LEDの設備投資は過剰か
LEDの設備投資は過剰か?
IMS Research 上級副社長 ロス・ヤング
IMS Researchの中国、ヨーロッパ、韓国、台湾、米国のスタッフは、四半期ごとにLED市場の供給サイドと需要サイドの両側の企業を調査し、LED市場の動向を調べています。当社で追跡しているのは次の項目です:
- LEDメーカーによるMOCVD装置の設置台数の実績と、そのメーカー、型番、ウェーハサイズ
- LEDメーカーによる将来のMOCVD装置の設置予定台数と、そのメーカー、型番、ウェーハサイズ
- LEDメーカー各社の生産能力(ウェーハおよびダイ)とダイ生産量および選別ダイ生産量
- パネルメーカーのTV、モニタ、ノートブックPC用LEDパネル四半期出荷量
- パネル当たりのLED個数、パネルメーカーによるLED消費量合計(サイズ別、解像度別、リフレッシュレート別)
- その他のLEDアプリケーション向けの年間出荷量の実績と予測
最新のレポートは、2010年第3四半期に外販GaN LED用MOCVD装置が230台出荷され、記録を更新したことを示しています(図1参照)。MOCVD装置の出荷台数は6四半期連続成長という驚くべき結果となりました。
図1: 外販GaN LED用MOCVD装置出荷台数
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report
GaN LED用MOCVD装置市場は、以前は年間で100~200台の規模でしたが、2009年後半から爆発的な成長を初めました。これは、実質的に最初のLED TVが発売され、またTVやモニタ、最終的には一般照明へのLED浸透を予測する明るい見通しが多数発表されたことが契機となりました。当社では、外販MOCVD市場が2010年に786台に達すると考えており、これは前年比245%の上昇となります。LEDメーカーに対する調査結果によると、2011年の出荷台数はフラットで790台前後となることが予測されます。
各社が生産能力を拡大するのには、数々の理由があります:
- LCDメーカーと提携したLEDメーカーは、自給率をあげるために生産能力を拡大
- 独立系LEDメーカーは、市場シェア拡大、垂直統合強化を狙って生産能力を拡大
- 中国はLED自給率を引き上げるためにMOCVD装置購入補助金制度を導入。これにより、2010年~2012年にかけてのMOCVD装置への投資額が16億ドルに達することが期待されている。1台あたり最大180万ドルに上る補助金に加え、地方自治体も税率低減措置、加速償却、土地の無償供与を実施。これにより、中国のLEDメーカーの生産能力拡大が促進されると共に、多くの新規参入が起こり、また台湾や韓国のメーカーは合弁事業を立ち上げて、中国における生産能力を拡大している。中国はMOCVD装置の設置台数で2010年第3四半期にはじめて首位となり、補助金制度が終わるまではリードし続けることが予測される。
- 多数の半導体メーカーがLED市場に事業展開し、この分野に予測される目覚しい成長への参加を狙う。
2009年~2011年にかけて、全部で25社の新しいLEDメーカーが誕生し、また約75社に上る既存のLEDメーカーのほとんどが生産能力を拡大しています。
その結果、LEDの生産能力は大幅な拡大を続けています。中国での装置の増加と稼働率を内輪に見ても、2インチウェーハ換算で2010年に54%、2011年に74%の生産能力拡大があるでしょう。さらに、LEDメーカーには、歩留りと選別率の改善余地が大幅に残っており、設備投資をしなくても効率よく生産能力を上げることができます。実際に、多くの主要メーカーが、最先端ラインでの歩留り(選別を含む)を50%台前半から70%代後半まで引き上げたと主張しています。しかし、歩留りを引き上げるのには時間がかかり、また急性長期においては、多くの新規参入企業や新たな設備投資分が、歩留りや選別率の業界平均を低く押しとどめることになるでしょう。従って、ダイサイズ別の歩留りと選別率で重み付けした選別品ダイ生産能力は、2010年には44%、2011年は60%の上昇を見せるでしょう。これは2010年と2011年の歩留りの加重平均を40%台前半とする内輪の数字であると当社は考えています。興味深いことに、2012年は新しい装置の設置がなくても、それまでに設置された装置の生産立ち上がりに伴い、歩留りと選別率が31%上昇することになるでしょう。
需要の増加は続くのか?
