーアの法則を継続しイノベーションを遂げるためのひとつの鍵が3DIC技術であり、Xilinxは業界初の3DICパイロット開発を行った実績を誇っている」。3DIC開発の大きな原動力は、インターネットなど大容量データの送受信に必要な帯域幅の需要や、大容量データを短時間で処理するための需要によるところが大きいと述べました。

そしてI/O速度の課題を例に挙げ、「ムーアの法則により集積密度は2年に1度倍増しているが、I/Oの速度がそれに追従できていない。2020年にはI/O対ロジック比が15倍低下すると予想されている。より多くのロジックが搭載できるようになってきているが、このようなデータのインプット、アウトプットの課題が残っている。この課題にどう対応していくかが大きな問題だ」と指摘しました。しかし、こういった帯域幅の制限、コスト、I/O、パワーの問題などの技術的課題に対して、「3DIC技術はその解決策になりうる」と力強く語りました。そして同社の3D FPGAのロジックについて説明を行い、3D技術を用いることで消費電力の低減と帯域幅の拡大が実現でき、さらにはコスト面でも大きなメリットがあると、3DIC技術のポテンシャルをアピールしました。

また、20nmプロセス開発でもXilinxは第1戦を走ってくと述べ、「ザイリンクスの第二世代3D IC には、ホモジニアス(同じ種類のダイ)とヘテロジニアス(異なる種類のダイ)の両方の構成が用意されている。これにより、消費電力、そしてコストの要件を満たすシステム統合が可能になる」と説明を行いました。最後は、「さまざまなパートナーとともに、より最適な統合を目指して、今後も3DIC技術の開発を進めていきたい」として、講演を締め括りました。

An Ecosystem for Innovation
TSMC, Vice President, R &D Design & Technology Platform, Cliff Hou

TSMC Cliff Hou氏最後に、TSMCのCliff Hou氏が登壇し、エコシステムという協業の仕組みを利用して、いかに技術革新を行おうとしているのかについて、同社の戦略を語りました。

まずCliff氏が示したのは、未来の私たちの生活でした。「私たちは今後ますます、どんな場所でも相互にいろいろなものと繋がるようになる。バーチャルリアリティや高度なグラフィックの技術が進み、コンピューターにはより高い能力が要求される。信頼性、パフォーマンス、帯域、デザインなど、システムに対して人々の望む要件も増える一方である」。

続いて、Cliff氏はTSMCのテクノロジーロードマップを示しました。「現状20nmでは、2013年の第1四半期に量産を開始する。そしてこの先は、16nmのFinFETに移行していく予定である。これは6-9ヵ月で移行していく。2013年末には、実際の量産体制に入れる状態になっているだろう。通常の世代交代には約2年を要するが、16nm FinFETに関しては20nmと後工程がほとんど同じであるため、約1年で実現できると期待している」とし、20nmと比較し、16nmは同じ電力でパフォーマンスが20-25%向上、同じパフォーマンスで消費電力は35%減少の効果があると説明しました。

また、さまざまな要件ニーズを満たしていくために、テクノロジーだけではなく、これまでのビジネスモデルを変えていく必要性について言及しました。「これからはより高度なエコシステムが求められる。エコシステムとは、お客様とパートナーとより密接にかかわり合い、組織の枠を超えて協業し、お互いの技術や強みを生かして利益を生み出していく共存の仕組みである。お客様やパートナーに早い段階で情報を開示し、早期に関与していくことが、何より重要なことである」と指摘しました。

「例えば、16nm FinFETなどのプロセス定義の正確性を、きちんと確認したうえで先に進める。デザインルールやさまざまな定義などを、お客様やパートナーになるべく早い段階で開示する。重要な量産に入る前にアイデアを持ち込んで話をすることが重要。そうすることで後戻りや不要なロスを防ぎ、製品開発にかける時間の短縮化が実現できるのだ。それがなければ、パートナー企業が持つ技術とお客様が持っているアイデア、その2つが繋がらないという事態に陥ってしまう」「研究開発費に関して、TSMCだけでは年間11億ドルだか、お客様の研究開発費を含めると年間120億ドルは費やしている。研究開発投資は今後もますます増えていくだろう。このように業界でもトップクラスの研究開発費を投資し、お客様と緊密に、ともに繁栄し成長していけるのだ」とエコシステムの強みを語りました。

今後もお客様やパートナーと協業することで、技術革新の可能性を最大限に引き出し、顧客のニーズを満たしていきたいと述べ、講演の最後を締め括りました。

(初出 SEMI News 2013年1-3月号)