SEMI通信 2012年5月号 記事1
高輝度LEDは新基板材料、自動化、歩留り改善で照明市場へ向かう
SEMIエマージング市場担当 ポーラ・ドー
LED工場の稼働率が再び高まってきました。台湾では70%~90%まで回復しています。各社はTVバックライト需要がけん引して、あと1~2か月で100%近くに戻ることを期待いるとYole Developpementのシニアアナリスト、エリック・ヴィレ氏はレポートしています。アジアメーカー各社は一般照明の需要も上向いていると考えており、白熱電球の置き換えを中心とする一般照明市場が、年末までに自社の売上げの10~30%となると予測しています。「LED照明は一般的になる前から、すでにコモディティ化がはじまっている。多数のLED電球メーカーが乱立し過当競争になっているが、品質が良いものは限られているので価格は急速に下落し、利幅はどんどん狭まっている」とヴィレ氏は言います。

「LED電球はコモディティ化しており、コモディティ市場では、コスト構造を下げられたものが勝つ。コストを下げる点で最も重要になるのは歩留りだ」とCanaccord Genuityの照明・太陽光部門株式調査責任者であるジェド・ドースハイマー氏述べます。LED産業では最高でも歩留りは75~80%程度しかなく、大半が50%前後ですから、改善の余地は大いにあります。特にポストエピプロセスの自動化を中心に、半導体製造式の自動化、ステッパの活用や、リフトオフ、ダイシング、ソーティングの各プロセスの改善が考えられます。昨年の50%もの価格下落は関係者の関心をコスト構造に集中させる結果となり、BEOLプロセスの自動化への投資を加速しています。
LEDパッケージの価格・性能ロードマップ
| 2011 | 2013 | 2015 | 2020 | 目標 | |
| 寒色系白色LED 効率 (lm/W) | 135 | 164 | 190 | 235 | 266 |
| 寒色系白色LED 価格 ($/klm) | 9 | 4 | 2 | 0.7 | 0.5 |
| 暖色系白色LED 効率 (lm/W) | 98 | 129 | 162 | 224 | 266 |
| 暖色系白色LED 価格 ($/klm) | 12.5 | 5.1 | 2.3 | 0.7 | 0.5 |
LED照明のコストと効率は近年目覚ましく改善されていますが、米国エネルギー省がまとめた産業ロードマップが求める、広範な普及の条件となる出力ルーメンあたりの目標価格を達成するには、まだまだ大きな技術革新が必要です。ロードマップでは、暖色系白色LEDパッケージについて、2015年までに2.3ドル/キロルーメンという目標価格に向けて、昨年12.5ドル/キロルーメンであった価格を、来年5.1ドル/キロルーメンまで引き下げる設定となっています。
注記: 寒色系白色LEDパッケージは、相対色温度=4746~7040K、演色指数=70~80を想定、暖色系白色LEDパッケージは、相対色温度=2580~3710K、演色指数=80~90を想定しています。発光効率は、温度25°C、駆動電流密度35A/cm2での計測を想定しています。LEDパッケージ寿命は約5万時間です。(出典: US DOE Solid State Lighting R&D Multiyear Program Plan, April 2012)
基板材料の選択が歩留りを大きく左右することは当然ですが、均一なGaN基板は高価であっても、欠陥密度が小さく高歩留りが期待できるので、結果的に低コストな選択となる可能性があるとドースハイマー氏は主張します。シリコン基板は低コストな選択肢のようにも見えますが、仮に完全に減価償却済みの装置を使用して、通常20%程度の設備投資をゼロにし、また通常15%程度の基板コストも低価格な基板でゼロになるとしても、GaN-on-Si基板は歩留りが低く、サファイアやSiC基板よりも高コストになるかもしれません。
GaN-on-Si基板の可能性
シリコン上に作られたLEDデバイスの性能が、これまでのサファイア基板のデバイスと同等になる可能性が見えてきたと、ヴィレ氏はレポートしています。世界各地の多数の研究機関で性能のギャップが埋められようとしていると言います。そこで重要になってくるのが、高効率の8インチシリコンウェーハ装置の利用によってコスト削減が本当にできるのか、という問題です。Yoleのコストシミュレーションでは、ダイコストが50%下がる可能性を示しており、企業によっては小口径サファイア基板と比較して75%程度のコストダウンを予測しています。もちろん、これは歩留りや、新規設備への投資額、CMOS工場のLED製造への転換費用に依存するものです。歩留りに最も強く影響するのは、結晶欠陥よりも、MOCVDプロセスで発生するウェーハのバウであることは明らかであり、エピ成長中の熱特性を精密に調整することでかなりの改善が期待できます。
しかし、CMOSファウンドリで製造ができるようになると、ほぼファブレスのビジネスモデルがLEDメーカーに誕生する可能性があります。そして、これによって業界の需給バランスを変えることは確実です。「おそらく、ひとつのCMOSファブだけで、LEDダイを世界中に供給できるだけの十分な生産能力があるでしょう」とヴィレ氏は言います。GaN-on-GaN基板はバウが小さくなるので歩留りが向上するはずで、また小さなチップ面積に大きな電流を投入してより多くの光を出力できるため、高電流密度のアプリケーションで有利になります。しかし、サファイアやSiC基板のLEDでも最先端のものは効率が理論的限界値に近い200ルーメン/Wまで上がっており、GaN基板で5~10%性能アップしても、コストが10倍の基板に変える意味がありません。繰り返しになりますが、これは全くのコスト競争であり、歩留り率が最重要なパラメータとなります。
GaN-on-Si基板の量産化を推し進めるLattice Power
Lattice Powerは、中国江西省にある同社工場において、毎日数百枚のシリコンウェーハをラインに流してLEDダイを量産し、販売していますが、今後12か月以内に6インチウェーハへの変更を狙っています。同社CTOのハンミン・ザオ氏は「すでに研究開発段階は終了し、量産に向けて進んでいるところです」と言います。ザオ氏の報告によると、同社の2インチシリコンのコストと歩留りは2インチサファイア基板と同程度で、信頼性と寿命についても現在のところサファイアと同程度のテスト結果だとのことです。
ザオ氏は同社が開発した格子定数および熱膨張係数の不整合に対応する積層バッファ層は、6インチウェーハにも良好に転用できると見ており、そうなればシリコンのメリットがさらに発揮されるでしょう。6インチを選ぶ理由は、装置が低価格で入手できるからです。8インチ装置は高額なため、その場合は遊休8インチICファブと提携する必要がありますが、中国では空いている8インチファブはあまりありません。ザオ氏は、MOCVD装置は例外として、70~80%のCMOS装置はマイナーな改造だけで使用できると見ています。
上述の業界キーパーソンの方々に加え、Cree、Everlight Electronics、Soraa、Seoul Semiconductor、GT Advanced Technologies、EVGroup、Laytecからの講師が、SEMICON Westで、LED産業の可能性と歩留り向上のための選択肢を議論します。7月11日、サンフランシスコ Moscone Center South HallのExtreme Electronicsにぜひご参加ください。
米国エネルギー省Solid State Lighting R&D Workshopの発表資料は、次のWEBサイトからダウンロード可能です:
http://www1.eere.energy.gov/buildings/ssl/atlanta2012_materials.html
(初出 SEMI Global Update 2012年5月号)
