SEMI通信 2012年7月号 記事1
450mmウェーハ移行: サプライチェーンへの影響をSEMICON Westで議論
ニューヨークのパイロットライン計画の進捗、また大手チップメーカーの450mmへの取り組み拡大に伴い、半導体産業のさらなる大口径化についての議論は、その移行がいつどのように行われるかという難解な質問へと進んでいます。450mmウェーハ製造実現の鍵となるのは、450mmパイロットラインさらには量産ラインに不可欠な装置やテクノロジーを提供するために、主要装置メーカーが重要なサブシステムや部品をサプライヤから入手できるかという問題です。SEMICON West 450 Supply Chain Forumでは、会場からあふれるほどの聴衆が、装置、サブシステム、材料サプライヤにとっての重要な影響とチャンスは何であるか、東京エレクトロン、Applied Materials、Lam Research、他の発言に耳を澄ましました。また、Intelの450mmプログラム・ディレクタ Ron Rinfret氏、Global 450 Consortium(G450C)のジェネラル・マネージャ Michael Liehr氏からは、450mmの最新開発状況について、アップデートが提供されました。
450mmについてのこれまでの議論の多くは、研究開発コスト、G450Cパイロットラインへの参加条件、そして450mm実現でのスタート失敗を防ぐうえで必要不可欠な業界全体での量産導入調整に向けられていました。しかし、今回の450 Supply Chain Forumの主目的は、この大きな業界の移行により、主要なサプライヤが受けるであろう影響と、どのようにしてこれを利益に結びつけられるか、という点に光を当てることです。このチャレンジの複雑さを示す一例として、ASMLの部品およびサブシステムの90%以上が社外のサプライヤから供給されていることが挙げられます。また、Applied Materialsは世界の800社にものぼるサプライヤから調達し、その内、75社の戦略的サプライヤから、年間の調達額の80%を購入しています。
SEMICON Westの期間中に、Intel Corporationは、ASMLの株購入に40億ドル以上を支払い、450mmシステムの研究開発に資金提供することで、サプライチェーンの450mmに対する準備に新たな力を加えることを発表しました。ASMLとの取引の発表の中で、IntelのCOO ブライアン・クルザニッチ氏は「ウェーハが次のサイズに移行するたびに、これまで30~40%のダイコスト削減がもたらされてきました。これを短期間で行えば、それだけ生産性向上の利益もはやく得られるのです」と述べています。この決定は、ウェーハ大口径化をスムーズに移行させるために、チップメーカーが他にも戦略的な投資をサプライヤに行うのではないか、との憶測を広げることになりました。
SEMIの半導体ビジネスユニットのプレジデント Jonathan Davisは、このセッションの開始にあたって、プログラムの内容と目的を紹介し、「半導体産業の成功と進歩は、微細化が主な源泉となってきました。微細化は、製品開発の目標と目的を理解した世界的かつ多様なサプライチェーンが常に取り組んでいる課題です。ウェーハの大口径化は、これに比べて一時的イベントであり、しばしば論争と混乱をともないます。協力的ビジネスモデルや、業界標準規格、そしてオープンな対話を通じて、私たちは混乱を鎮め、関係者すべてにとっての成功の可能性を高めることができるのです」と述べました。
Lam Researchの450mmプログラム担当副社長 Mark Fissel氏は、Lamが「業界が必要とするときに装置を供給する」ことを確認しましたが、業界全体がアグレッシブなタイムラインに合わせるために追いつめられることになるだろうと示唆もしました。Fissel氏は過去の大口径化と対比させて述べます。300mm移行に際して「人々はコストと投資利益への懸念を主張しましたが、賢明な人や企業は問題を切り抜ける方法を見つけるだろうと分かっていました」。今回の移行についてFissel氏は、業界のチャレンジは、はるかに複雑で不確実なものだと指摘します。顧客の数は減り、サプライヤは300mmと450mmの両方のコストのかかかる開発に投資しなければなりません。テストウェーハはま不足しており、研究開発に不可欠な本物のEUVが利用できるようになるのはまだ将来です。同時に、パイロットラインおよび装置評価にむけた標準規格や業界コンソーシアムに対して、業界は「ずっと冷静な」立場をとっています。
