SEMI通信 2012年3月号 記事2
市場の減速で促進されるLED製造の破壊的技術
SEMIエマージング市場担当 ポーラ・ドー
液晶TVのLEDバックライト市場が減速しており、一般照明市場がまだ本格化しない中で、LEDメーカー各社は、破壊的技術から歩留りの漸進的改善まで、普及促進につながるコストダウンと性能アップのためのあらゆる革新的技術に期待を寄せています。カメラや電話産業の経験を目安とするなら、半導体化によって照明産業は、何もかもが劇的に変化することになるでしょう。
パッケージされた高輝度LEDの販売額は、今後5年間基本的に横ばいになると、Strategies Unlimitedは予測しています。LED照明の成長が他のアプリケーションの減少で相殺されるからです。LEDの照明分野での販売額は2011年に44%の急成長をしましたが、爆発的な成長をしてきたLEDバックライトは、テレビ市場が成熟し販売価格が下がったため、5%まで鈍化しました。アジア各国の通貨高のおかげで、LED全体の販売額は、2011年に10%近く上昇し125億ドルに達し、2012年も6%の成長が見込めそうです。しかし、その後の市場は、2016年まで横ばいとなると、同社LED調査担当ディレクタのエラ・シャム氏は予測しています。ディスプレイ市場において、携帯機器のLEDバックライトはOLEDへの置き換えが進んでおり、また新世代の低価格テレビのLEDの使用数が減っています。自動車産業でも、ヘッドライトに使用するLEDの個数が減る傾向です。しかし、LEDの一般照明需要は今後も拡大を続け、照明用のパッケージされたLEDチップの年平均成長率は13%となり、2011年に18億ドルだった市場は、2016年に33億ドルまで成長するでしょう。

LED市場は照明用途で急成長するが、TVや携帯電話用途が減少するため横ばいが続く
(Source: Strategies Unlimited, February 2012)
この原則の一因となっているのが、近年のLEDの輝度の飛躍的向上と大幅なコストダウンです。その結果、システムメーカーは、LEDの数を減らし、また使用するユニット価格も下がっているのです。高輝度LEDの平均出力は現在100ルーメン/W、有力メーカーでは140ルーメン/Wに達していて、コストは米国エネルギー省のロードマップ目標値のかなり先を行く6ドル/Kルーメンまで下がっています。しかし、高品質のLED電球の価格は依然として20ドルであり、蛍光灯に勝つためにはさらに半額になる必要があるでしょう。普及拡大のためには、一層の技術革新が求められるのです。
GaN-on-GaN、GaN-on-Si、半導体製造プロセス制御技術の応用
カリフォルニア州フリーモントの新会社Soraa Inc.は、M16ハロゲンランプの代替LED電球開発にあたって、製造プロセス全体を見直すことにしました。同社の新しい電球は、店頭の商品を高品質な照明で際立たせる一方で、点灯時間が長ければ1年以内に投資回収ができるほどの省エネを達成していると主張します。同社は高価なGaN-on-GaN基板を使用していますが、CEOのエリック・キム氏は、小さなダイに大電流を投入して面積当たりの光量を高くできる上、製造プロセスもサファイア基板よりシンプルなので、基板のコスト高を埋め合わせることができると言います。
GaN-on-GaNは欠陥密度を劇的に減少し、また大電流を投入すると発光効率が低下するドループ現象を大幅に抑制できます。キム氏はまた、容積のあるエミッタは薄膜よりも高出力、製造プロセスで基板の剥離が不要となる、三角形のダイ形状により接合部の面積を大きくできる、シリコンベースのパッケージングが放熱対策でも有利との主張をします。このチップは通常の青色ではなく紫の波長を放出し、3つの蛍光体を組み合わせることで、ハロゲンランプに非常に近い色に変換しています。同社は電球の明るさ(ルーメン)については口をつぐんでいますが、光の中心部の明るさは標準的なハロゲンランプと同等とのことです。この小さな単一点の光源は、LEDチップが複数ある電球やハロゲンランプよりも、くっきりとした影をつくることができます。Soraaは現在、フリーモントの新工場での量産を立ち上げているところです。
