SEMI通信 2013年1月号 記事2
III-V族半導体と欧州環境安全規則 ― その産業への影響は?
SEMI Europe パブリックポリシー担当ディレクタ Rania Georgoutsakou
欧州連合(EU)の環境安全規制が半導体産業に及ぶ可能性が、現実のものとなりました。III-V族半導体が危険物質に分類される検討が始まったのです。半導体業界は次の3つを立証しなければなりません。
- III-V族半導体は不可欠な物質であり、現在その代替物質がない。
- 半導体業界はIII-V族半導体の使用に固有のリスクを認識している。
- そのリスクは、厳格な基準に基づいて管理し、基準は定期的に見直されている。
欧州環境安全プロセスにおけるIII-V族半導体の取り扱い
欧州環境安全規則は、大変複雑なことで知られています。たくさんの規制が存在し、さまざまな物質が常に見直しの対象となっており、そのための一連の義務がメーカーは果たさなければなりません。こうした規制に対応するには、多くのスタッフがフルタイムで働かなければならないでしょう。そこで本稿では、欧州におけるIII-V族半導体の置かれた状況のあらましを取りまとめます。
現在のところ、ヒ化ガリウム(GaAs)およびリン化インジウム(InP)の2種類のIII-V族半導体が、欧州のCLP規則(化学物質の分類、表示、包装に関する規則)に対して評価中で、発がん性、変異原性および生殖毒性(CMR)に分類されようとしています。これに分類されると、高懸念物質(SVHC)リストの候補として、REACH規則による制限や認可の対象となる可能性が生じ、場合によっては完全な禁止までありうることになります。
要約すると、III-V族半導体の2つの化合物に対する、使用制限あるいは全面的禁止の可能性のあるプロセスが始まったということです。
重要実現技術の基盤となるIII-V族半導体
重要実現技術(KET)は、欧州産業政策の6つの優先事項のひとつとなっており、同時に欧州の研究革新戦略においても重視されています。ですから、欧州は半導体産業の技術と開発政策が、その分野における技術革新と成長の促進に資することを明確に認めています。
半導体産業にとって、III-V族半導体は、製品やアプリケーションの小型化、高速化、効率化にとって欠かせない材料です。今、私たちがやらなければならないことは、このメッセージを加盟国省庁とEU諸機関に伝達し、半導体産業がすでに実施している方法を知ってもらい、そして作業者、消費者、環境の安全確保のために継続的改善に努めることです。
対象となるIII-V族半導体がまだ分類中で、その先の環境安全プロセスの筋道がまだ不明で多くの要因に左右されていた時は時期尚早でしたが、今は、これら化合物が半導体産業でどのように使用され、なぜ重要であり、どんなリスク管理がとられているか、説明を開始すべき時です。
SOITECのパートナーシップ担当ディレクタであるNelly Kernevez氏は、SEMIに参画して、半導体産業のIII-V族半導体使用に対する欧州および加盟国政策決定者の関心を高める活動をおこなっています。2012年11月30日にも、ブリュッセルにおいて、企業政策専門家会議(EPG)REACHサブグループなど、加盟国の産業政策機関の代表者に向けて、III-V族半導体の戦略的重要性と使用されている最終製品について説明をしました。SEMI会員企業は、III-V族半導体がEU環境安全規則によって制限されることの影響を懸念しています。それは欧州半導体産業に限られたことではなく、欧州全体の成長戦略に係ることなのです。
欧州の競争力におけるIII-V族半導体の重要性
III-V族半導体は欧州のKET、つまり、気候変動、エネルギー効率、高齢化社会といった社会変化に取り組むための、そして経済成長と競争力にも資する諸技術に欠かせない材料です。III-V族半導体の特性は代替がききません。これなしでは、スピードと効率、そして技術革新の可能性が犠牲になってしまいます。
その一方、半導体産業は、ある種の物質にともなうリスクについて十分認識をしています。業界が、長年にわたり環境安全規格の開発を続けているのは、そのためです。SEMIなどの協会における規格開発の場では、競合他社と作業をする懸念を棚上げして、リスク管理規格の検討に協力しあうのです。こうした物質は、封止されており、また不活性ですので、消費者が晒されることはありません。業界は力をあわせて有害物質の安全な廃棄や処理に関する欧州他の規則を遵守しています。リスクは認識され、責任をもって管理されています。
これは、成長促進と高水準な安全性を天秤にかけて、一方を選ぶということではありません。半導体産業はすでにリスクを管理しており、III-V族半導体の使用を制限したり禁止したりする必要はないのです。
SEMIは今後もこの分野の動向をモニターし、III-V族半導体の使用とリスク管理規格が整っていることをへの関心を高めるため、会員とともに活動を続けます。詳しくは、SEMI Euope パブリックポリシー担当ディレクタ Ourania Georgoutsakouまでお問い合わせください(gourania@semi.org)。
(初出 SEMI Global Update ヨーロッパ版 2012年12月号)