Fissel氏は「全体の時間枠を決めて」その中でサプライチェーンの開発活動を集中することで、2年間に最適化することができると提案しました。集中し固定した時間枠をEUVに設けることで、コストを削減し、300mm/450mm研究開発の重複を減らし、スタート失敗のリスクを減らすことができるのです。「微妙なバランス」が適切な資金調達、タイミング、量産計画には大切です。
Applied MaterialsのKirk Hasserjian氏は、移行が成功するための要素として、次の事項をあげました。
- 移行の同時進行
- リソグラフィの実用化
- 研究開発費のジレンマの解決
- 協力方法の改善と拡張
- 技術革新の継続
- サプライチェーンの準備
Hasserjian氏は、研究開発費の資金問題が(ASMLはおそらく例外として)まだ未解決であることを強調しました。現在のウェーハファブ装置の研究開発費は年間50億ドル前後ですが、これが2016年には120~130億ドルまで跳ね上がることが考えられます。450mm生産ライン用に製品をリエンジニアリングする必要に加えて、300mmでは3種類のノードで複雑な開発(トランジスタデザイン、インターコネクト、ウェーハレベルパッケージング、微細化)を進めなければならないからです。このような劇的な研究開発資金を、売り上げが横ばいの産業がどのように捻出できるのでしょうか。Hasserjian氏は、G450Cは素晴らしいスタートだが、それだけでは不十分だと言います。業界および政府によるコスト分担を推し進めることは不可欠であり、またさらなる共同活動も必要となるでしょう。
Applied Materialsのサプライチェーンについては、「重大な影響があるだろう」とHasserjian氏は述べました。Applied Materialsは、同社の全製品ラインに対応し、有意な研究開発に必要なリソースを備え、これからの業界の経済状態を生き抜き、リスクをとれるだけの資金力のあるサプライヤを求めることになるでしょう。同社はさらなる業界の整理統合を予測しており、そのサプライヤとの戦略的パートナーシップを深めようとしています。
東京エレクトロンの関口章久氏は、450mmへの移行を「10年に一度の変曲点」と呼びました。Applied Materialsの移行成功のための要素に同意をした関口氏は、ゲートあたりのコストが、90nm、65nm、45nmの各ノードでは40%程度下がっているのに対し、22nmではコストアップに転じることを指摘し、この技術開発の困難を強調しました。「DRAMもフラッシュもロジックも、どれもが技術的な壁に突き当たっています」と関口氏は言います。次々と続く微細化へのチャレンジは、450mmに移行しても終わることはありません。東京エレクトロンのロードマップをさらに複雑にしているのが、顧客の450mm装置に対する要求が依然として不明確だという事実です。300mmからの単純なスケールアップなのでしょうか、あるいは300mmへの移行に際して明らかになったように、新たな特徴や構造が求められるのでしょうか。重大発表として、関口氏は、東京エレクトロンが450mm時代に向けてマルチチャンバの「オープンプラットフォーム」モジュール式ファブ装置を開発すると述べました。このプラットフォームは、他の装置メーカーにも利用できる可能性があります。
プログラムの最初の講演では、Intelの450mmプログラム・ディレクタRon Rinfret氏、G450Cジェネラル・マネージャ Michael Liehr氏から、大口径化の目標と目的の再確認と、G450Cの状況と計画の概略が伝えられました。現在、11台の装置がアルバニーにあり、年内に5台が追加される予定です。来年は装置の設置が急増することが予想されます。両講演者のキーとなるメッセージは同じでしたが、G450Cの日程についてはそれぞれの用語や定義に重大な差異があり、装置メーカーが新たな展望のなかで交渉することの困難さがよくわかりました。G450Cの外で、チップメーカーとの個別交渉が、パイロットラインと量産ラインのロードマップについて同時進行しており、そのことが計画決定を一層複雑なものとしているのです。
主要装置メーカーとの交渉が継続し、450mm装置のための、新しいビジネスモデルと官民資金が発達するにつれ、サブシステム、部品、材料等の重要な役割を担うサプライヤにも、投資や製品計画の難しい判断を熟慮する必要が増大してゆくでしょう。事実、困難なリスク計算や条件は、次第にサプライチェーンへ委ねられつつあるのです。東京エレクトロンの関口氏が述べたように、450mmは「危険もあるがチャンスでもある」のです。
次回の450mm Supply Chain Forumは、SEMICON Taiwan(2012年9月5-7日)で開催されます。詳細は、www.semicontaiwan.org をご覧ください。
(本稿はSEMI Webサイトに7月21日に掲載された記事の抄訳です。〈原文リンク〉)