GaN-on-Si基板の可能性も注目がされていますが、まだ判断ができない段階です。Osram Opto SemiconductorsのCTO ウルリッチ・スティーグミュラー氏は、同社が6インチシリコンウェーハで製造し標準パッケージをした1平方ミリメートルのチップで、サファイア基板の場合とほぼ同等となる60%の外部量子効率を得られたと報告しています。しかし、これが量産デバイスでどの程度実現できるかは、まだ不明だとのことです。そのまま応用できる技術として、スティーグミュラー氏は、Osramによる赤色InGaAlP LEDの輝度および効率の改善をあげ、これにより暖色系白色ライトの効率を、蛍光体だけを利用する場合より25%アップできると述べています。
TSMCは、半導体IC産業の8インチ装置のプロセス効率、そして進んだデータ収集およびプロセス制御技術を、LED製造に活用しています。TSMC Soli-State Lighting社長のジェイコブ・タン氏は、TSMCがサファイア基板でGaNの結晶成長をしているが、エピプロエス後のパターンのついていないウェーハをダイシングし、8インチの基板上に再配置して、ウェーハプロセスおよびウェーハレベルパッケージングを行っていると報告しています。こうして、Run-to-Run制御や欠陥検出といった半導体IC製造の手法を取り入れているのです。
AC電流でそのまま動作するデバイスとシングルチップのコントローラによって、AC-DCコンバータを不要にできると、Seoul SemiconductorのCEO チャン・フーン・リー氏は主張しています。コンバータ内の抵抗器は熱源となり、またLED本体よりも早く故障するので、コンバータをなくすことでコストと効率と寿命を同時に改善できるとリー氏は考えます。「これには全く価値がないのです。なんのために必要なのですか?」と彼は問います。同社の販売担当副社長 ブライアン・ウィルコックス氏は、今までのLED電球よりもシンプルなAC電球が米国市場でもうすぐ発売され、コンバータが不要になり放熱対策も軽減されると、価格は15ドル前後まで下がるのではないかと言います。
大量生産で注目される歩留り、標準化、材料最適化
LEDバックライト需要の急激な拡大によってLEDは大量生産産業へと変貌し、生産能力も過去10年間で12倍となり、月産160万ウェーハ(4インチ換算)まで成長したことが、SEMIのOpto/LEDデータベースで示されています。SEMI Americas社長のカレン・サバラは、そのデータベースによると、およそ400億個のリードフレームが出荷され、24億ドルの装置が購入されていると述べました。
こうした状況下で、LED産業が製造の自動化に向かい、少量カスタム品の装置や材料から遠ざかる中、製造技術の標準化が急展開を見せています。SEMIで高輝度LED技術委員会が組織されて1年余りで、業界を横断して集まった委員会メンバーは、装置とキャリアのハードウェアとソフトウェアインタフェースの共通仕様、6インチサファイア基板のオリエンテーションフラット/ノッチ、IDマーク、フラットネスの共通仕様について、検討合意の草案を提出するに至っています。さらに、サファイア基板ではどんな不純物や欠陥が重要となるのか、そしてその計測をユーザとサプライヤが一貫して行うための最善の方法はなにかについても、検討が始まっています。また別のグループは、LED工場の環境安全について、ベストプラクティスを共有する活動を進めています。
照明市場への本格的な浸透は、さらなる量産化と低下価格化を意味します。60W白熱灯相当のLED電球の価格が8ドル前後まで下がるとして、約2年後にターゲットをおく関係者もいます。Canaccord Genuityの株式調査責任者 ジェド・ドースハイマー氏は「照明市場取り込みの転換点は2014年頃でしょう。LED産業が価格競争力のある製品を2014年までに用意できれば、LED照明には何の障壁もないでしょう」と述べます。8ドルの電球で、システム損失を20~30%見込むと、2ドル程度のLEDで1,000ルーメンを出力する必要があります。つまり、現状の200ルーメン/ドルから500ルーメン/ドルへとコストダウンすることになります。電力会社の奨励金によってLED電球の価格が15ドル以下に下がれば、Home Depotの照明売上の15%以上がLEDになるともドースハイマー氏は言及しました。そしてLED照明が浸透するためには、「歩留りを高めること」がベストな選択枝だと述べました。