これまでに述べた供給の増加に対応する需要の継続的な増加はあるのでしょうか。図2に示したように、2010年、正確にはその前半には、需要の増加率が供給の増加率を上回っていました。しかし、2011年と2012年は、逆に供給の増加率が需要の増加率を上回ると予測しています。2012年に装置の設備投資がないとしてもです。
需要の増加率が供給に比べて低くなる理由のひとつに、2010年第3四半期からのTVやモニタ1台当たりのLED数の減少があげられます。表1に示したように、パネル当たりの20ミル×40ミルサイズのエッジライトLED使用数は、2009年後半から2010年前半にかけて22~27%減少し、さらに2010年に34~38%減少しています。つまり1年間で、パネル当たりのLED使用数は、51~54%減少したことになります。これはLEDメーカーの予想を上回るペースです。さらに、TVパネル1枚あたりのエッジライトLEDの加重平均使用数は、2010年前半の196個から同年後半には124個へと下がっています。LEDメーカーは年間15~20%の使用数減少を予測し、そのため需要に対する自分たちの生産能力が過剰であることに気いており、LEDメーカーの稼働率は2010年後半に下がりました。この使用数の著しい減少は、LEDの発光効率の向上と共に、導光効率、パネル透過率の向上と、光学膜の最適化によって達成されたものです。LEDの使用数を減らすことで、パネルメーカーは4~6本あったLEDライトバーをわずか2本にまで減らし、大幅なコスト削減により蛍光管パネルとの価格差を圧縮することができました。
図2: LEDの供給と需要の成長率推移
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report. Assumes no MOCVD installations after Q4’11.
また、この減少のタイミングは最悪で、LED TVは既に高価だった高リフレッシュレートTVの価格をさらにアップさせるため、2010年第3四半期には売れ行きが減速しました。その結果、需要は下がり、在庫は増加し、供給量の増加率はバックライト向け需要を大きく上回り、2010年後半の工場稼働率の大きな低下に繋がりました。2011年と2012年の供給の増加率はこれまで以上に需要を上回ると予測され、LEDの供給過剰が発生するでしょう。一方で、中国のMOCVD装置補助金制度は2011年に終了すると思われ、LEDメーカー各社はこの通常ではありえない補助金を確保しようとするため、2011年のMOCVD出荷台数は減少しないでしょう。その結果、LEDメーカーは、中国の補助金制度が終了し、供給量が過度の成長をすると、生産能力拡大計画を著しく縮小されると当社は見ています。
表1: パネル当たりのエッジライトLEDダイの使用数推移*
*20ミル×40ミルのダイを想定。
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report
図3: Figure 3 Q2’10 – Q4’10 Supply Growth vs. BLU Demand
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report
LED市場の展望と総括
以上に述べたように、中国のMOCVD装置補助金制度と、多数の新規参入企業、そして予想を下回るディスプレーメーカーによる需要が、今後2年間にわたり増大する供給過剰を招くことになるでしょう。しかし、市場の成長は継続するのでしょうか。
当社では成長の継続を信じています。図4と5に示したように、2010年はGaN LED市場はLED TVにけん引されて、最高の年となりました。GaN LEDの収益は、2009年の48億ドルから、2010年には76%増の84億ドルへと増加したことが予測され、LED市場全体もはじめて100億ドルを超過するでしょう。TVとモニタが収益拡大をドライブし、それぞれ518%増と653%増、また数量ベースではさらに高い624%増と842%増となります。図4に示したあらゆる分野で数量ベースのプラス成長をし、金額ベースでは携帯電話と「そのほかのバックライトユニット」だけが減少しています。
予想される供給過剰により、LEDがあらゆるバックライト分野に急速に浸透をすることを当社は予想しており、また一般照明へも予想以上のスピードで浸透すると見ています。一般照明市場の急速な拡大によって、やがて訪れるTV市場の飽和もオフセットされ、LED市場の成長は継続するでしょう。一般照明は金額ベースで2015年にTV市場を追い越すと考えられます。しかし、LED照明市場は、価格以外にも、様々な課題をかかえています。効率の向上、まぶしさの軽減、導光効率や均一性の向上などです。これは特に蛍光灯の置き換え市場で重要となります。これについてはまた別の機会に論じることにします。LEDの供給過剰は、工場稼働率の低下と、中国のMOCVD装置補助金制度終了後の設備投資縮小を招き、また価格圧力の上昇から企業の統合再編が生じることも考えられます。従って、健全な成長が予測されるものの、利益という観点では同じことは言えません。
図4: GaN LED市場のアプリケーション別推移
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report
図5: GaN LED収益推移
Source: IMS Research’s Quarterly GaN LED Supply and Demand Report
初出 SEMI Global Update 2011年1月号