サファイア基板メーカー各社は、単結晶サファイアのブールを大きくし、基板サイズを大きくすれば歩留りは上がると主張します。Rubicon TechnologyのCEO ラジャ・パルヴェス氏は、6インチと2インチの基板を比較した場合、エッジのロスと、隣り合うウェーハ間のデッドスペースがなくなるので、MOCVDの同一チャンバでの歩留りが10%上がることを示しました。6インチ基板は、まだサファイア基板市場全体の5%にも届きませんが、パルヴェス氏は2020年までに6インチが主流になることを期待しています。Rubiconはこれまで6インチ基板を23万枚出荷しており、研究開発用に8インチの出荷もあるとのことです。一方、GT Advanced Technologiesは、サファイアコアの残留応力の分布を均一化することが、ウェーハの歩留りを決定するうえで、エッチピット密度よりも重要であり、アニール時間と温度を一定化したコアは、エッチピット欠陥が多くても、切り出した基板は4%も良品率が高い(ワープ、バウ、ラフネスが受け入れ可能なレベル)と主張しています。
Nichia America Corp.の副社長 ダニエル・ドクシー氏は、歩留りを高める要求から、またダイの端から端までの色を平均化しやすいことから、大型のシングルチップよりも小型チップのアレイへとトレンドは向かっていて、これは特に一般照明やディスプレイのアプリケーションで顕著だと述べています。
材料サプライヤからも、こうした課題へのソリューションが提案されています。ダイあたりの電流量を大きくし高温で使用するには、熱安定性が高く、エネルギースタープログラムが要求する35,000時間、光と熱を透過あるいは反射する新材料を探す必要があります。今後12ヵ月で材料は新しいものに切り替わるだろうと、Dow Corningの照明マーケティングマネージャ ゲオフ・ガードナー氏は主張します。0.3~0.5W以上では、反射カップの素材をPPAから変更する必要があるからです。ガードナー氏は、最も有望な素材は蛍光体ドームで既に広く使用されているシリコーンだと提案しています。Dow Corningでは、シリコーンのランプや照明器具への利用をさらにコストダウンをするため、スクリーン印刷や射出成形といった新たなプロセス方法の開発を進めています。
LED照明が照明業界を一新する
LED照明がもたらす劇的変化について、もっと見ていきましょう。Creeのマーケット及びアプリケーション担当シニアディレクタ マイク・ワトソン氏は、半導体技術が導入されると産業は必ず変貌すると述べ、電話とカメラを引き合いに出しました。ワトソン氏は、デジタル技術は最初は必ずコストアップになり、既存技術の抵抗にあうため、適切なビジネスモデルとサプライチェーンを構築するのに時間がかかると主張し、半導体照明もその例外ではないことを認める必要があると言います。LED産業は格安な電球を作ってばかりいないで、それよりも、幅広いインテリジェント制御、高品質な明かり、そして省エネルギーがもたらす、適切なシステムに取り付けた半導体照明の付加価値に焦点を絞るべきだと、ワトソン氏は提案します。つまり、電球ではなくシステムにフォーカスし、また消費者向けアプリケーションよりも商工業向けアプリケーションにフォーカスするということです。彼は言います「劇的な変化となります。素早く行動するか、さもなくば死だということを肝に銘じなければなりません」。
おそらくは、メーカーの合併や垂直統合が増えるだろうと、Strategies Unlimitedのシャム氏は指摘します。「当社では(LED部品メーカー)85社を追跡調査していますが、来年はその数が減少しているでしょう」。
一方で、大手家電メーカーが照明市場への参入する可能性があります。LEDバックライトユニットを内製するテレビメーカーは、同じLEDチップやパッケージを照明市場に供給しはじめています。それ以外の家電メーカーもLED市場へ手を広げており、その結果、Samsung、シャープ、パナソニック、東芝、さらには米ファブレステレビメーカーのVIZIOまでが参入します。「エレクトロニクス企業には参入になんの障壁もありません」とNichiaのドクシー氏は言います。「LED照明は、照明業界のプレイヤーたちにとっての困難なのです」。Seoul Semiconductorのリー氏も同様に、電子産業からの大量生産企業の参入の影響に言及しています。「照明メーカーは、月産1万~10万台の少量しか生産をしていません。チップメーカーは毎月10億パッケージを生産するのです」。
(初出 SEMI Global Update 3月号)
